第4章 第9話 フェニックスとの遭遇

 地面からマグマが吹き上げ、俺はマグマに飲み込まれたまま空へと飛ばされた。

 息が出来ない! 前が見えない! 熱い……どうなってんだ!!


 溶岩をかき分けて何とか外が見えた。

 地面が下に見える……マグマの柱は50メートル近くまで吹き上がっていたのだ。

 なんとかマグマから抜け出し、落下を始める。

 今の一瞬でローブもマントも帽子も焼けて無くなってる。

 一体……何度あるんだこのマグマは!


 このままだと地面に叩きつけられる。

 ロープ付きの斧を斜め方向の地面に投げつけて、落下の力を分散させよう。

 地面に深く刺さった斧を引っ張り、落下の向きを……斧が地面からすっぽ抜けた。

 

 しまった! 砂漠に斧が刺さるはずがない!


風の精霊召喚エアーエレメンタル!」


 風で体を浮かせようとしたが、そこまでの時間がない。地面に叩きつけられる!!

 風の精霊召喚エアーエレメンタルは俺を横方向に吹き飛ばし、砂の上を何度も転がって止まった。


 お、おお……助かった……。

 鎧に付いた砂をはらうと、俺は信じられない物を目にした。


「鎧が……少し溶けてる……」


 アダマンタイトの鎧はかなりの高温で加工してある。

 確か1000℃以上だが、今回は耐熱・冷却加工も施してあるのに……ローブやマントもそうだ、加工してあっても焼けて無くなってしまった。

 あのマグマの温度は一体何度なんだ?


 元々少し黒い鎧だが、焼けてまだら模様になっている。

 

 マグマの柱が地面に落ちる。

 まるで水のように落ちるマグマは、より高温だという証明でもある。

 確か石が溶けるのが1000℃近く。それがここまで柔らかくなるのなら、さらに上だ。


 鎧が……役に立たないかもしれない。

 いや、鎧が溶けたからこそ、俺は無事でいられたんだろう。


 慌ててステータスを確認する。

 HPが半分以下になってるじゃないか! 熱さで感覚が麻痺していたけど、火傷もしている。

 ポーションを飲んでおこう。


 それにしても、これはフェニックスの仕業か? それ以外の問題だとしたら、フェニックスと遭遇する前にこのダメージは痛すぎる。

 周囲を見渡すが何も見えない、一面の砂とマグマだけだ。

 

 ふと、風がふいた。

 熱い砂漠での風は気持ちがいい。

 しかし、ここがハズレだとしたら、もう1度探し回らないといけない。


 相変わらず周囲には……いや、またマグマが盛り上がっている。

 さっきと状況が似ている。

 地面や周囲の確認をするが、それほど温度が上がっている訳でもない。


 偶然か?


 だが今回はマグマの盛り上がりはさらに大きく、何かの形を作り始めた。

 ……鳥? フェニックス!? え? フェニックスって燃え盛る鳥じゃなくて、マグマで出来た鳥なのか!?

 予想外の展開だが、その形は間違いなく鳥だ。


 翼を広げた大きさはゆうに10メートルを超え、マグマで出来た体は所々で炎が噴き出し、その体はオレンジ色に輝いている。

 甲高い鳴き声で俺を威嚇し、まばたきの間に空を飛んでいた。


 ワシの様な姿のそれは、上空を飛んでいるはずなのに目で追うのがやっとだ。

 その速度ならシャコの神獣の攻撃程の脅威はない。

 体当たりならかわせるので注意を払わなくていい。他の攻撃、魔法か? 特殊な攻撃があるのか?


 それにしても、さっきから何かが体に当たっている。

 砂? 大きめの砂利? 鎧がカンカン音を上げてるけど……。

 今はいい。フェニックスに集中しよう。


 降下してきた。

 俺を目がけて地面すれすれを飛び、真っ直ぐこっちに向かってくる。

 そっちから来てくれるならありがたい。まずは1発ぶち込んでやるぜ!


 真正面から突っ込んでくるフェニックスをかわして、胴体に斧で斬りつける。

 よし! 一瞬なら斧が溶ける事もない! いける!


「ぐあーーーー!!!!」


 全身が焼けるように熱い! なんだ!? 攻撃されたのか!?

 俺の鎧には真っ赤に燃える斑点がいたるところに付いている。

 何だこれは!! 

 そうか、フェニックスの体から飛び散ったマグマか!

 

 地面に転がりマグマを落とし、何とか冷却が出来た。

 

「くそ……でもなんでだ? 斧で切った時は、マグマは体に飛んでこなかったのに」


 空を悠々と飛ぶフェニックスを見る。

 ん? 飛んだあとがキラキラ光ってる……あれがマグマか!

 あいつはマグマを飛び散らせながら飛んでいるんだ!


 そういえばみんなが言っていた『あいつは居るだけで災害だ』と。

 そしてさっき鎧にカンカン当たっていたのは、冷却されて固まったマグマ……か。


 接近して攻撃を当てるどころじゃない、近づくだけで命取りになる!

 あの水のように柔らかいマグマ。鎧に付着して固まったマグマをはらうと、鎧は溶けて窪んでいる。

 しぶきでこれだけの威力……万が一にも直撃を食らえば、間違いなく即死だ。

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