第47話 スタージェント遺跡
ハッ! いかんいかん、俺にはリアという嫁がいるんだぞ。
小さく咳払いをして誤魔化し、何とか普通の笑顔を作って挨拶をした。
「よろしくお願いしますヘスティアさん。とは言っても明日には王都へ向かうので、こちらでは仕事をしない予定です」
「そうなのですか? 残念です、ユグドラ様がこちらへ向かっておられると聞いて、ぜひお願いしたい依頼があったのですが……」
う、そう言われても王都へは一刻も早く行きたいし、俺が依頼を受けている間、リアが一人ぼっちになってしまうし。
ああっ! ヘスティアさん、なんでそんなに切ない顔してるんですか!?
切ないのはこっちですよ! もう!
受付で必死にヘスティアさんの誘惑に負けまいと抵抗をしていると、リアが袖を引っ張った。
「うー、あうん」
そう言って首を縦に振る。
「え、受けていいの? でもリアが一人ぼっちになっちゃうし、また誰かに狙われるかもしれないんだよ?」
流石に狙われている事を思い出したのか、少し悩み始めた。
「確かアセリア様でしたわね、狙われているというのはどういう事でしょうか」
「あー、それについては俺が説明しよう」
アズベルがヘスティアさんに説明を開始した。
道中で不審な集団に襲われ、狙いは俺だがリアはエサに使えるとして誘拐された事。
護衛依頼の内容と一緒に説明をしてくれた。
「そのような事が……確かにそれでは不安で依頼どころではありませんね。残念ですが今回は諦めます。ですが機会があればぜひお願いいたします」
「それにしてもユグドラを指名するとは、かなり危ない仕事なのか?」
「はい。バールドの近くにスタージェント遺跡があるのはご存知でしょうか」
「ああ、かなり大規模な調査隊を向かわせているが、イマイチ調査が進まないっていうアレか?」
「そのスタージェント遺跡で不穏な動きがあるようなのです。モンスターの出現が
「マジかよ。それは確かにユグドラ案件だな」
あの、なんだか断りにくい空気になってるんですけど!?
そして意を決したようにヘスティアさんが口を開いた。
「アズベル様、アズベル様はこの後のご予定は決まっておいででしょうか」
「俺か? 俺はこの街で適当に依頼をしてからエルドランに帰るつもりだ」
「
え? ちょい待ち、ギルドが直接依頼を出す事が出来るの?
てか、え? 断れないパターン? 俺は王都へ……。
アズベルが俺を見る。俺は首を横に振る。
アズベルがリアを見る。リアは首を縦に振る。
「受けよう。日程などの細かい内容はどうする?」
「ありがとうございます。それでは今から内容を詰めましょう、2階へおいで下さい」
本当に丁寧にアズベルに頭を下げ、ヘスティアさんは笑顔でアズベルパーティーと俺、リアを2階へと案内した。
あの、僕の意見は?
2階へ上がって応接室に入る。
エリクセンでも応接室に入った事あるけど、作りは全く一緒だな。ギルドの建物自体もみんな同じだし。
中央に低いテーブルがあって、その周りにソファーが置いてある。
俺とリアはヘスティアさんに
他のメンバーはソファーの後ろで立っている。
ヘスティアさんは1人掛けのソファーに座って話しを始めた。
「まずはユグドラ様、強引な手段を取ってしまった事をお詫びいたします。それだけ切羽詰まった状態である、と理解していただければ
「いいですよ別に。リアが受けていいって言うんだから受けます。だから頭を上げてください」
「ありがとうございます。では早速遺跡についてですが、ユグドラ様はスタージェント遺跡についてどの程度ご存知でしょうか?」
「すみません、初めて聞きました」
「では簡単に遺跡の説明をいたします」
スタージェント遺跡は数百年前に発見されて以来、
モンスターが大量に出てきたりモンスターの能力が高くなるなど、その都度討伐隊を結成して対応しているが、遺跡の調査自体は全く進んでいないらしい。
それというのも遺跡の外見は4~5階建ての石造りで、
もちろん外壁をよじ登って侵入を試みたが入り口らしき物は無く、遺跡の周囲を調査するも手掛かりがない、簡単に言うと何も分かっていない状態だ。
正直俺が行っても何もできない。
遺跡調査か、アイツの出番だな。
「他に調査で分かった事はありますか?」
「出てくるモンスターはリビングデッドが多く、未確認ではありますがリッチが存在すると言われています」
「ちょっと待て! オイ! リッチなんて聞いてないぞ! リッチ1体で国を亡ぼせるといわれてるのに、ユグドラ1人で向かわせるのかよ! それなら反対だ!」
アズベルが拳でテーブルを叩き声を荒げた。
他のメンバーも同様で、そんな所に行かせるなら反対だ、と言っている。
そうだよな、リッチだもんな……そんな恐ろしい奴がいるなんて。
「大丈夫ですよ、行きます」
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