第48話 移動魔法は首に注意

「受けるってオイ! 俺の話しを聞いてたのかよ!」


「大丈夫だよ。リッチロードの大群とか素晴らしきパラゴンリッチロードじゃない限り問題ない」


「リッチロード? パラゴンリッチロード? なんだそれ」


「ユグドラ様。リッチロードというのは死界しかいの王の事でしょうか」


「死界って知らないけど、あれはリビングデッドとは違って正真正銘のアンデッドだから。ある意味悪魔やドラゴンよりたちが悪い」


 あれ、みんな黙り込んで俺の方を見てる。

 アズベルがソファーに座り、置いてあって紅茶を一口飲む。


「ふー、つまりお前はリッチを倒せるんだな? その~リッチロード? パラゴンリッチロード? も?」


「そだね、パラゴンは流石に手こずったけど、リッチロードなら3体までなら問題ないかな」


「あ~ヘスティア、リッチロードってどんな奴なんだ?」


わたくしの知っている範囲ですと、リッチロードはリッチや複数のリビングデッドの上に君臨し、死の世界を支配する者、です」


「でユグドラ、パラゴンリッチロードってのはもっと強いのか?」


「リッチロード10体分くらい?」


「分かった。お前にはもう何も言わん! さっさと行ってこい!」


「なんでそんなに投げヤリなんだよ!」


「お前を心配した俺がバカだったよ!」


「その言い草酷くない!?」


 アズベルは横暴だ! 我々は断固抗議するぞ!

 我々=俺1人だけど。


「どうやらこれ以上は遺跡の情報が無い様だから、アセリアの護衛の話しをしよう」


 なんだろう、凄くぞんざいに扱われた気がする。




 リアはギルドの3階にある客室で寝泊まりするようだ。家具は1式揃っているから不自由はないだろうけど、必要な物があれば揃えてくれるらしい。

 その両隣の部屋も客室で、そこにはアズベルパーティーの男性陣と女性陣が分かれて泊まる。


 遺跡の調査期間は未定だが、可能ならば完全に調査完了、無理ならば可能な範囲で、という事になった。

 だからリアの護衛も俺次第で長くも短くもなる。


 しかし懸念けねん事項はある。

 1つは遺跡までの距離。馬で走って4日もかかる距離にあるため、一度行くと簡単には戻ってこれず、街に戻ると往復で8日も無駄になる。


 一刻も早く調査を終わらせたいのに、そんなに遠いのは困るな。


 仕方がない。


「この部屋ってよく使うんですか?」


「応接室ですか? そうですね、日に何回か使用します」


「じゃあ使ってない部屋ってありますか?」


「使っていない部屋はございませんが、倉庫ならば人の出入りが少ないです」


 倉庫か……まあこの際贅沢は言えないな。


「じゃあそこに移動魔法のマークをしますから、案内してもらえますか?」


 全員の頭にハテナマークが乱立している。

 いや、ロリ魔法使いのエバンスだけが驚いている。


「おいユグドラ、マークってまさかマークなのか!」


 口数が少ないと思ってたけど、ついに言葉が不自由になったのかな?


「マークなんだからマークだろ」


 ツカツカと早歩きで移動して、ソファーに座っている俺の背後に立った。

 そして


「教えろユグドラ!」


 俺は両手で首を絞められながら前後左右に振り回されている!

 こここ、殺される!?


「教えるというまで手を離さない!」


「ゴグ! ゲグゥ! ガゴアァア!」


「教えろー!」


「ガグゴ! ガガ ガ    がぁ」


「うお!? エバンスやり過ぎだ! おいしっかりしろ! ユグドラ! オーイ!」


 しいん、ちっそくし


「生きてるわい! 殺すな!」


「なら教えろ!」


 流石にまた首を掴まれるのはご免だ。サッとエバンスの手から逃れた。

 と同時に頭が引っ張られる! 次はなに!?


「あうあ! ウー! フーッ!」

 

 リアに頭を抱きかかえられていた。

 あ、これはリア怒ってる。結構怒ってる。


「ご、ごめん、なさい」


「アセリアすまねぇ、エバンスのヤツ興奮しちまったようだ」


「うう!」


 なにやらアズベルとエバンスがリアに怒られている。

 リアの胸や~らかい……ここが天国なんや~。


 と、残念ながらリアに体を起こされて、元の配置に戻ってしまった。

 でも顔が真っ赤で照れるリア可愛いからOK!


「えーっと、魔法を教えるかどうかは後で考えるとして、倉庫の場所を教えてください」


「かしこまりました。それではご案内……あら?」


 ヘスティアさんが立ち上がろうとして中腰で止まった。

 理由はリアが一緒に立ち上がったからだ。


 倉庫に案内されるはずが、気が付けばリアが寝泊まりする客室に入り、部屋の中央でマークする事になった。

 うむ、理由は分からないが、どうもリアはマークの意味をおぼろげながら理解しているようだ。


「リア、移動魔法を使うと前触れもなくいきなり俺が現れるけど、大丈夫?」


「ん」


 首を縦に振って満足そうな顔をしている。

 移動魔法って言ったのに、特に驚いた様子が無い。

 一緒に付いてきたエバンスなんて、また俺の首を絞める準備をしているというのに。


 リアが良いって言うんならいいか、じゃマークしとこう。

 バッグからルーンストーンを取り出す。


マーク


 5センチ程度の黒い楕円形の石に、アルファベットのMに似た文字だが、真ん中のへこみが凄く浅い文字が刻まれた。


「よし、これでいつでもココに戻ってこれるようになった」

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