第3章 第30話 首都に到着したが、よし、破壊しよう

 翌朝になったが、もうアタシ達を覗き見してこない様だ。

 本当に子供なのかねぇ。


 馬車護衛の依頼のため馬車群と合流する。

 今度は馬車9台で、旅行客はおらず荷物だけだった。

 そして相変わらずモンスターは襲い掛かってくるが、盗賊・強盗の類には出くわさない。

 なんだろうね、商人の運ぶ荷物を襲わないなんて、この国の盗賊はだらしがないねぇ。


 リアがアタシに対しての距離が近くなった。

 物理的にもそうだが、昨晩の事で義理ながらも、互いに姉妹だと思っていたことが嬉しい様だ。

 アタシも嬉しい。

 本人は気付いていないだろうが、何回か『お姉ちゃん』と呼ばれた。

 その都度、周りがアタシ達を見る。

 そのうち慣れるだろうさ。


 そういえば休憩中やキャンプ中、キッカス達4人はアズベルやベネットの訓練を受けている。

 キッカスは数年で熟練冒険者になっただけあって、中々にスジが良さそうだ。

 だが他の3人はボチボチだねぇ。強くはなっているが、今までの凝り固まったクセを治すのに苦労している。

 歳も歳だからねぇ、若造に言われて素直に直せればいいが。


 数日の移動を経て、ようやく首都に到着した。

 通行料1Gを払ってね。

 流石に首都だけあって城壁は大きかったが、それでも先の戦争で占領された街・エリクセン程度だ。


 護衛した商人に依頼書にサインを書かせ、冒険者ギルドへ向かった。

 さて、今度は何てメモを渡されるのかねぇ。


「ようこそいらっしゃいました! ユグド……ルリ子さんですね! 歓迎します!」


 拍子抜けするとはこの事か。

 前までの街とは違い、ギルド内は明るく活気があり、ジロジロみられる事もない。

 さらには受付嬢までアタシ達を歓迎している。


「気色悪いね。たかだか依頼で来ただけでこの騒ぎかい? さっさと金出しな」


「はい! それでは馬車の護衛依頼ですね。35Gになります、どうぞ!」


 不気味なくらいの笑顔で革の小袋を渡してきた。

 それで? 他に渡す物があるだろう?


「どうされましたか? 他に依頼をお受けになるのなら、掲示板をご覧ください!」


「あ? ああそうかい」


 今依頼を受けるつもりは無いんだがねぇ……依頼を受けたらメモを渡すつもりか? それなら親書をココの王族にくれてやってから、改めて受けた方がいいか。

 しかしどうにも腑に落ちないね、あまりにも他の街と違いすぎる。

 もうアタシ達をのぞいてる目は無い。

 あれは何だったんだろうねぇ。


 リアやエバンスも目が無くなって安心しているが、得体のしれない者の正体がわからずモヤってる。


「どうするんだ、このまま王城に行って親書を渡すか?」


 今は依頼を受けるつもりは無いが、次の行動を決めるために、ギルド内で休憩している。


「そうだねぇ、面倒事はさっさと終わらせるに限る、さっさとくれてやるとしようかね」


「くれてやるって、一応は王族間の親書なのよ? もう少し言葉を選んでほしいわね」


「ヘイヘイ、お姉様のいう事は全て正しいですからねぇ」


 全くベネットは口うるさいねぇ、のぞき見されていた事で少々イラついていたせいか、子供みたいな反論をしちまったよ。

 ベネット達には目の事を話していないから、イラついている原因も知らないのに。

 八つ当たりしちまったね。


「お姉様って……あなたがアセリアのお姉様なのよね? ル・リ・子・お・ね・え・ちゃ・ん?」


「ああそうさ、美人姉妹だろう?」


「ほ、本当かルリ子? 1番弟子の私を差し置いて、アセリアと姉妹のちぎりりを結んだのか!?」


「1番弟子もリアだよ、エバンス。お前は2番目だ」


「ガーン! じゃあ妹2号でもイイ」


「ちょ、ちょっと待ってください! 私とルリ子さんが姉妹なのは、ユーさんとの繋がりがあるからです! 勝手に妹を増やさないでください!」


「じゃあ、ユグドラとの繋がりがあれば、妹を名乗ってもいいんだネ!」


「どうしてそうなるんですかー! ダメダメ! 絶対にダメです!!」


 必死に抵抗するリア。顔を真っ赤にして可愛いじゃないか。

 本気でユグドラを寝取ろう、なんて奇特な奴は居ないだろうがね。

 リアルな話し、モテ期が1度も来たことが無いしねぇ。


 仕事の話しをそっちのけで雑談していると、ギルドに4人の男が入ってきた。

 4人とも堅苦しい服装だねぇ、どこかの執事か?

 そう思っていると、アタシ達の前で立ち止まる。


「ユグドラ一派だな? 国王陛下がお呼びだ、直ぐに城まで来るように」


「誰だい? お前は」


 1番若そうなヤツの表情が変わる。おーおー、どうしたんだい坊や。


「我々は国王陛下直属の者だ! お前たちは命令に従え!」


「五月蠅い坊やだねぇ、いまから行くかどうか決めてる所だ、お前たちが決める事じゃないよ」


「国王陛下の命令だと言っている!!」


「まぁまぁ2人とも落ち着きなさい。私達は伝言を預かって来ただけだ、確かに最終決定権はこの方たちにある。しかし、王命という事もある、最優先でお願いできないだろか」


 白髪でヒゲの両端が跳ね上がっているジジイが出しゃばってきた。

 どうもこいつ等には言っても分からない様だねぇ。


「だからそれを決めてるって言ってんだよ。王命とかアタシ達には関係な―――」


「ゴホン! 申し訳ありませんが、私達は長旅を終えたばかりであり、城へ向かうのは身だしなみを整えてからにしたいと考えています。その際は、改めてご連絡させていただきたく存じます」


 なんだい? ベネット、こんな連中殺しちまえば良いじゃないか。

 だから王族とか貴族は嫌いだよ。


「うむ、そういう事ならば仕方がない。そこの女! お前もしっかり着飾ってくるのだぞ!」


 プチン


「ゲート。みんな出ておい―――むぐ」

 

 うちの子らを全員呼んでこの街を破壊しようとしたが、5人に止められちまった。

 チッ、こんな国は無くなっても困らないだろうよ。

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