第2章 第19話 護衛依頼で放置プレイ

 ヒドラプラントの討伐が終わり、ウチのパーティーの連携や実力も分かった。

 リアは戦い慣れていないモンスターとの戦いだったが、いくら強くても初心者、しっかりと他のメンバーの指示に従って動いていたし、分からない事があればすぐに聞いてくれた。

 戦力としても申し分ないし、経験を積めば間違いなく1流の冒険者になる。


「ねぇねぇ、次はどの依頼を受けるの?」


 ヒドラプラント討伐の報告を終えて、皆で掲示板を見ている。

 王都というだけあって依頼の数はとても多く、ピンからキリまで山のようにある。

 最初の依頼は大変だったけど、大変ながらも達成感があったようで、リアはとても楽しそうだ。


「そうだね、植物系は当分見たくないから、動物型モンスター討伐? なんなら馬車の護衛依頼でもいいね」


「護衛依頼か、王都からだとバールドかジョザ・マルーザ方面と、チグリフォーン方面に分かれるな」


「距離で言うと、チグリフォーンが馬車で2日、バールドが3日、ジョザ・マルーザは4~5日になるわね」


 ジョザ・マルーザって街は遠いんだな。

 最初の護衛依頼だから長期間だと疲れるかもしれないし。


「じゃあチグリフォーンって街に行く? 往復で4~5日なら疲れも溜まらないと思うし」


「うん!」




 次の日の朝、チグリフォーン行の馬車護衛依頼にいた。

 チグリフォーンの街も王都程では無いがとても大きな街らしく、馬車の数も20台を超えている。

 すべて幌付きの馬車で、商人の荷物や旅行客が乗り込んでいる。

 

 護衛する冒険者の数は30人程、少し違うのは馬に乗っての護衛が10人いるという事だ。

 チグリフォーンの街は大きいため、道中の危険性が高く、斥候せっこう部隊が必要なのだとか。

 大きな街同士なら道中は安全だと思ってたから驚いた。


 軽い顔合わせの後、冒険者は配置を決める会議をする。

 しかし大体の配置は決まっているらしく、会議もすぐに終わった。


 アズベル、ベネット、エバンスの3人は馬で先行し偵察。

 他にも熟練冒険者は馬に乗り、馬車から少し距離を置いての護衛で、それ以外は馬車に乗っての護衛となる。

 リアはまだ初心者のため、俺と一緒に最後尾の馬車に乗っての護衛だ。


 王都を出発してチグリフォーンを目指す。


 まず驚いたのが道の広さだ。

 バールドの街から王都へ向かう道は確かに広かったけど、馬車が10台横に並べるほど広くなかった。

 精々5~6台だったと思う。

 やっぱり大きい街同士だと交通量が多いのかな?


 しばらくすると徒歩の人達がたくさん王都へ向かっていた。

 俺とリアは馬車の後ろ側のステップに座っているため、王都へ向かう人達の背中を眺めている。

 この道は危険じゃなかったの? 護衛は? それともみんな強いの?


 疑問はあるけど聞ける人もいないから、昼食時にでも聞いてみよう。


 


 どうやら徒歩の人達は金がなく、危険を承知で王都を目指しているらしい。

 王都に行けば仕事がある、と期待して。

 東京に行けば仕事はあるけど、物価が高くて生活は苦しいってパターンかな?


 


 夜になって馬に乗っている冒険者が色めき立った。

 どうやらモンスターか何かが接近しているらしい。

 馬車群は夕食の真っ最中であり、ヘタに混乱されると後始末が大変だ。


 旅行客には自分の食事を持ったまま馬車へ入ってもらい、護衛を依頼した商人達には片づけをしてもらう。

 敵は馬車の進行方向右側。

 話しを聞くと、ここら辺には小型のモンスターがよく出るらしい。


 馬に乗ったままでは戦いにくい相手らしく、全員が地面に降りた。

 それぞれが武器を構えて周囲を警戒し、その時を待つ。

 

「今だ!」


 アズベルの号令が下り、1方向へ向けて魔法と矢が飛んでいく。

 “何か”に命中し悲鳴が上がる、と同時に複数の何かがやぶの中から飛び出してきた!

 身長1メートル足らず、ガリガリに痩せて腹が膨らみ、泥色の肌にボロボロの腰巻を身に着けた小人の種族・ゴグールだ。


 ゴグールは槍や斧、弓を持っており、藪の中から数本の矢が飛んできた。

 俺とリアの方にも飛んできたが、リアがエネルギーウォールを使ってはじき返す。

 よし、俺も行くか! 斧を構えて前進するも、アズベルに止められた。


「お前は今回なにもするな、そこで見ていろ。アセリア、行くぞ」


「はい!」


「え? なんで?」


 俺を置いて戦闘が開始された。

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