第11.5話 別室3

「なに? もう一人現れただと?」


 薄暗い部屋の中で、髪の長い男が黒ずくめの男から報告を受けた。


「はっ、高度な魔法を使い、巨大なドラゴンを行使する女です」


「高度な魔法に巨大なドラゴンか。まるで古文書の一節ではないか」


 髪の長い男が窓際に立ち、腰から下げている剣のを触る。


「我々自ら出向かねばならぬか。いや私1人でも」


「お一人では危険です。お耳に入っていると思いますが、アグレスの防壁を容赦なく破壊する女です」


「はっはっは、あの御方おかた先見せんけんめいには恐れ入る。こうなる事が分かっていたかのように、我々に準備をさせていたのだからな」


 髪の長い男の口ぶりは、まるで高度な魔法や巨大なドラゴンに対抗する手段があるように聞こえる。


「それで、あの男はどうなった。ピエロのような男だ」


「申し訳ありません。見失いました」


「なに? お前たち数人で見ていたのだろう?」


「はい、ですがリビングデッドを仕向けた際に単身で群れへ突っ込んでいったので、場合によっては死亡している可能性もあります」


「そうか。斧なんて使っている時点で実力は知れている。もうしばらく男を探せ、見つからなければ女へ移行しろ」


「はっ!」


 黒ずくめの男が闇に溶けるように姿を消した。


「高度な魔法と巨大なドラゴンを行使する女か。場合によってはアレの使用許可を取らねばならんな」

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