第10話 6人6色

 飛龍で近くの山まで飛び、人気のない木が生い茂る場所に入った。

 ゲートで飛龍を戻し、代わりにナイトメアを呼び出す。

 ナイトメアは漆黒の馬で、馬を一回り大きくしたモンスターだ。


「まずはバッグの整理だね。ある程度はキャラクターごとに分かれちゃいるが、あまりにもバラバラ過ぎてどこに何があるのかわかりゃしない」


 メニュー画面のバッグ内は、ゲーム時代の6キャラクターが使っていたアイテムが、そのままの状態で放り込まれている。小袋や収納箱、色んなものがそのまま入っているから、似たような箱も沢山あって混乱する。


「とはいえ、街には大した入れ物が売っていなかったからねぇ、これは自分で作った方がいいだろう」


 もっと大きい街に行けば有るだろうが、今まで行った2つの街にはロクな物が売っていない。

 魔法使いも見なかったからねぇ、魔法ギルドなんてあるのか? この世界には。


 それにしても身分証明書代わりのギルドカードをどうしようかねぇ。

 6人全員分揃えるか? いや、この先なにが起こるかわからない。奥の手として隠しておいた方がいいだろう。

 じゃあ誰にするか。ユグドラとアタシはもう持ってるし、しずか、番長、ディータ、メイアの4人のうち誰を表に出すか。


 メイアは暗殺キャラだから出さない方が良い、ディータはトレジャーハンターだし、番長はバトルマニア、しずかは生産系だ。

 しずかは出していいだろう。ディータと番長は表に出さなくても困る事は無いな。必要な時に使えばいいだろう。


 よし、ユグドラに交代して街に戻り、宿かどこかでしずかに入れ替わって登録しよう。

 たしか鍛冶ギルドや大工ギルドがあったはずだ、そっちで登録すればいいさ。


「よし、戻るとするか。キャラクターチェンジ」


キャラクターチェンジ

 ⇒ユグドラ

  ルリ子

  しずか

  番長

  ディータ

  メイア

 ◆ルリ子⇒ユグドラ◆

 体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。


「ふぅ、やっぱり役になり切るのロールプレイングは面白いな。ゲーム時代もなり切ってたから、この世界でも普通になり切ってた」


 少々やり過ぎた感が無くも無いが、まあ人は死んで無いはずだから良いだろ。

 対人戦PVPはお互い合意のもとでやらないとね! ……さっきのは合意があったよな? てか向こうから仕掛けてきたんだし、殺されても文句はないよね?

 

 まあ今は色々考えても仕方がない。まずは街へ戻って準備を開始しよう。




 アグレスの街に戻ってきた。

 あ~、門どころか広範囲の防壁が無くなってる。自分がやった事とはいえ、今モンスターの襲撃があったらひとたまりもないな。


 防壁や門の修理に沢山の人が動いてる。

 街の出入りも強化されていて、中に入るのに時間がかかった。まあしょうがないな。

 

 手ごろな宿屋で部屋をとり、雨戸を閉めて部屋の中を見えなくする。

 

キャラクターチェンジ

  ユグドラ

  ルリ子

 ⇒しずか

  番長

  ディータ

  メイア

 ◆ユグドラ⇒しずか◆

 体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。

 

「ふぅ、薄暗い部屋ですね。いくら見られたくないからって、こんな状態で交代しないといけないなんて不便すぎます」


 しずかに交代しました。革製のエプロンと革の大きな手袋、ショートパンツを履いていますが、エプロンの方が大きいため何も履いてないように見えます。一応白い長そでが見えますが、まるで痴女に見えてしまいます。


「今は鍛冶仕事はしませんから、エプロンと手袋は外しましょう」


 黒いショートパンツと黒いストッキング、白い長そでシャツに茶色のチョッキ。前髪は切りそろえられ、首の後ろで髪を雑にまとめています。

 さっきとは打って変わって地味ですね。

 生産命だから良いのです。


「さて、まずはキャラごとにバッグを作りましょう。6人分と、共用バッグは2つあればいいでしょうか」


 メニュー画面から裁縫さいほうの製作画面を出し、材料と道具を確認します。全部ありますね。

 パパっと大きめのバッグを8つ作り、キャラごとに色を変えて名前を付けます。


「後はそれぞれのキャラが片づけないと分かりませんね。私の分は終わりましたから、交代しましょう。ユグドラにキャラクターチェンジ」


キャラクターチェンジ

 ⇒ユグドラ

 ◆しずか⇒ユグドラ◆

 体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。


「えーっと、これとこれと……よし終わり! ルリ子にチェンジ!」


キャラクターチェンジ

 ⇒ルリ子

 ◆ユグドラ⇒ルリ子◆

 体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。


「面倒くさいねぇまったく。こんなものか? 番長にチェンジだ」


キャラクターチェンジ

 ⇒番長

 ◆ルリ子⇒番長◆

 体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。


「わ、ワシは片づけは苦手なんじゃ~、誰かやってくれてもいいじゃろうに。……こんなもんかのう。ディータに交代じゃ!」


キャラクターチェンジ

 ⇒ディータ

 ◆番長⇒ディータ◆

 体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。


「おっかたーづけぇ~、おっかたーづけぇ~。完了! さぁさぁ、次行ってみよ~。メイアにチェンジ!」


キャラクターチェンジ

 ⇒メイア

 ◆ディータ⇒メイア◆

 体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。


「みんな片付けが下手だな。私の荷物は少ないが、もう少し整理整頓したらどうだ。ルリ子とディータは適当に放り込んだだけじゃないか。まぁ私が使う訳ではないからな。しずかに交代だ」


キャラクターチェンジ

 ⇒しずか

 ◆メイア⇒しずか◆

 体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。


 ではギルドに登録に行きましょう。といっても、私は生産系なので、冒険者ギルドではなく生産系のギルドです。鍛冶とか大工、裁縫などですね。

 宿を出て鍛冶ギルドを目指します。




「え? 商工会しょうこうかいですか?」


「ああそうだ。商売をするには、まず商工会に登録して、それからそれぞれのギルドに登録するんだ。それでやっと商売ができる」


「わかりました、ありがとうございます」


 思ったよりもしっかりシステム化されているようです。まずは商工会へ登録に行きましょう。


「え? 登録できない?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る