第4章 第10話 物理が無理なら魔法でってね

 水のように柔らかいマグマのフェニックスをどうやって倒すか……いくつか手段を思いついたけど、正直言って見込みはうすい。


 幸か不幸か、アイツは自ら近づいてくれるから第1段階は問題ない。

 問題は第2段階。


 空を大きく旋回して高度を落としてきた。

 距離があるからゆっくりに見えるが、近くで見ると凄まじい速度で飛んでいる。

 でもそこまで接近する必要は無い。


「今だ! 水の精ウォーター霊召喚エレメンタル!」


 大気の水分を利用して水の塊が現れる。

 それが徐々に人型になり、顔のない水の精霊が誕生した。


「あいつを冷やして固めるんだ!」


 水の精ウォーター霊召喚エレメンタルの腕が伸びて、フェニックスに命中する。

 一瞬で水が蒸発するかと思いきや、まるでフェニックスの体をすべるように水が弾かれてしまう。 

 なんだそれ!? 冷やすことも出来ないってのかよ!


 それでもエレメンタル水を掛け続けるが、元々水分の少ない地域、覚悟はしていたが、すべての水を使い切り、水の精ウォーター霊召喚エレメンタルは消滅してしまう。

 迫りくるフェニックスを可能な限り大きくよけ、なんとかマグマの被害は受けなかった。


 水はダメか。なら次はこいつだ!


風の精霊召喚エアーエレメンタル!」


 風の精霊召喚エアーエレメンタルなら場所を選ばず呼び出せる。

 真空にでもしない限り、こいつは無くならないぞ!


 しかし俺は風の精霊召喚エアーエレメンタルで攻撃をする為に呼んだわけじゃない。

 俺の前で待機させ、フェニックスを迎え撃つ。


 フェニックスが接近し、風の精霊召喚エアーエレメンタルからは強風が吹きつけるためマグマが飛んでこない。いける!!


 だが斧で攻撃しようとした瞬間、風の精霊召喚エアーエレメンタルは急激に膨張し、体を維持できなくなった風の精霊召喚エアーエレメンタルは消え去ってしまった。

 今度は何だよ! ああそうか、急激に熱せられて膨張したのか。

 防御どころか攻撃も出来ないんだな、あれじゃあ。


 残る精霊は土と火だけど、どちらも無効化されるのが想像できる。

 他の魔法だけど、爆発系の魔法は自殺行為、火は効かないだろうし、魔法の矢マジックアローも無理。

 雷系か毒系、残るは……魔力強制排出マナ・ドレインか。

 魔力強制排出マナ・ドレインはエナジードレインみたいに吸収はしてくれない。対象の魔力を強制的に排出するだけの魔法だ。

 あれが魔法生命体なら……効果があるはず。


 しかし、残念ながら俺の魔法スキルだけでは効果が薄い。

 魔法の理解度が足りない。俺は知ってるから使えるだけ。

 仕方がない、交代しよう。


 キャラクターチェンジ

  ユグドラ

 ⇒ルリ子

  しずか

  番長

  ディータ

  メイア

 ◆ ユグドラ ⇒ ルリ子 ◆


 体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。

 なんだい? 面倒な敵を押し付けて。アタシは楽をしたいんだよ。


 とは言え交代しちまったからねぇ、やるしかないか。

 

 さて、アイツは魔法生命ただとして、問題はどれだけの魔力があるか、だ。

 無尽蔵の魔力なんて言われたら、魔力強制排出マナ・ドレインなんて意味無いからね。

 やってみるとするか。


魔力強制排出マナ・ドレイン!」


 ……チッ、遠すぎるか。

 接近はしたく無いんだがねぇ、仕方がないか。

 何も無しに接近させたくないから、 魔力防護壁エネルギー・ウォールを3枚重ね掛けした

 これなら多少の事ではマグマが飛んでこないだろう。


 よし、鳥が高度を下げてアタシに向かってくる。

 それにしても暑いねぇここは。砂漠なんて来るもんじゃないね。


 射程内に入った。


魔力強制排出マナ・ドレイン!」

 

 どうせ1回じゃ意味が無いだろうから、ひたすら連続で使用する。

 その効果があったのか、少しだけ、焼き鳥の体に色の濃い部分が出来た。

 温度が下がった証拠だねぇ。


 温度が下がったのなら、少し冒険をしてみようか。


降りそそぐ流星群メテオ・スウォーム!」


 頭ほどの大きさの隕石が降り注ぎ、手羽先に何発も命中した。

 だが効果はうすいねぇ、隕石が体を貫通するかと思ったが、体内に取り込まれちまったよ。

 とはいえ、温度の低い隕石によって、さらに色の濃い部分が生まれた。


 ダメだねぇ。あれだけ命中しても大したダメージが入ってない。

 もっと効果的な攻撃を探さないと。

 次。


連なる轟雷チェイン・ライトニング!」


 これは射程距離なんて無い、視界内ならどこでも届くからねぇ。

 しかしこれも失敗だった。

 何回も雷が命中したにもかかわらず、全く変化が見られない。

 

 本当に面倒くさいったらないねぇ……ん? なんだ、動きがおかしいぞ。


 今までは大空を飛び回り、大きく旋回しながらアタシに攻撃を仕掛けてきた。

 だが徐々に徐々に、旋回半径が小さくなっている。

 アタシを仕留めに来たのか?

 いいねぇ、このままだとラチがあかないからね、一気に勝負を決めようじゃないか。


闇の支配者ヴァンパイア降臨インクルージョン!」


 アタシの肌が白くなり、目が赤くなる。そして上アゴから牙が伸びてくる。

 ぶっつけ本番だったが、上手くいったようだねぇ。

 これはシステムがバージョンアップした際に覚えた新魔法だ。


 体力増強・魔力アップ・魔法攻撃力アップ・体力魔力回復速度アップ、ほぼすべての項目が倍近くまで上がる。

 ただし欠点もある。

 ヴァンパイアに近い体になるため、ニンニク・銀・十字架など、対アンデッド攻撃に弱い。

 さらに……対炎耐性が大幅に下がる。

 

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