第2章 第12話 王都デッカすぎ!

 王都オンディーナへ向けて出発して早々トラブルが発生した。


「あの、流石に9人分のお昼を私1人で用意するのは無理」


 なんとリア以外は誰も料理が出来なかったのだ!

 もちろんお手伝いはするが、リアの負担が大きすぎる。

 9人が馬車の外に用意された材料を見て、手を出せずに途方に暮れていた。


「仕方がない、チョット待ってて」


 俺は馬車の中に戻った。


 キャラクターチェンジ

  ユグドラ

  ルリ子

  しずか

  番長

  ディータ

 ⇒メイア

 ◆ユグドラ ⇒ メイア◆


 体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。

 目つきが悪く、薄手の革鎧を身にまとい、頭をバンダナで覆っている大女。

 それが暗殺者である私、メイアだ。


 馬車から降りるとアズベルが大声を上げた。


「だっ、誰だお前!?」


「安心しろ、私だ」


「だから誰なんだよ!」


「メイアさん! お久しぶりです。あの、ユーさんが待ってろって言ってましたが……?」


 リア以外は驚いているようだ。

 ああ、そういえば私はリア以外には会った事が無いな。


「安心しろ、私は料理人だ。リア、手早く作るから手伝ってくれ」


「はい!」


 オンディーナまでは馬車で3日、材料は多めに持ってきているが、万が一に備えて多少の節約料理にしよう。


 しずかの作った馬車の外部右側には、簡易キッチンが収納されている。

 側面下側のフタをめくり、長さ1メートル50センチ、幅50センチほどの金属の板を取り出して足を延ばす。

 簡易釜土かまどが2つ付いており、まな板や流しも付いている。


「よし、始めよう」




 「うめぇ! なんだこの肉の味! 初めて食ったぞ!」


 「野菜に味が染みわたってるわ!」


 他の連中はわき目もふらず食べている。

 うむ、料理は相手を暗殺する際、食事に毒を盛っても気付かれにくいから上げたスキルだが……言わない方が良いだろうな。


 片づけは全員で行い、作る時に比べてかなり早く終わった。

 片づけが終わった際『夜も期待してるぜ!』と言われたが、夜も私が作るのか?


 その後はユグドラに戻る事無く、リアに魔法を教える際はルリ子に替わり、馬車の改善点が見つかればしずかに替わり、戦闘時はアズベル達に任せきりだった。

 

 私はすっかり専属料理人となってしまったようだ。

 料理は……暗殺のために……。




 そろそろ王都オンディーナが見えてくるはずだ。

 メイアは暗殺者という特性上、あまり人目については都合が悪いな。


 キャラクターチェンジ

 ⇒ユグドラ

  ルリ子

  しずか

  番長

  ディータ

  メイア

 ◆メイア ⇒ ユグドラ◆


 体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。

 ふぅ、久しぶりに外に出た気がする。


「あみんな、メイアの事は他言無用で頼むよ」


「あんなに美味い料理を作るのに黙ってろってーんか?」


「ウチの専属料理人はスゲーって自慢させろってば!」


 小型盾のアルファと大型盾のフレディが不満を漏らす。


「専属料理人じゃねーからだよ! 暗殺者だって言ってるだろ! 暗殺者が表立って動いてどうするんだ!」


 えぇ~、と不満の声がでる。

 こいつ等……。


「街にいる間は我慢しろ。馬車での移動中なら作ってやるから」


 歓声に代わった。なんて現金な奴ら!




 王都オンディーナが見えてきた。

 おーでっかいな~、こりゃ首都にふさわしい大きさだ。

 城壁もとんでもない高さだな。


 と、言ってからすでに数時間が過ぎ、いまだにオンディーナには到着していない。


「なんで? 近くに見えるのに遠いの?」


「オンディーナは超巨大都市だからな。本当に近くになったら腰抜かすぞ」


「そんなに大きいの?」


「城壁だけでも他の街の3倍以上の高さがある」


「マジで!?」


「マジだ」


 アズベルの衝撃発言により、俺はドキワクが止まらなくなった。




「本当だ……城壁の上が見えないや……」


 入門手続きをしながら城壁を見上げるが、頂上が見えない。

 首痛い。


 手続きが終わり門をくぐると、人、人、人、人ごみにあふれていた。

 これだけ人が居て露店も沢山あるのにゴミが落ちてないし、石畳も整備されている。手入れが行き届いてる!

 建物の素材はまばらだが、概ね2階~3階以上の高さがあり、くたびれた建物は見当たらない。

 そして中心には巨大な城が見える。


「ど、どこだココ」


「オンディーナだよ?」


 俺、人ごみを見ると手りゅう弾を投げ込みたくなる症候群に襲われるんだゼ。

 手りゅう弾無いけど。


 それにしても今までの街とは規模が違いすぎる。

 エリクセンやバールドが小さな村に見えてしまう。


「冒険者ギルドはこっちだ。1度顔を出しとくぞ」


 御者をしているアズベルが馬車を進めた。

 お、おうよ、ギルドだろ? 分かってるよ? うんうん。


 ギルド前に到着した。

 うん、やっぱりデッカイな!

 王都は全部がでっかいな!


 ギルド横の馬車置き場に馬車を預け、建物に入る。

 建物の構造自体は他の街と似ている。しかし全てが違う!

 冒険者の数、受付の数、イスやテーブルの数、掲示板の依頼の数!


 ビクビクしながらみんなに付いて行くと、1つの受付の前に着いた。

 ……!?


「あぁ~ら、こちらがユグドラちゃん? はじめましって、ワタシは王都の受付グレゴリィよん」


  筋骨隆々きんこつりゅうりゅうのたくましい肢体、角刈りでカラフルに染められた髪、そしてメイアくらいはありそうな身長!

 なにより化粧された顔とキツイ色の口紅、のどぼとけ……。

 王都オンディーナの受付嬢(?)はオネェだった。

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