第52話 4つの魔法陣から召喚されしもの

 まだまだ沢山いるからチャチャッと終わらせちゃお!

 コイツらは動きは遅いけど剣の振りだけはチョット早い。けど懐に入ればどうって事ないね。

 だから頭の無い奴のピーを握ってマジックアローを使った。


「って本当に動かなくなった!? チョw 冗談で〇ンタマって言ったのに、本当に動かなくなるとか」


 本当は腰あたりかな~って思ってたのに、本当にタマタマだった!


「え? それってつまり、16歳の乙女に金的攻撃しまくれと?」


 騎士を見る。

 私の右手を見る。

 騎士を見る。

 私の右手を見る。


「うえぇ、ばっち。造り物でもやっぱヤダ。普通にやろ」


 少し距離をとって魔法を使う準備をした。


召喚サモン土の精霊アースエレメンタル


 詠唱完了と共に地面に魔法陣が現れ、中心から土の精霊・ゴーレムが這い上がってくる。

 ゴーレムの大きさは騎士と同じか少し大きいくらい。全身が岩でできていて、短足だけど腕が長くて太っとい。


「さあゴーレムちゃん! そこの卑猥な騎士をやっつけちゃって!」


 私の命令に無言で動き出し、動きのおそい騎士を動きのおそいゴーレムが蹂躙を始めた。

 騎士の持ってる剣は普通の剣らしく、ゴーレムの体には歯が立たない。

 だからゴーレムは力任せに騎士を潰してる。


 ちゃんと金……股間まで打ち砕いてるし、ゴーレムの進んだ後には砕けた石が散乱しているだけだ。

 う~ん、今は金属っぽいけど元々は石だよね騎士って。

 石対石か……怪獣大戦争のワンシーンみたい。


 ゴーレムはかなり強くて騎士をあっさり倒し終わった。

 床には割れた石が散乱してる。

 う~ん、コアはタダの魔力のこもった石、他に使えそうな物は……何にもない。


「骨折り損のくたびれ儲けだ!」


 ま、罠を発動させて楽しめたからいっか。


 


 その後はたいして面白い事が無かった。

 多分だけど、最近までは何かが在ったらしい形跡があって、今は全部取り払われてる。

 なんで? 侵入者なんか来ないだろうから外したの? 外には沢山の兵士や冒険者が居るのに?

 

 それとも他の理由? 最近はモンスターの数や格が上がってるって言うから、その影響?

 だとしたら人為的、なのかなぁ。

 お楽しみのハズの遺跡調査だけど、これだけ何にもないと詰まらない。

 

 尖塔せんとうがある場所の下を調べたけど塔に上がる階段も無いし、4階建ての最上階の調査も終わったし、最初は行けなかった1階の調査もした。

 ここまで調べて何もないなんて不自然すぎ!


「なんなんですかねー、このあからさまに“壊しちゃっていいよ”的な雰囲気は」


 本当に壊しちゃおっかな。

 いやマテマテ私、本当に壊すつもりなんじゃないのココ。

 だってあからさまに何もなさすぎる。


 罠の発動に必要な魔力も無く、置いてあったはずの荷物も無く、扉は開けっ放し、モンスターすらいない……本当に……壊すつもりなの?


 だとしたらまだ調べてない場所があるハズ。

 地上は調べたけど、地下があるのかな。

 なんだろう、すっごく、すんごく嫌な感じがする。


 私は地下への通路を探して走り回った。

 4階、何もない。3階、何もない。2階、何もない。

 1階、何もないジャン! こんニャロ。


「どうする? どうすんの私! なんかヤヴァイよコレ! ドキドキが止まらないね!」


 しょうがない、邪道だけどテレポろう。

 でもその前に、やっぱり気になってる場所を調べよっと。


「あれだけ尖塔があって、何もないってなくない?」


 まずは屋上にテレポートした。

 空を見上げて、突き出している4つの塔を見上げる。


「結構高いけど、テレポいけるかな」


 移動魔法の瞬間移動テレポートは移動距離が短い。たぶん100~200メートルくらい。

 高く伸びた尖塔の高さは分からないけど、とりま渡り廊下の上まで行こう。


瞬間移動テレポート


 フッと尖塔同士をつなぐ廊下の屋根に乗った。ダイジョブだった。

 尖塔には窓が無いから次は屋根にテレポった。

 うーん、屋根から中に入れそうな入り口はないな~、よし、屋根の石を引っぺがしちゃおう。


 尖塔のブロックは普通のレンガサイズだ。だからレンガに向けてマジックアローを射出したら簡単に壊れた。

 レンガをどかして顔を突っ込むと、中は小さな部屋になってた。

 ん~~? 暗いけど、床に何か書いてある。

 

 中に入って書いてある物をよく見ると、魔法陣だった。

 これは何の魔法陣でしょうーか!


「えーっと? 必要とする 大きな体 約束を 盟約を 呼ぶ? ん~、なんか召喚の魔法陣っぽいけど、なんだか不十分。これだけじゃ発動しないんじゃね?」


 ルーン文字を解読したけど、単体じゃ動かないねコレ。

 ということは、他の3つの塔にも魔法陣があるのかな?


「じゃあレッツら見てこよう!」




「ヤバイよヤバイよ! マジでヤバイよ!!」


 4つの塔の魔法陣を見て確信した。

 この遺跡は巨大な魔法陣だ。

 しかも魔法陣にはもう魔力満タンでいつ発動してもおかしくないって!


「なんでぇ!? なんでこうなるの~~!?」


 私は急いで地上に降りて大声で叫んだ。


「みんな逃げて! もうすぐモンスターの大群が召喚されるよ!!」


 でもみんなは私の声に耳を貸さない。

 それどころか迷子かと逆に心配された。


「だから! マジでヤバいんだってば! 尖塔の魔法陣が今すぐにでも発動しちゃうの!」


 尖塔を指差すけど、誰も本気にしてくれない。

 あーーんもう! どうしよう、こうなったら目の前でユグドラにチェンジして……!!


 遺跡全体が光った。

 4つの尖塔から巨大な魔法陣が形成されて、塔を伝って遺跡の屋根までいくつもの魔法陣が重ねられた。

 あ、これは大量のモンスターだけじゃない、超大型が来るヤツだ。


 遺跡が眩しいくらいの光を放ち、大量のモンスターがあふれ出した。

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