第2章 第17話 魔法ギルドの誘惑

「こちらの部屋でお待ちください」


 2階にある1室に案内されて、長ソファーに2人で座る。

 前には低いテーブルとその向こうにも長ソファーがあり、案内してくれた女性が温かい紅茶を入れてくれた。


 なんだかとっても雰囲気のある建物だけど、なぜか昼間なのに薄暗く、途中の階段や廊下も暗かった。

 この世界の魔法使いのイメージってこんななのかな。


「ユーさんユーさん、なんだか魔法の館って感じがするね!」


 うん、どうやらそういったイメージらしい。

 でもなんでこんな場所に入れられたんだろう。

 それにどうして俺達の名前を知っていたんだ?


 少し警戒を強めた方がいいな。


「お待たせしました」


 1人の女性が部屋に入ってきた。

 

「私はギルドマスターのハリス。ユグドラ様、アセリア様、本日はようこそ魔法ギルドへお越しくださいました」


 丁寧に頭を下げて挨拶をしてきた。

 うすい紫の布をかぶり、目から下にも紫の布をつけてあるため表情は読めない。

 そして……なぜか紫の布ビキニに黒に近い濃い赤のマントをはおり、紫のスカートに近い腰布パレオを巻いている。

  髪は長そうだが、後ろで纏められている。


 とても色っぽい話し方で、目元はキリリと鋭いがうれいを帯びている。


 おれ知ってる……エロ漫画で見た事あるよ! エロ占い師だ!

 魔法使いじゃねーし!!


「初めまして、ユグドラと申します」


「は、初めまして! アセリアと申します!」


 2人で立ち上がって挨拶をしたけど、リア緊張してる。

 ハリスさんにうながされて座ると、ハリスさんは向かいに座り足を組む。

 み、みえ……いやいや、パンツが見えるわけないジャン、パレオがあるんだし……なぜか足を組みなおし、パレオがずり落ち足がむき出しになる。


 ゴフッ! 薄暗い部屋だからいいけど、外だったら絶対見えてる!

 足がキレイ。

 そして小ぶりだがしっかりとした膨らみのある胸……顔が見えないのが残念だ。

 

「本日はどういった御用件でしょうか」


 ハリスさんの問いにハッと意識が戻された。

 そしてリアが腕に抱き付いてむくれている。

 いかんいかん、嫁の前で何やってんだ。


「えっと、今日はこちらのアセリアが魔法ギルドに登録をしたいので、手続きにお伺いしました」


「そうでしたか、ではこちらの書類にご記入をお願い致します」


 テーブルの下に書類が置いてあるようで、足をほどいて前かがみになって書類を取ろうと……谷間! OPIの谷間が見えてますハリスさん!!

 リアが俺の腕にしがみ付く力が強くなる。

 いやあのね、腕からもOPIの感触が!!


 書類がテーブルに置かれて俺の前に差し出される。

 ん? 俺じゃなくてリアだぞ? 書類をリアの前に置こうと体を前に出すと、ハリスさんの顔が目の前に現れた

 うお! なんだ!?

 

「さあユグドラ様、あなた様も是非魔法ギルドにご加入ください。そうすれば……そう……」


 耳元で囁くように言われ、チョッとドキドキしたけど、だんだんと声が小さくなって聞き取れなくなった。

 そう、の次は?


「ムリーー!! こんなのムリに決まってるじゃない! こんな格好でこんな事したって無理よ! 私には無理!」


 そう無理。

 なにが??


 ハリスさんはソファーで足を抱えて横向きに座り、マントで体を隠して泣き叫んでいる。


「ギルマス何をしてるんですか!」


 ドアを乱暴に開けて数名の黒いローブを着た男女が入ってきた。

 そして必死にハリスさんのマントを引っぺがそうとしている。


「今がチャンスなんですよ! この2人を篭絡ろうらくして魔法を教えてもらうんです!」


「そうですよ、体力のない私達が魔法を教えてもらうにはコレしか無いんです!」


「だってだって! 私みたいな本の虫でヒョロガリな女に色気なんてあるわけ無いじゃない!」


「大丈夫です! さっきからこの男の顔は緩みっぱなしですからもう一息です!」


「ギルマスの見てくれは1級品ですから頑張ってください!」


 えっとつまり、魔法を教えて欲しいがためにこんな事をしていたと?

 体力がない? ああ王都の外周を1日で走れって言ったアレの事かな。

 うん、呆れて何も言えないな!

 リアも事情を理解して呆れている。

 

 マントを破ってソファーから逃げ窓に走り、閉め切っていたカーテンを開けて光が差し込んできた。


「暗いのヤなの! 本読みにくいからヤなの! 明るい部屋で1人でじっくり読んでたいの!」


 マントが無くなったハリスさんに外の強烈な光が当たり、体のラインがくっきりと浮かび上がる。

 ヒョロガリっていうか、ファッションショーのモデルみたいな体型だ。

 需要は十二分にあると思うけどな。


「あ……!」


 俺たちの視線に気が付き、腕で胸を隠してしゃがみ込む。

 流石にやり過ぎたと思ったのか、ローブの男女がゆっくりとハリスさんに近づいてマントを体にかけた。

 

「その、すみませんハリス、私達も少し焦っていたようです」


「何としても魔法を教えてもらおうと、強引な手を使い過ぎました」


「ユグドラさんはともかく、アセリアさんに色仕掛けが通じるはずありませんしね」


 ごもっとも。

 まあ俺にもリアという嫁がいる限り通じないけどね~アハハー。


「あの皆さん、教えてと言われれば教えますけど……?」


 リアの一言に魔法ギルドの面々は目を丸くした。


「私の努力はぁ~!?」

 

 ハリスさんの空しい声が街に響いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る