第4章 第19話 神を倒したら……また神?

「あいつの攻略法を教えるよ」


 立ち上がって、戦っている3人に声を張り上げる。


「ソイツに目標を定めさせるな! 手で何かを掴むポーズを取ったら死に物狂いで逃げ回れ! 邪魔をしろ!」


 3人はドミストリィを囲むように動き、手を休めず常に攻撃をする。


「リアは後方でアイツの妨害に徹して、ベネットはアズベルの対面に立って攻撃だ。少しだけ時間を稼いでくれ」


「わかった!」


「わかったわ」


 すぐさま参戦し、戦列に加わる。

 俺はメイアに交代だ。


 キャラクターチェンジ

  ユグドラ

  ルリ子

  しずか

  番長

  ディータ

 ⇒メイア

 ◆ ユグドラ ⇒ メイア ◆


 体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。

 暗殺キャラのメイアに交代し、ボウガンを構える。

 確かあのあたりに有った筈だが……色彩が豊かだと、様々な色に妨害されて見えないな。


 ドミストリィの頭上に矢を放つと、甲高い音と共に何かが砕け散り、矢はドミストリィ後方の結界に当たった。


「ん? 何をしているのかと思えば、結界でも破壊するつもりかね? この結界は私が有利になるモノではなく、ただの目隠しの様なものだ。破壊しても意味は無いのだよ」


 そうなのか? まあ構わないがな。


 矢を装填し、記憶をたどりながら矢を放つ。

 また甲高い音と共に何かが砕け散り、矢は結界に当たった。


「はっはっは、ついに気でも触れたかな? 私の威圧に耐えているので誉めてやろうと思ったが、狂ってしまったのなら耐えているとは言えないではないか」


 威圧……あの水飴のように重く身動きが取れなくなった奴か。

 あれは恐ろしかったぞ。


 狙いを定めてボウガンを発射する。

 甲高い音がして、矢は結界に命中、結界が崩壊した。

 壊れるのか、結界。


「おやおや、人のいう事を信用しないとは、これはお仕置きが必要だな」


 私に手を伸ばし、頭を掴むようなしぐさをする。

 アレか、さっきはアレで殺されたのだ!


 キャラクターチェンジ

  ユグドラ

  ルリ子

  しずか

 ⇒番長

  ディータ

  メイア

 ◆ メイア ⇒ 番長 ◆


 体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。

 今度はワシの番じゃい! その技、受け切ってくれるわ!


 ドミストリィが手を回すと、ワシの首が左回りに勝手に動き出す。


「ふんぬぅあ!」


 歯を食いしばり、首に最大の力を込めて抵抗する。

 うぐぉお! 首が、首が折れそうじゃ!

 青筋を立てて、顔が真っ赤になっとるじゃろうなぁ。


「ほほぅ? そんな力技で対抗できるとは思わなかったよ。だかこれならどうだ!……ん?」


 更に力を入れようとするドミストリィの腕に細身の剣が突き刺さる。

 そして反対側から剣が振り下ろされ、手首が切り落とされた。


 アズベルとベネットじゃ。

 アズベルの細身の剣がドミストリィの腕の動きを止め、向かい側からベネットが手首を切り落としたのだ。

 

「おお、お前たちの事は知らないが、転生者か? そうでなくては私に傷を負わす事など出来ないのだからな。まあ、それも無駄なのだが……なぜ治らん……なぜ血が流れだしているのだ!!!!」


 途中から表情が変わり、いつまで経っても治らない手を押さえて叫んどる。


「うおおおおお! なんだ! 何なのだコレは!! なぜだ!!」


 少し心配じゃったが、どうやら“目”の破壊は成功しておった様じゃな。


 幽霊の時に見つけた3つの水晶のような物、あれで常にドミストリィの体を監視し、常に予備の体バックアップと照会して異常個所を復元しておったのじゃ。

 破損が酷い場合は入れ替えもするんじゃろうなぁ。


 無理やり神を再現しようとしたシステムが、実は3つの目で常時監視され、予備の体バックアップから復元しておっただけじゃったとはのぅ。

 

 神が聞いてあきれるわい。


 首を左右に振って鳴らし、ドミストリィに近づく。

 すでに5人が取り囲み、何かしようものなら一瞬で命を奪える状態じゃ。


 ワシを呼んだんじゃったな、じゃがワシはお主に用はない。


 キャラクターチェンジ

 ⇒ユグドラ

  ルリ子

  しずか

  番長

  ディータ

  メイア

 ◆ 番長 ⇒ ユグドラ ◆


 体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。

 

「ドミストリィ、お前はどうして俺を呼んだんだ?」


 地面にしゃがみ込み、腕を押さえて血を止めようとしているドミストリィに問いかける。

 

「た、頼む、血を……血を止めてくれ……助けてくれ……」

 

 涙を流し、歯をカチカチ鳴らして震えている。

 きっとこいつは痛い目にあった事が無いんだろう。

 傷は瞬く間に治り、念力みたいな力を使い、身体能力も高い。

 さらに騎士団長だ。


 間違いない、こいつは絶対に転生1回目だ。


「もう1度聞く。どうして俺を呼んだんだ」


「あ、遊びだったんだ、強そうなやつを倒して、俺はもっと強いんだぞって」


「ああ? お前はそんな理由でユグドラを呼んだのかよ。信じらんねーな」


「噂に聞いていたドミストリィがこんなガキだったなんて、失望したわ」


 まったくだ。そんな、そんなにも下らない理由のために俺は殺されたのか。


「だって、だって俺Tueeしたいじゃないか! 神の力を持ってるんだ、やりたい放題じゃないか!」


 その気持ちはわかるけど、罪もない人を殺すのはいただけない。


「なんだ? 俺ツエーって」


「お前が好きそうなことだよエバンス。自分の強さを自慢したいんだ」


「え? それってユグドラもだよネ?」


 ……否定はしないけど。


「でもどうするの? この人弱気になっちゃったけど、またユーさんに手を出すのなら倒しちゃった方が良いし」


「そうなんだよな~、ここまで弱気になられると、まるで俺達が弱い者いじめしてるみたいだし」


 皆も同じ考えみたいだ。

 せめて強気で居たら躊躇ためらわないけど、涙もよだれもたらして、メソメソないてる子供みたいな奴を殺すのは……なぁ。


「ゆ、許してください! もう決して手出しはしません! お願いですから、お願いですから……」


 土下座まで始めた。

 ええぇ……自称神がここまでするか?


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「は? なんだ? なんだこれ!? どこだよココ!!」


 何も無い空間、真っ白で上も下も分からない場所に俺は居た。

 ゲートでもなく再呼び出しリコールでもなく、突然この場所にいた。


「初めまして転生者よ。最終目標を満たしてくれたことを感謝します」


 振り向くとそこには、銀色の長い髪をした女性が立っていた。

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