第2章 第40話 モンスター街道
建物の玄関前に細身で長身の男性が居ました。
あごひげは短く切りそろえられ、髪はオールバック、年のころは35前後でしょうか、その割にはシワが多いように感じます。
身なりも振る舞いも良く、恐らくこの方がダクラスター公爵なのでしょう。
馬車から降りるクローチェ王女の手を取り、エスコートしています。
自然なふるまいですね。
「久しぶりだなダグラスター侯爵。変わりないか?」
「お陰様で変わらず過ごせております。今日はどうされますか、早速打ち合わせをしますか?」
「うむ時間が勿体ないからな、早速はじめよう」
キャラクターチェンジ
⇒ユグドラ
ルリ子
しずか
番長
ディータ
メイア
◆ しずか ⇒ ユグドラ ◆
体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。
馬車の中で交代し、屋敷に入る。
クローチェ王女と燕尾服の2人はダグラスター公爵と執務室に入り、俺達は部屋の前と周囲の警戒に当たった。
ひっろ……アズベル達はこのお屋敷に来たことがあるらしく、構造を知っているらしい。
だから知らない俺とリアは屋敷探索をしている。
「大きいね~。お城も大きかったけど、ここも大きくて迷っちゃいそう」
「ホント、公爵って事は随分と偉い人だよね? やっぱりこれ位は必要なのかな」
一通り入れる場所は入り、建物以外も庭の探索を終えた。
大きすぎるけど警備体制はしっかりしているようで、巡回の兵士はしっかりしてるし、大掛かりな暴動でも起きない限りは問題なさそうだ。
「かなり時間かかったけど、そろそろ戻ろうか」
「うん」
執務室の前に戻りみんなと合流したが、どうやら会合は長引く様で、途中で何度も休憩を挟んで夜まで行われた。
クローチェ王女凄いな、まだ子供なのに働きづめじゃないか。
流石に護衛の間はひたすら待つか見回りをするだけなので、アニタさんにはギルドで訓練をしてもらった。
「よし、それでは各ギルド訪問を行う。ゆくぞ」
次の日は次の日で各種ギルドの訪問をして、防壁や警備体制の視察だ。
歳は12歳らしいけど、とてもそうとは思えないほど手際よく進めている。
あんな小さな体に凄いバイタリティだ。
それにしてもクローチェ王女、行く先々でとても友好的に迎えられ、王女自身もとてもフレンドリーだ。
王族ってこんなに庶民と距離が近くていいの?
この日は順調に進み、明日にはチグリフォーンの街を出て、オダールの街へ向かう事になった。
「それではクローチェ王女、打ち合わせ通りに事を進めておきます。道中、お気を付けください。それと……」
馬車に乗る前に、ダグラスター公爵はクローチェ王女に耳打ちをした。
2人ともとても険しい顔をしているな。
なにかマズイ事でもあったのかな。
「それではなダグラスター公爵、有意義な時間であった」
「こちらこそ。またのお越しをお待ちいたしております」
公爵とその家族らしい人達、執事やメイド総出でお見送りしてくれた。
「う~ん、やっぱりチグリフォーンはいいな、活気があって秩序正しいし、バランスの取れた街だし」
「確かにあの街はいい街だけど、王都はもっと凄いし、他の街も秩序正しいと思うけど」
馬車の中で背伸びをし、すっかり素の状態になった王女の感想に少し違和感を感じて聞き返した。
「ユグドラはもっと南の街へ行ったことある?」
「ここより南? 初めてだよ」
「じゃあオダールの街を見たらビックリするぞ。あそこから南は随分と変わるから」
随分と変わる、その言葉を口にしたクローチェ王女の表情は、少し険しく複雑なモノだった。
オダールの街へは2日間の道のりなのだが、何故か朝昼晩とモンスターや盗賊に襲われた。
モンスター相手はパーティーの連携を確認し、盗賊相手は番長に交代して一気に殲滅させる。
しかしな、昼夜を問わず襲われたのは初めてだ。
チグリフォーンの街は治安も良いし警備も万全、でも少し離れればこのありさま。
逆におかしいだろ。
頻繁に襲撃にあい、王女や燕尾服は疲れているようだ。
食事や寝床、警備は万全でも、精神的な疲労はいかんともしがたい。
「この道は相変わらずだな」
「ええ、いつも通りだわ」
「え? いつも通りって、いつもこんなに襲われるの?」
アズベルとベネットがため息とともに、
「そうだな、この道はいつもこんなだ。だから腕利き冒険者が護衛をするんだが、なにぶん危険でな、割増料金を請求するくらいだ」
「モンスターが多い地域なの?」
「そうでもないわね、定期的な討伐もされているし、この地域にしか出ない生き物が少しいる程度ね」
「じゃあなんで?」
「しらん。こっちが聞きたいくらいだ」
俺達はこれ位は危険でもないし疲れもしない。
でも
そんな事を考えていると次の街、オダールの防壁が見えてきた。
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