第2章 第22話 チグリフォーンの街と来訪者

 ◆キャラ・しずか◆


 翌朝には次の街、チグリフォーンに到着しました。

 この街は王都程ではありませんが防壁が高く、規模もかなり大きいようです。

 とはいっても王都の1/3以下ですが。

 王都が異常すぎるのでしょうね。


 王都に繋がる街なだけあって門が大きく、受付の列に並んで街に入ると大きな広場がありました。

 広場というより公園でしょうか、中央には手入れのされた芝生が敷かれ、中には木々が植えられています。

 その周囲は大きな馬車道と歩道に分かれ、交通が円滑にされています。

 沢山の露店と人だかり、自然と融和した街並みが見えます。


 王都とは随分と雰囲気が違います。


「この街は自然が多いのですね」


「そうだね、王都より南側は自然を利用した街並みが多いって言うから、段々と自然が増えていくかも」


 街の特色が出ているのは良いですが、北と南では南の方が森が深いのでしょうか。

 降車場に到着し、乗客が全員降りた事を確認してからギルドへ向かいます。

 

 歩きながら街並みを見ていましたが、レンガ造りの建物と木製の建物が半々くらいでした。

 王都はレンガ造りが半分以上でしたし、エル・ド・ランはほぼレンガでした。

 木の加工が盛んな街なのでしょう。


 ギルドが見えてきました。

 ギルドは他と同じレンガ造りで、王都以外の街と同じ大きさです。


 扉を開けて中に入ると、やはり構造は他の街と同じですね。

 安心します。


 アズベルが報告のために受付に行きましたが、なぜか私達のパーティーが呼ばれました。

 何かあったのでしょうか、ああ、ユグドラが戦闘不能になった件でしょうか。


「よく来たね。チグリフォーン担当のノクターンだ、諸君を歓迎するよ」


 赤毛の短髪、日焼けしている女性でわんぱくそうな顔つき、言葉遣い通り姉御肌のようです。

 制服の白地と青いラインが赤い髪と良く似合っていますね。


「初めまして、しずかと申します。諸事情により交代していますが、ユグドラに替わった方がよろしいですか?」


「いや構わない。記憶は共有だと聞いているからね、2度手間の必要が無くて助かる」


 右手を差し出してきたので握手をします。

 他の女性に比べて体つきがしっかりしていますが、やはり女性ですね、王都のグレゴリィオネェさんとは違います。


「それで私達を呼んだ理由をお伺いしたいのですが」


「特に用事は無い。この街は初めてだろう? 挨拶をしておきたくてね。だからアセリア、よろしくな」


「あ、はい、よろしくお願いします!」


 リアとも握手をしています。

 他のメンバーは……初めてではないようです。


「これで用事は終わりだ。依頼達成の報酬を払うから、後は自由にしてくれ」


 そう言ってアズベルに大きな革袋を渡すと、さっさと別の仕事を始めました。

 竹を割ったような性格をしていますね。気が合いそうです。





 他の冒険者と報酬を分けて馬車護衛は解散。

 まずは宿を探しましょう。

 ユグドラの事もあるので、明日直ぐに王都へ戻るかどうかの判断も必要です。




 キャラクターチェンジ

 ⇒ユグドラ

 ◆ しずか ⇒ ユグドラ ◆


 体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。


 宿の部屋の中で交代し、俺はすぐにベッドで横になった。


「ユーさん大丈夫? お水飲んで」


「ありが、とう、リア」

 

 小さなコップで水を飲み、嘔吐した際の汚れをタオルで拭いた。

 まだ気持ち悪い、だけど戦闘中に比べれば随分と楽になったな。


「しっかしお前は強いくせによく倒れるな。神獣ヴォルフと戦った時もそうだったし」


「そりゃ、相手が、相手だろ」

 

「ヴォルフもユグドラが倒したのよね? ユグドラでも大怪我するほど強いなんて凄いわね」


「いや、俺は負けたよ。倒したのはルリ子だ」


「え? じゃあ4つ首ドラゴンよりも強いのかしら?」


「4つ首の方が強かった。勝ったのは変なこだわりを捨てたからかな」


 ベネットが考え込んでる。

 なにか思う所があったのかな。


「そんな事よりユグドラ、お前トラウマになったんだって?」


 背もたれのある椅子に前後逆に座り、背もたれに腕とあごを乗せてアズベルが聞いてきた。


「……うるさいなぁ、しばらくしたら治るよ」


 どうしよう、どうしよう、どうしよう! 俺、役立たずになっちゃった! 

 戦う事しか能がないのに、その戦闘でも役立たずになったらいる意味がない!

 それにこのままだとリアが責任を感じちゃう!


 なにか、なにか手は無いのかな。


 みんなに背を向けてシーツをかぶる。

 あれ、手が震えてる。

 手だけじゃない、全身が震えてる。

 俺……怖いんだ、人と戦うのも、要らなくなるのも、リアに呆れられるのも。


 俺ってこんなに根性無しだったんだな。


「くぉーら見つけた!」


 部屋の扉が破壊する勢いで開き、誰かが入ってきた。

 女性の声だ。


「あ、アニタ!? どうしてここに居るんだ!」


「アズベルぅ~、このままトンズラしようと思ってもダメだからネ!」


 誰だっけ?

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