第2章 第30話 パーティープレイの限界
朝食を食べに宿の食堂へ行くと、すでにアズベル達が待っていた。
「お、来たか。じゃあメシにすっか!」
テーブルに並べられた朝食に手をつけようとするアズベルの頭を、アニタさんが引っぱたいた。
「その前に気づきなさいよ! アセリア、その衣装にあってるネ! ひょっとしてしずかさんの特製衣装かな~?」
「とても似合っているわ」
「むぅ、羨ましい」
女性陣はリアの新調された衣装に釘付けだ。
「ありがとう。この衣装だと身が引き締まる気がする」
今までの衣装も変では無かったが、少し周りから浮いていた。
ちょっと重装備な旅行客、って感じだったから。
衣装の話しに花を咲かせながら食事を取り、ついに指輪に話題が移った。
アズベルとアニタさんも指輪をしているが、『魔法の効果付き』と聞いて話しが広がりまくっていく。
そしてついさっき2人だけで式を挙げたというと、別の所から意外な人が話しに入ってきた。
「それは困っちゃうわね。アズベルちゃんもそうだけど、ユグドラちゃんとアセリアちゃんは冒険者ギルドの特例中の特例よん。盛大な式を挙げなきゃ面子に関わっちゃうわねん」
つかココでご飯食べてるんだ。
式の話しは後日という事で濁し、早速依頼を受けて指輪とリアの衣装の効果を確認しよう。
10日ほど活動して、討伐・護衛・採集・調査などをこなし、みんなの腕がみるみる上がっていくのが分かる。
まあ頑張る1つの要素として『リアに1撃入れたらしずかからアイテム1つプレゼント』というエサを目の前にぶら下げた訳なんだが……みんな貪欲すぎぃ!
みんなは1撃入れようと四苦八苦し、リアは入れさせまいと更に努力をしている。
う~ん、単純だけど効果
指輪やリアの衣装の効果もかなり高く、この装備なら当分リアに1撃を入れる事は出来ないだろう。
そしてまた掲示板の前で依頼を探している。
「ねぇユーさん」
「なに?」
「依頼を1人で受けてもいい?」
「え?」
「正直なところ、難易度の高い依頼でも、このメンバーだと簡単すぎて全然訓練にならないの」
あーそっか。腕が上がればそれだけ1人の負担が軽くなり、中々次のステージに行けないのか。
分かっちゃいたけどどうしようもないと思ってた。
でも、そっか、1人で受けるって手があったか。
今のリアなら、いや、今のウチのパーティーなら上級の依頼くらい1人で出来そうだ。
「最初は慣れた依頼を受けよう。素材収集とか。それでも大丈夫なら順番に上げて行けばいい」
「うん、ありがとう!」
「ちょーっと待ちな、面白そうじゃねーか。俺も1人でやるぜ」
「当然よね。アセリアがやって、私達が出来ないはずが無いわ」
「余裕。私もやる」
みんなもやるつもりだ。
1人で上級依頼を終えたら、そのうち熟練依頼も1人でやるのか……面白そう!
「わ、私もやるネ!」
「「お前はダメだ」」
アニタさんも1人でやると言い出したが、全員から否定された。
まぁ、無理だろうね。
「アニタさんは俺と残って訓練の続きですね」
「ふぁ~い」
残念そうな、ホッとしているような表情だ。
本音では行きたくなかったんだろうな。
それぞれがやりたい依頼を探し、順番順番に受けてくる。
しばらくはみんな別行動だな。
少し寂しいけど、これもみんなの為だ我慢しよう!
本当はリアに会えなくなって超超超寂しい!!
朝早くに起きてみんなの出発を見送り、メイアに交代してアニタさんに弓を教える。
昼からはしずかで鍛冶屋や大工で修理・製作。
流石王都だけあって、修理も製作も多岐にわたっていて飽きない。
そして空いた時間は冒険者ギルドで他の冒険者の指導と、中々にハードなスケジュールになっている。
訓練と割り切っていれば対人戦も平気なんだよね。
数日が経過し、アニタさんの練度もかなり上がってきた事もあり、1度依頼を受ける事にした。
依頼内容は街道整備の護衛で、王都近くの街道のため
街に近い場所は石畳が敷かれていて、今回補修するのはちょうど石畳と砂利道の境目、段差が大きくなり、馬車が乗り上げる際に車輪が破損する危険があるとか。
沢山の資材と人が荷車に積まれ、半日かけて移動する。
作業員が20人程、護衛は俺達を入れて6人だ。
現場に到着した。
広い街道の横1/3を封鎖し、順番に直すようだ。
「ねぇユグドラさん、ここら辺ってどんなモンスターがでるの?」
「この辺だと野生動物が多いですね。熊とかイノシシとか」
2人組に分かれ、周囲を警戒という名の散歩をしているけど、まだ日が高いから何も出て来ないかもしれないな。
「ふーん。どうやって倒せばいいの?」
「熊もイノシシも皮膚が分厚いですからね、頭も骨が堅くて矢が通らないでしょう。なので俺がひっくり返しますので、腹を狙ってください」
「分かった! よろしくネ!」
でもまぁ出て来ないかもしれないな~、手頃な訓練になると思ったんだけど。
と、フラグが立つ事を考えてしまい後悔している。
「デッドリーボアが出たぞ!」
危険を知らせる叫び声が周囲に響き渡った。
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