第2章 第32話 ドラゴンの前座、俺!

「ドラゴンと戦いたい? どうしたのいきなり」


 リアと再会して沢山お話ししようと思っていたら、予想しない方向に話しが進んでいる。

 なぜにドラゴンが出てくるのか。


「あのね、私、結構頑張ったと思う。ちょっと危ない事もあった、でも次からは大丈夫だったし、色んな相手と戦って、いろんな依頼を終わらせてきた。でも、もっと危険な目にあいたいの! そうしないとあの人と戦う時、ユーさんの役にたてないから」


 あの人とは、ブラスティーの事だろう。

 そっか、リアは本気でブラスティーを倒す気でいるんだ。

 ブラスティーとの戦いで、最終的には俺がカギになる。

 俺がどこまでアイツに食らいついて行けるか、アイツに合わせてどう交代しながら戦おうかと考えていた。


 だがもしも、ドラゴンクラスの強さを持つ者が味方にいたら……。

 でもな、もう一度考える。

 なぜドラゴンなのか。


「リア、どうしてドラゴンなの? 俺とじゃダメなの?」


「んー、ユーさんの方が強いのは知ってる。でも、ユーさんは絶対に手加減するから……私が危ない目に合わない様に」


「当たり前じゃん! リアに本気で武器を向けれるわけが……あ」


「そう言う事、かな」


「……はい」


 はい、としか言えなかった。

 俺よりも俺の事理解してるよ。

 でも考えようによっては、ゲーム時代でも単騎でドラゴンと戦おうなんてのは、1部のアホ共(誉め言葉)しか考えなかったし、ついにリアもその域に入ったと考えていいんだろう。


 お父さんは嬉しいよ!

 でもまずは今のリアの力を確認しないとね。


「ドラゴンと戦う前に、まずは俺と手合わせしよう。行けると思ったらドラゴンを出すから」


「ありがとう! じゃあ今すぐギルドの地下訓練場で――」


「まった。地下訓練場だと使える魔法に制限が掛かるから、王都の外でやろう」




 王都の外、森と王都の中間の原っぱ。

 俺が森に背を向けてリアと向かい合っている

 この位置なら魔法が外れても被害は少なくて済むだろう。


「ドラゴンと戦えるかの試験だから、本気で来てくれないと判断できないからね!」


「もちろんそのつもり! よろしくお願いします!」


 単独行動をする前のリアの魔法は、成功率で判断するとスキル値90前後だった。

 それ以降はゲームだと中々上がらず、初期の目標である100を前にして諦める人が多い。

 単独行動でどこまで上がったか、そして戦い方はどうなったか、だな。


 まずは魔法の矢マジックアローが飛んできた。

 小手調べだろうな、俺の左肩目がけて一直線に飛んできて、肩に命中。

 そして俺にダメージを与えることなくした。


「え? え? なに今の」


 マジックアローが命中してもダメージが通らない、それだけなら何回も経験してるだろうけど、霧散するのは初めてだっけな。

 目をパチクリしてる。

 これはひとえに俺の魔法抵抗力レジストスペルが高いからだ。


「リア、これで驚いてたらドラゴンとは戦えないよ?」


 キッと俺を見据え、次々と魔法を撃ってくる。

 ファイヤーボール、ライトニング、ファイヤーウォール、エネルギーボルト。

 そのすべてを霧散させ、リアは言葉を失っている。

 まだ使ってこないなぁ……流石に不安なのかもしれない。


 俺に大ダメージが入ったらどうしようって。


「安心して良いよ。今のリアの力だと、どの魔法を使ってもかすり傷程度だから」


 ちょっとあおってみた。

 流石にカチンときたのか、やっとアレを使ってくれた。


至極の炎熱柱フレイム・ストライク!」


 俺の足元から火柱が上がり、俺の全身が火で焼かれる。

 おお……これは中々……あたたかいな。

 火柱が出ているのは精々数秒だ。

 数秒間の暖を取り、俺は涼しい顔で歩き出した。


「じゃあ次は俺の番だね」


 その一言を聞いて、リアは慌てて杖で防御姿勢を取る。

 う~ん、本気になれないのは俺だけじゃなくてリアもだな。

 1歩を踏み出し、2歩、3歩と加速し、4歩目で俺の姿が消える。


 姿の消えた俺を探そうとあちこちを見回しているが、俺は首の動きを見て常に死角に移動している。

 1分ほど姿を消した後で、流石にコレは意味がない事に気が付いて姿を現す。


「つーかまーえた」


 リアの後ろから抱き付いた。


「ひゃぁあああ!」


「わわ! ゴメン! 驚かせすぎた!」


「ど、どこに居たの?」


 首をこっちに向けたリアは、少し涙目になってた。


「ん? ずっとリアの死角に移動してた」


「い、移動??」


「そ、超高速移動」


 少しの沈黙の後、大きなため息をついて俺から離れた。


「少し調子に乗ってたみたい。今の私だったら、ユーさんに1撃くらい入れられるって思ってた」


「それじゃあ師匠の面目丸つぶれだね。まだまだ1本取られるわけにはいかないよ」


「うん、思い知らされた。私のお師匠様は凄いんだね!」


 なぜだか俺がおだてられていた。

 でもリアの瞳はキラキラしてて、本当にそう思っているのが分かる。

 にへへ~、照れる。


「面白い事してるじゃねーか。ユグドラから1本取ったらドラゴンと戦えるって?」


「ぜひ私とも手合わせ願いたいわね」


「ドラゴンスレイヤー・エバンス、爆誕」

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