第3章 第36話 幼女の鉄壁の防御力

「お前が転生者か?」


「そーよ。あーっしがこの国の転生者にして守護神! アミック様よ!」


 アミック? ああ、お前がギルドで噂されていた子供か。

 確かにこんな戦い方をするのなら、他の冒険者や騎士では歯が立たないだろうな。

 

「それでどうする? お前の手駒は全て無くなったぞ」


「手駒? ぬいぐるみの事? キャハハハ! じゃあ手駒が無くなったアミックちゃんをどうすんの~? いじめる? いじめる?」


 なんだ、こいつのこの余裕は。

 人形使いならば、人形が無くなった時点で終わりだと思ったのだが……違うのか?

 接近戦が出来そうには見えないが、魔法を使うのか。

 ああ、そういえば目に見えない弾があったか。


「イジメているのはお前だろ? 私は何もしていない」


「なにいってんのぉ~? あーっしのお城に忍び込んで、あーっしと王子様の仲を引き裂こうとしたじゃん! しらばっくれてんじゃねーぞ!!」


 何の話しだ? 私が忍び込んだのはギルド受付のメモや、エリーナの事を調べるためだ。

 その中には確かにお前の名前も出てきたが、それは過程であって目的ではない。

 思い込みが激しいタイプか?


「それならば安心しろ、お前と王子の仲など、私には興味がない事だ」


「しらばっくれてんじゃねーよ! でもなぁ、やっと玉の輿なんだよ! やっと見つけたショタなんだよ! あのくだらねー世界で50年も喪女やってて、やっと見つけた王子様なんだよぉお!」


 話しがかみ合っていないな。

 どこかで地雷を踏んでしまったのか? 異常な興奮だ。


「でもなあ~、王様は祝福してくれてんだよぉ~、シッシッシッシ、ぜひとも我が子の許嫁となってくれってなぁ!」


 それはあり得ないだろう。

 100歩譲って転生後に騎士となり、貴族の仲間入りを果たした後、さらに昇格して侯爵にでもなれば、王子との結婚も考えられる。

 だがこいつはどこの誰ともわからない、身元不明の幼女だ。

 国王が結婚など許すはずがない。


 いや待てよ……【乗っ取られている】というメモ書きの通りだとすると、アミックが国を乗っ取っているのか?

 ブラスティーと同じように、王族を操っている、という事だろうか。


 であれば、結婚は可能だろう。


「だからよぉ~、あーっし達の仲を引き裂く奴は許さねぇーー!!」


 ヨタヨタとこぶしを振り上げて走ってくるが、遅いうえに格闘経験があるとは思えない仕草だ。

 魔法使いでは無いのか?

 だが一応は警戒してかわすと、空振りして転んだ。

 ?? なにを、したいんだ?


「くっそ~、そんなにあーっしが怖いか!」


「人形のいないお前は怖くないが?」


「じゃ避けんじゃねーぞデカ女!」


 ピク……デカくて悪いか。

 リアは大きくてカッコイイと言ってくれた、だから……大丈夫だ。


「次は避けんじゃねーぞ男女おとこおんな!」


 ピクピク……エバンスは胸が大きくて羨ましいと言っていた、だから……大丈夫だ。


「くらえーい!」


 また同じようにこぶしを振り上げてヨタヨタ走ってくる。

 大丈夫だ、避けなければいいんだろう?

 だから私は、大きな石を掴んで拳目がけて投げつけた。

 ふん、喪女の相手などしていられるか、そんな拳は砕けてしまえ。


 だが砕けたのは石の方だった。なに!?

 一瞬のスキが出てしまい、私の腰にアミックの拳が命中・腰が……骨が砕けてしまった。


「うぐぁあ!」


 なんだ? なんだあの拳は! 硬い、異常に硬いぞ!!

 腰の骨が折れたため後退しようとしたが転んでしまった。

 戦士なのか? 格闘系? ヨタヨタ歩きは私を油断させるための演技か?


「シッシッシッシ、そんなんじゃコレを避けられないんじゃね?」


 アミックの両肩の上には光を放つ球体が浮いている。

 いや、反射しているんだな、鏡面が。

 球体から射出音がして何かが私目がけて飛んできた。

 アレだったのか!

 身動きの取れない私の足に、2つの見えない何かが命中し出血した。


 クソッ! これでも食らえ!


 巨大な弓をバッグから取りだし、アミックの額目がけて矢を放つ。

 最初からこうしていればよかっ―――矢が弾かれた。

 間違いなく矢はアミックの額に命中した。にもかかわらず、アミックは平然と立ち、地面に落ちた矢を見ていた。


「シッシッシッシ、プゲラwww 大体の奴はそんな反応するんだよねぇ~、勝ったと思いまちたかぁ~? ざーんねんでちたねぇ~、ぷーっクスクスクス」


 矢こそ違うが、大きなクマのぬいぐるみに放ったモノと威力は大差ない。

 それを無傷ではじき返しただと??

 それはつまり、私の攻撃は通用しないという事だ。


 盾役なのか? 防御力にガン振りし、攻撃はぬいぐるみ頼みの前衛職なのか?


 ポーションを飲んだが、回復には時間がかかるだろう。

 そして私の目の前にはアミックが立ち止まった。

 

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