第2章 第20話 戦闘不能
ゴグールとの戦闘が開始されたが、俺は後方で1人寂しく観戦している。
リア怪我しないかな? 魔法使いは基本的に後方だから大丈夫だと思うけど。
俺の不安をよそに戦いは激しくなっていく。
アズベルは革鎧と細身の剣を使い、常に移動しながら戦うスタイルだ。
1対1でも常に動き回り、目標を定めさせず先手先手を取っている。
しかし今回の相手は小さい事もあり、1撃入れればほぼ勝負がつくため“走り回る”に近い戦い方だ。
ベネットは小型の盾と金属鎧を装備し、長剣を持っている。
基本的に足を止めての戦いだが、盾や剣で上手く敵の攻撃をいなし、相手のスキを突く。
しかしベネットも相手が小さい事で、走りはしないが歩いたまま剣を振るい、ほぼ1撃で仕留めている。
そんな2人が連携を取ると、ゴグールは何もできず倒されていく。
アズベルが撹乱しながら走り回り注意を逸らすと、すかさずベネットの剣が飛んでくる。
かと思えば、槍を持つゴグールの遠距離攻撃には、ベネットが率先して前に出る。
以前から何度も一緒に仕事をしているだけあって、相手の癖や戦い方を熟知しているな。
王都での訓練でも連携が取れていたし、さらに磨きがかかったんだろう。
そんな状態だから、魔法使いや弓の仕事が無いかと思ったが……こっちはこっちで面白い。
リアやエバンスを筆頭とした魔法使いたちは、どうやらゴグールの弓部隊を戦闘開始直後に倒し終えたらしい。
弓の数が少なかったこともあり、今は前衛部隊のフォローがメインだ。
しかも藪の中から沸いて出るゴグールは小さいため、正確な敵の数が分からない。
なので街道と藪の境目に
これで敵が一斉に襲い掛かってくるのを防ぎ、数を調整している。
しかしやはり数が多いので馬車の近くまで来るのだが、いつの間にか魔法使いの接近戦闘術が広まっており、魔法と弓による迎撃態勢が完成されていた。
何もするなって言われたけど、確かに何もする事がない!
懸念材料だったリアが生き物を殺せるかだけど、訓練中に散々ルリ子や冒険者を目標にしたためか、魔法を撃つ手に戸惑いが無い。
それにアレだ、なんだっけ集団心理? 赤信号を誰かが無視したら罪悪感が無くなってゾロゾロと増えていくやつ、アレもあるな。
なんにせよ、冒険者として十分やっていける。
大体1時間か2時間かからない位で戦闘が終わった。
冒険者の被害は数名の怪我人のみ。
馬車や旅行客への被害はゼロだ。
ついでに、コッソリ馬車の陰に隠れていた、王都へ向かう徒歩の人達も無事だ。
こうやって夜をしのぐのか。
「よし! 15人で死体の片づけをする! 馬の者は街道周辺の偵察、残りは馬車の護衛だ!」
アズベルの号令の元、素早く次の行動に移る。
俺は死体の片づけだな。
「お疲れ様、リア」
「お疲れ様ユーさん」
片づけをしていたリアに声をかける。
死体は運んでいないが、落ちている物を拾い集めていた。
「どうだった? 生き物相手は初めてだったけど」
「ん~、やっぱり最初は戸惑っちゃった。生き物を殺すのは抵抗があるけど、みんなを護らなといけないし、なにより自分で選んだ道だもん、戸惑ってる暇なんてないよ」
おー凄いな、リアって意志が強いし行動力もある。
逆に失礼な質問だったな。
この晩は他に襲撃もなく、交代で見張りをして終了した。
翌朝の出発から昼までも襲撃が無く、実に平和なもんだった。
このまま何事も無く明日の到着を迎えられれば良かったが、そう都合よくは進まない。
夜になり野営場所へ向かっていると、街道が封鎖されていた。
沢山の松明が置かれた場所には、木で
「とまれー、とまれー」
部分的な金属鎧を着て、槍を持った兵士が大きく手を振っている。
ゆっくりと減速し、柵から少し離れて止まった。
馬車群の隊長である商人とアズベル、ベネットが歩いて話しを聞きに行く。
何かあったのかな。
俺は馬車から降りて背伸びをした。
ん~~……お尻が痛い。
リアも降りて背伸びをした。
「ん~~……お尻が痛い」
「それは大変だ、俺がマッサージしてあげよう」
指をワキワキ動かしてリアの背後に回ろうとするが、お尻を両手で押さえて防御されてしまった。
「も、もう! そうゆう事は人前じゃダメだって言ったでしょ!」
人前でなければいつでもOKなんですね!
軽くイチャついていると悲鳴が上がる。
もちろんリアの声ではない。
「敵襲ー! 敵襲ー!」
急いで声のした方へ行くと、馬に乗っている冒険者の腕に矢が刺さり、血を流していた。
そして次々と矢が飛んできて冒険者に当たっていく。
クッ! 暗くてよく見えないが、この場所は森に囲まれていたはずだ。
視界が悪いし敵の詳細が分からない。
「ストーンウォール!」
リアが魔法で石の壁を作り、矢を防ぐ。
魔法使いたちが数か所に壁を作り矢を防ぐと、次は直接襲い掛かって来た。
どうやら盗賊らしい。
アズベルとベネットは大丈夫か見てみると、どうやら向こうも大変なようだ。
兵士に見えた奴らは盗賊が変装していたらしく、すでに多数に囲まれている。
まぁ、2人がいれば隊長さんも大丈夫だろう。
こっちはこっちで被害が出ないようにしないとな!
壁から飛び出して近くにいる盗賊を斬り倒す。
ん? 数は多いけど強くないな。
しかし……なんだ? 気持ち悪い。
俺が飛び出したことで盗賊達は俺を目がけて突っ込んでくる。
気持ち悪いなんて言ってる場合じゃない!
1人、2人と斬り倒し、他の冒険者も加わり乱戦になる。
頭が痛い……めまいがする……吐き気が……する……。
なんだ? なん、なんだ!? まさか毒をまかれたのか?
いや、他の冒険者は平気そうだ。
クソッ! こんな、こんな事くらいで……ウッ!
俺は胃の中身を口からぶちまけ、地面に手をついて動けなくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます