第6.5話 別室2

「なに? 見習いがいきなり上級判定だと?」


「はい、指名手配されていた盗賊の頭領を倒したため、その成果により上級冒険者となりました」


「そうか、こちらの方が可能性が高いかと思ったが、向こうの可能性もあるのか」


 髪の長い男が、全身黒ずくめの人物から報告を受けている。

 例によって何故なぜか薄暗い部屋の中で、しかも音もなく黒ずくめが背後に現れた。


「こちらの人物も非常に能力の高い人物なのだがな、まさか2人同時に現れる、なんて事はないだろうな」


 腕を組み、誰でもない、自分に問いかけて考えているようだ。

 どうやら注目すべき人物が2人居るらしいが、どちらが目的の人物なのか決めあぐねている。


「それにしても手配されている盗賊の頭領を倒すとは、余程剣の腕が立つようだな」


「いえ、剣ではなく斧です」


「……剣と斧の二刀流なのか?」


「斧のみです」


「はっはっはっはっは、そんな木こりまがいの奴は知らん。お前は適当にそっちを調べていろ。私は引き続きこちらを調べている」


「はっ!」


 黒ずくめの人物の姿が闇に溶けるように消えた。


「斧だと? 斧を構えた冒険者が目の前に現れたら、笑ってしまってまともに戦えん。おおかた盗賊も戸惑ってしまったのだろう」


 薄暗い部屋の扉を開け、光が差し込む。


「何も戦闘能力だけが力ではない。こちらの方が面白そうだ」

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