第2章 第18話 5人パーティーの初陣で新種てw

 ハリスさんが着替えを終えて部屋に入ってきた。

 ローブどころか普通の町娘みたいな格好だ。それにメガネっ子だったのか。

 カーテンが開けられて、すっかり明るくなった2階の部屋だが、壁一面に本棚が置かれて書物がギッシリと詰まっている。


「お騒がせしてすみません御2人とも。ギルドの申請は確かにお受けしましたので、後日カードを取りに来てください」


 さっきまでの色っぽい話し方とは打って変わり、すこしたどたどしい方言の様ななまりになっている。

 うん、オレ的にはこっちの方がいいや。


 そして魔法に関しては俺の魔法の書を貸し出し、使う人間が必ず写本する事、と念を押しておいた。

 俺の魔法の書は返してもらうし、魔法を覚えるにはまず書いて覚えるのが1番だろうから。




 魔法ギルドの用事が終わり、冒険者ギルドへ戻ってきた。

 さて、それでは依頼を受けるとしよう!


「お帰りユグドラ、アセリア。めぼしい依頼をリストアップしておいたわ」


「ありがとうベネット。それじゃあどれにしようか……ん?」


 待ち合わせスペースに置かれた依頼書を見ているのは、俺、リア、アズベル、エバンス、そしてベネット。


「私としてはコレとこれが良いと思うわ。アセリアの実戦訓練にもなるし、私達も連携の練習に丁度いいわね」


「ねぇベネット」


「なにかしら?」


「付いてくるの?」


 ブッ! と吹き出して慌てて口を押さえるアズベル。

 その隣では無表情ながらも、口を歪ませて笑いをこらえるエバンス。

 なんだ一体。


「……つ、付いて行くわよ。私はあなたの弟子、弟子の教育を放棄するつもりかしら?」


「え、そんなつもりは無いけど。でも訓練会は解散しちゃったし」


「つべ、つべこべ言わずに選びなさい。さあどれにするの?」


 ご、ごーいんだ。

 ベネットは訓練中もこんな調子だったけど、訓練が終わってからも強引なんだな。

 しかし、笑いを必死にこらえている2人が気になる。


 まぁ4人が5人になったところで構わないけどね。


「リアは受けたい依頼とかある?」


「ん~とね」


 数枚の依頼書を手に取り悩んでいる。

 その中にはベネットが勧めた2枚も入っていた。


「素材集めもいいけど、最初は戦闘に慣れたいからコッチがいいな」


 選んだものを見ると、討伐依頼・プラント型モンスターと書かれていた。


「プラント型ってなに?」


「この場所だとヒドラプラントやデッドリーフかしらね。簡単に言うと動き回って人を襲う植物よ」


「へー、訓練にいいの?」


「動きが速くないから良いわね。ただ、触手や毒液を使う奴もいるから注意が必要よ」


 ベネット物知りぃ~。

 そっか、毒はリアには効かないし、触手に注意したら問題なさそう。

 ……触手? いやいや、いかがわしい事なんて考えていないぞ。


「じゃあそれにしよっか」


「うん!」


 笑いをこらえ切った2人もやっと戻ってきた。


「よし、じゃあ準備をして出発は明日か?」


「そうだね、相手の情報をしっかり調べて、それから出発だね」





 翌朝になり馬車を目的地へ向けて走らせた。


「なにこの馬車!? 貴族のボンボンが使っているのより乗り心地がいいわよ!?」


 ベネットがソファーに座ってとろけてる。

 しずかが聞いたら喜ぶセリフを聞きながら、森の中に入っていった。

 

 プラント型のモンスターは種類こそ多いが、攻撃手段は少ないらしく、基本的に直接触れない・触手に気を付ける・毒を浴びない・の3つに注意すればいい様だ。

 強い個体は魔法を使うという噂があるらしいが、アズベルもベネットも見た事が無いらしく、油断をするなという忠告ではないか、と。


 それってなんてフラグ?


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「ただいまもどりましたー」


 3日後、王都のギルドに戻ってきた。


「あらお帰り。遅かったわねぇ、どうだったの?」


「ええ、おおむね順調に行きました。ただ……」


 ヒドラプラントの討伐を終え、オネェに報告をする。

 今回の討伐依頼、一言で言うとかなり大変だった。


 まずヒドラプラントだが、全高1~1.5メートルほどで全身が緑色、直径30センチはある太いくきの先端には大きな赤い花が咲いていて、4本の太い根がうねる事でゆっくり移動している。

 だが花びらの先には細かい牙がたくさん生えており、花が咲いたり閉じたりすることで獲物を捕食する。

 さらに花の中心から出る長い数本の触手で攻撃をし、触手を切ると花粉が周囲にまき散らされ、くしゃみが止まらなくなる。


 そして今回は新種に遭遇した。

 新種は通常時の見た目は変わらないが、なんと背景に溶け込んで見えなくなる。

 カエルやカメレオンの様に単調な色に替わるのでなく、タコの様に背景の凹凸まで再現するのだ。

 口を閉じた状態では花びらの裏が緑色のため完全に見えない。

 敵が射程距離に入り、さらに背後を取った時に限り、花を開いて攻撃してくる。


 マジでやばかった。


 しかも組織的に行動し、気が付いた時には包囲されていた。

 普通のヒドラプラントが50、新種が50の計100匹は居たと思う。

 

 殲滅に3日間を要した。


「あらそんなに大変だったの? 偶然とはいえ、アナタ達に行ってもらって良かったわ~」


 報告に時間がかかりそうだったから、受付カウンターではなく、1階にある待ち合わせスペースに移動していた。

 お茶を飲みながら一息ついている。


 驚いた表情をしてるけど、あんまり驚いてないなこのオネェ。

 予定の10倍の数を倒したってーのに。

 ちょっと意地悪したろ。


「ええ、本当に私達で良かったです。こうして捕獲に成功しましたからね、はいコレ」


 オネェの目の前に新種のヒドラプラントを1匹置いた。

 流石に驚いたようで、お茶をこぼして壁にピッタリくっついてる。


「今は麻痺してるので動きませんよ。まだ数匹連れてきたので、しっかり調べてくださいね(ハート)」


 うん、ちょっと気が晴れた。

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