第2章 第39話 ダグラスター公爵

 現れたのは大型モンスターのオーガとゴブリン、狼の混合の群れでした。

 これは丁度いいですね、アズベル達に初めて会った時と似ています。


「私は馬車の直衛をしています。皆さんで倒してください」


「おうさ! まかせときなって!」


「見ていてくださいねしずかさん」


「ウチのリーダーは人使いが荒いわね」


「良い所見せる。アイテム貰える!」


「あっはっはっは、私も頑張るからネ!」


 アイテムはあげませんよ? ドラゴンと戦った後に渡したばかりではありませんか。

 クローチェ王女と燕尾服の2人は馬車の中に入ってもらい……ハァ。


「クローチェ王女、中に入っていてください」


「ヤダ! 見てる!」


「ここに窓がありますから、ここから見ていてください」

 

 馬車のほろ横側には30センチ四方のめくれる窓があるので、そこから見てもらっています。

 燕尾服の2人にもしっかり入っていてもらいます。


 さて、みなさんの強さは分かっていますが、こうして以前と同じ相手と戦ってもらえば、さらに比較がしやすくなります。

 とはいえ一瞬で終わってしまう可能性も……終わっていました。

 王女を退避させている間に終わるとは、やりますね。


 ん? オーガが1匹だけ残っていますね。

 どうしたのでしょう……? どうしてみなさん目を輝かせて私を見ているのですか?


「ああ、そういう事ですか。ゴーレム、アタック」


 ゴーレムの1体に命令を出し、残ったオーガに攻撃をさせました。

 少し前傾姿勢で両手も使い、重い金属音を立てながら歩いて行きます。

 オーガの正面に立つと、オーガの方が一回り大きいのが分かりますが、ゴーレムは腕が長くて上半身が厚く、オーガは腕が短かく腹が出ているため、全くの正反対な体型です。


 オーガが棍棒で殴り掛かりましたがゴーレムは左腕で受け止め、右手を大きく上に振り上げ力の限りオーガに振り下ろします。

 オーガの脳天に命中した手はオーガの体を砕き、頭は陥没し、足は折れ曲がり、背中と尻がくっ付く様に胴体が折れ曲がりました。


「こちらも一瞬でしたね」


「え、えげつねぇ……」


「なんだか動きも早かったんですけど……」


「? 力はユグドラや番長よりありますが、あれほど素早くは動けませんよ?」


「ああ、比較対象があの2人だったのね……」


「魔法、効くのかな」


  この日はゴーレムに護衛をさせたので、私達はみんなで寝ることが出来ました。

 ゴーレムは疲れを知りませんし、エネルギーというモノも必要ありません。

 心臓部であるクリスタルが破壊されない限り、動き続けます。




 馬車旅も2日が経過し、チグリフォーンの街が見えてきました。 

 朝は受付が混雑し街に入るのに時間がかかるのですが、クローチェ王女が居るお陰で顔パスで入りました。

 こういう時、権力とは便利な物ですね。


 街の中心部へ向かい、少し中心から外れた場所に大きなお屋敷が見えてきました。

 王城ほど大きくはありませんが、三階建ての石造りで四方に尖塔があり、中心には中庭があるようです。

 やはり例にもれず、門からお屋敷までの距離が非常にあります。

 豪華な庭ですね。


「それでは参ろうか。みな、ダグラスター公爵に失礼のないようにな」


 クローチェ王女が公務モードに入りました。

 変わり身が速いですね。

 私のキャラクターチェンジ並みに切り替わっています。


「遠路はるばる、ようこそおいで下さいましたクローチェ王女。歓迎いたします」


 建物の玄関の前に細身で長身の男性が居ました。

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