第2章 第41話 貴族至上主義
オダールの街
この街は少し変わっていて、街の中に山があり、山1つがまるまる兵士の訓練施設となっている。
山があるせいか街中にも木が多く、建物も木製のものが多い。
見方によっては森を切り開いて街を作った様にも見える。
しかし道はしっかり石畳で整備され、道端にはゴミ一つ落ちていない。
奇麗な街だな。
大通りには馬車や人が行かい、往来はとても規律正しく行われている。
でもなんだろう、兵士が凄く多い。
「なんでこんなに沢山の兵士が居るの?」
「この街はな、山で訓練をするために国中から兵士が集まるのだ。兵士訓練のための街、それがオダールだ」
なるほど、それで兵士ばっかりなのか。
じゃあなんで王女は険しい顔してるの?
「他に産業とかは無いの?」
「特にないな。精々鍛冶が盛んという事くらいか」
兵士が多ければ武器も防具も必要だしね。
しかしなんだろう、兵士が多いせいか規律正しい。
でもすっごくカタい。
融通が利かないというか、ルールは絶対! みたいな雰囲気がある。
長居したい街じゃないな。
「そろそろ到着するぞ。先に言っておく、すまない」
クローチェ王女が俺達に頭を下げた。
え? なんで? まさか俺達を罠にはめたのか!?
と、頭が混乱しているのは俺とリアだけで、他の4人は理解しているようだ。
「……なんで?」
俺の疑問には誰も応えてくれず、馬車は豪華な屋敷の前に到着した。
「ようこそおいで下さいましたっ、クローチェ様、歓迎いたしますぞっ!」
やたらとゴツイ体つきで、天辺に髪が無いわ代わりに横と後ろの髪が長いおっさんだ。
服装は武官といった感じで、軍服に近いがやたらと飾り立てられている。
語尾にやたら力が入っているな。
「久しいなマイゾーグ伯爵。元気そうで何よりだ」
「お陰様で100kgの重りを片手で持てるようになりましたっ。はーっはーっはーっ」
馬車から降りるクローチェ王女の手をもってエスコートしている。
貴族のたしなみなのかな?
「それにしても何ですかな? このみすぼらしい馬車は。クローチェ様ならもっといい馬車をおもちでしょうにっ」
「これは護衛している冒険者の馬車だ。見た目からは想像出来ぬほど乗り心地が良いぞ」
「冒険者ですとっ? あの様な下賤の者と共に来られたのですかっ。それはいけません、よろしければ
下賤の者……。
「それには及ばぬ。今回の者達も腕が立つ
「しかしあの様などこの生まれとも分からぬなど雑草も同然っ。ささ、ご遠慮なさらずお連れ下さいっ」
雑草……。
クローチェ王女の背中に手を回し、屋敷の中へと案内を始めた。
謝った理由はコレかぁ~。
事情を知っていたらしい4人は嫌な顔もせずに聞き流しているけど、俺とリアは努力したけど顔に出ている。
あー、もう帰りたい。
「貴様ぁ! 高貴なる我が屋敷へ足を踏み入れるとは何事かっ!」
突然マイゾーグ伯爵に横っ面をはたかれた。
が、麦わら帽子で隠れてるけど、金属ヘルメットをかぶっているし、思わず硬直してしまって踏ん張ったもんだから、マイゾーグ伯爵の右手に甚大なダメージが入ってしまった。
ちな、俺のダメージゼロ。
いや、本当に突然で何がやりたいのか分からなかったけど、右手を抱えて這いつくばってるよこの人。
多分骨折れてる。
「だ、大丈夫か伯爵? いきなりどうしたというのだ?」
「ここここ、この不敬な者どもを処分してくださいっ! 貴族たる
えー……、手を出したのはそっちじゃん。
流石にみんな呆然として……あれ? 屋敷側の連中は俺を睨んでるぞ??
あの、執事&メイドっぽい方々? なんで俺に怒りの矛先が向いてるの?
「手を出したのはお主では無いかマイゾーグ伯爵。私も見ていたのだぞ?」
「雑草など貴族のいう事さえ聞いておればよいのですっ。たぶらかされてはなりませんっ!」
呆然とする俺とリアに、アズベルがそっと耳打ちをした。
「こいつはな、貴族至上主義者なんだ。いつもこんな調子だから相手にしなくていいぞ」
「おのれぇぃ! クローチェ様を子供だからと
あ、子ども扱いされて王女から表情が消えた。
この伯爵、結構な無礼者だな。
「よかろう。ではマイゾーグ伯爵が直々に処分するがよい。その代わり処分できなかった場合は罪は無かったものとする。よいな」
そして連れてこられたのは広い訓練場。
どうやらここで俺を処分するらしいけど……どうしてこうなった。
「それではマイゾーグ伯爵とユグドラの一騎打ちを行う。マイゾーグ伯爵が勝てばユグドラは死刑、ユグドラが勝てば罪は無かったものとする。両者よいな?」
「はっ! 必ずや貴族の威厳を示して見せましょうぞっ! しかし
「うむ認める。ユグドラも良いな?」
「あの、なんでこんな事をしないと「よいな?」はい……」
なんだよぅ、問答無用かよぅ、クローチェ王女は味方だと思ってたのによぅ。
代役に現れたのは2メートルはありそうな巨漢で、全身が金属鎧で覆われていて顔も見えない。
そして体に見合った大きな剣と大きな盾も持っている。
「それでは、はじめっ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます