第20話 見つけた、見つけたよ!

 この怪力で不用意に人に触ると危険なので、しばらくは距離を置いていよう。

 とはいっても、今までも他人にさわる事なんて無かったし、力加減が出来るようになるまで問題ないだろう。


「はぁいハニー、今度は私と見張りだね。いーっぱい、お話ししよっ」


 早速腕に抱き付いてきたエリーナさん。俺の決意はどこへやら。

 まあ俺が力を入れなければ問題ないし……!?


「な、なんで鎧を着てないんですか!?」


「えー? だってハニーと私の間には何もいらないでしょ」


 そう言って胸を押し付けてくる。薄着だ! しかも胸元が大胆にカットされてる!

 いやまてまて、俺は金属の鎧を着てるんだから、感触なんて無いだから気にするな……あっ!?


「エリーナさん!? なんで俺の鎧を脱がそうとしてるんですか!」


「だって邪魔だし」


「邪魔だし、じゃないですよ! 見張りしてるんですからね!」


「ぶー、ハニーのいけず」


「あと、ハニーってなんですか?」

 

「私決めたの! ハニーと結婚するって!」


「ええぇ!? なんでいきなり! てかハニーの答えになってませんよ!」


「結婚するんだからハニーでしょ?」


「なんでいきなり婚約者になってるんですか」


「エリクセンに着いたらその足で王都に行って、王都の大聖堂で式を挙げるの!」


「おいお前ら五月蠅うるさいぞ、静かにしろ」


 仮眠しているはずのアズベルさんに怒られた。みんな寝てるのに大声出しちゃったな。


「すみません」


「はーい」


 エリーナさんも静かになった。ふぅ、助かった。

 でも腕に胸を押し付けるのはめてくれず、さらに耳の側でささやくため余計に困ってしまった。

 はやく、早く交代時間になってくれーー!!


 ようやく俺の交代時間になり、一緒についてこようとするエリーナさんは、交代する冒険者に首根っこ掴まれて連れられて行った。


 ああ、やっと気が休まる。

 他の人が起きない様に静かに馬車に乗り、空いている場所で横になった。


「お疲れ様です。大変でしたね」


 隣で寝ている人がこちらを向いて話しかけて来た。

 暗くて顔は見えないが、可愛らしいけど落ち着いていて、安心できる声だ。


「ええ、流石に疲れました。といっても気疲れですけどね」


「ふふっ、ゆっくり休んでください」


「はい、おやすみなさい」


「おやすみなさい」


 心地いい声と会話で、俺はすぐに眠りについた。




「おはようございます。朝ですよ、起きてください」


「ん……あと5分……」


 眠いんだよ……もう少し寝かせて……。


「ごふ? そろそろ食事の用意ができますから、起きてくださいユグドラさん」


「ご、は、ん?」


「はい、温かいうちに食べた方が美味しいですよ」


 そういえば昨日の夜は、量の少ない携帯食料だったから腹が減ってる。

 むう、意識したらさらに減ってきた。


 薄目を開ける。

 太陽の光が目に刺さる、眩しい。

 だれか、いるな。誰だ? ああ、俺を起こそうとしてる人か。


 馬車後方のほろは全開にされていて、太陽が馬車の中を照らしている。

 俺はその人のかげに居るせいか、目が慣れるまで時間は掛らなかった。


 影になっていた姿がゆっくりと見え始める。女性だ。

 髪は肩より少し長く、真ん中あたりから軽くウェーブがかっている濃い目のブラウン。目は大きく瞳は瑠璃色。

 うすいピンクの長そでの上着で、中には緑色のワンピースを着ている。フリルが付いているが小さく、控えめな可愛さを出している。腰にはゆるめにベルトがしてあり、右肩から左腰にバッグを斜め掛けしていて、胸のあたりの服のヘコミ具合から想像するに、かなりの巨乳だ。


 歳は20には行っていないだろうか。


「お、おはようございます。ど、どうされたんですか?」


「え? あ! お、おはようございます! 私はユグドラと申す者でございます!」


 慌てて起きて、正座して挨拶をした。

 ちょっとまて、なんだ、なんだこの子!? 超カワイイ!

 ドストライクだ!!


「お、おはようございます、私はアセリアと申します。よろしくお願いしますです!」


 その女性、アセリアさんも正座して挨拶をしてきた。釣られて俺も頭を下げた。

 2人して同じ事をしたから、顔を見合わせて笑ってしまった。

 見つけた、見つけたよ俺のヒロイン!!


「おーい、飯の用意ができたぞー」


 馬車の外から食事に呼ぶ声がした。

 このまま2人で居られるわけじゃないからな、食事にしよう。


「それでは食事に行きましょうか」


「ええ、行きましょう」

 

 馬車から降りるとすでに沢山の人が食事をしていた。

 テーブルは無く小さなイスが置いてあり、好きな場所で食べるようだ。

 俺とアセリアさんは食事を受け取り、乗っていた馬車の近くで一緒に食べる事にした。

 アセリアさんは小柄で、多分150センチあるか無いかだ。

 ん~カワイイ!


 ちなみに朝食はシチューとパンだ。


「あ、アセリアさんはご旅行で「おっはようハニー!」うわっ!」


 エリーナさんが後ろから抱き付いてきた。

 むむ、せっかくアセリアさんとお話ししようとしてたのに。


「おはようございますエリーナさん。どうしたんですか? 食事なら向こうでもらってください」


「ご飯はもう食べたよ。それよりも、冒険者は朝は打ち合わせをするからこっち」


「え? そうなんですか?」


「うん! だからこっちこっち」


「ああ、アセリアさん、またのちほど!」


「はい、また」


 手を振ってお別れをした。

 くそう、打ち合わせなら仕方がない、早めに終わらせてもらおう。

 あとエリーナさん、シチューがこぼれるからグイグイ引っ張らないで欲しい。

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