第9話 金出しな
ゲートは大きさ関係なく移動できる魔法だ。だから全高40メートル、全身が赤く硬い
「ほら、お前たちの大好きな大きな鳥だよ。思う存分遊んでもらいな」
なんだい、鳥が好きなんだろう? 来ないならこっちから行くよ。
「アタシ達が通りやすいようにしな」
ドラゴンに指示すると巨大な翼を広げ、数回羽ばたいて門の上空へ飛び、翼を止めた。
その巨体で門を押しつぶし、長い首と尻尾で周囲の防壁を破壊する。
「いいじゃないか、随分と広くなったねぇ。これならドラちゃんを3匹呼んでも問題ないね。ほらお前たち行くよ」
門があった場所を通過すると、ドラちゃんがお行儀よく座って待ってた。
「いい子だ、ほら」
左手を上に伸ばすと、頭を下ろして手にこすりつけてくる。カワイイやつだねぇ本当に。
バッグからスイカサイズの果物を取り出して口の中に放り投げてやると、美味そうに食っている。
ドラちゃんには一口サイズよりも小さいがね。
ふと、アタシは思い出した。
「おい肉、サイン」
街の中に入ったんだから任務完了だよな?
肉は涙を流して喜んでサインした。
やっぱり人は素直が一番だねぇ。
「そういえば何だったかねぇ、そうそう、ギルドに行くんだったな」
ドラちゃんと一緒に行こうとしたが、チッ、なんて狭い道だろうねぇ、ドラちゃんの
仕方が無いからドラちゃんをゲートで戻し、飛龍とギルドを目指した。
えーっと確かこの辺りのハズだが……あったあった。
飛龍から飛び降り、扉を開けると沢山の冒険者が待ち構えていた。
ん~? ユグドラの時とは比べ物にならない多さだねぇ。何かあったのかねぇ。
お、いたいた。メガネの受付だ。
「金出しな」
カウンターに左ひじをついてメガネっ子に金を払うようにいうと、見てわかるレベルで目が泳いでいた。
「ぼ、ぼぼぼ冒険者ギルドへ強盗に入るとはいいいいいいいい度胸です! ここには沢山の腕の立つ沢山の冒険者が沢山いるんですよ!」
「あ~ん? 強盗が居るのかい? なら強盗に払う前に、アタシに任務達成の報酬を払いな」
「え? 達成……報酬ですか?」
「護衛の依頼が終わったから、とっとと金払えってんだよ」
紙ぺらを見せると、不思議そうな気の抜けたような顔をしている。
なんだい、頭の良さそうな子だと思ったけど、思ったより抜けてるのかねぇ。
「あ、あれ? サインもあるし、間違いなくギルドからの依頼書です……?」
「首をひねってる暇があったら金出せってんだよ」
「は、はい! 申し訳ありません! ではギルドカードの提示をお願いします」
「ああそうそう、カードが無いから作っておくれ」
「え? カードが無いと、依頼書があってもお支払いはできま……!?」
渡した依頼書を見て驚いてる。なんだろうねぇ、ああ、ユグドラが受けた依頼だから、アタシのじゃないとかいうのかねぇ。
「それではカードをお作りいたします。こちらの紙にご記入と、この水晶に手をかざしてください」
「はいよ」
紙を渡されたが、立ったまま書くのは疲れるねぇ。お、なんだちゃんと待合スペースがあるじゃないか、あそこで書こう。
紙とペンを持って木製のイスに座り、丸いテーブルの上で書き始めた。
なになに? 名前? ルリ子っと。クラス? なんだいそれは。
「おい、クラスってのはなんだい?」
「そ、そこは職種です。戦士とか魔法使いなどです」
そうかい、それじゃあ天才っと。
「あの、申し訳ありません、もう少し詳しくお願いします」
いつの間にか隣に来ていたメガネっ子が口を出してきた。
「詳しくって言われてもねぇ、なんて書けばいいんだい?」
「ルリ子さんですと、魔法使いやテイマーです」
ほぅ、どこからか情報が入っているみたいだねぇ。まあ街の入り口で少々騒いじまったからねぇ、ギルドなら情報も入ってくるだろうさ。
天才魔法使い兼ドラゴンテイマーっと。
「これでいいかい?」
「はい、ありがとうございます。それではカウンターの水晶に手をかざしてください。あれは動かせないので」
「はいよっと」
組んでいた足をほどいてカウンターの水晶に手をかざす。
ソフトボール位の大きさの水晶が薄く光を放ち、数秒で光が消えた。
「それではこちらがルリ子さんのカードになります。無くした場合は再発行できますが、その際は有料となりますのでご注意ください」
「はいよ」
運転免許証程度の大きさのカードを手渡された。
どうやれこの中にはアタシの生体情報や、ギルドでの経歴が記録されるらしい。
「それではこちらが依頼達成報酬と、ゾンビを倒した特別報酬になります」
護衛依頼の報酬は2
「これは何Gあるんだい?」
「550Gになります。リビングデッドの大量発生は、本来なら冒険者が複数のパーティーで対応すべき事案です。それをお一人で殲滅されたので少々上乗せされています」
「なら50Gは一緒にいた冒険者に渡しときな。あいつらも一応は戦ったからねぇ」
袋から50枚だして渡した。
「よろしいのですか?」
「働いたら金を受け取る。それが当り前さね」
「あ、ありがとう、ございます。みんな喜びます」
「じゃあな」
アタシはギルドを出て、飛龍にまたがり山へと飛んだ。
色々とやらなきゃいけないことが出来たねぇ。一旦考えをまとめようか。
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