第6話 依頼を報告しても飲み会までがお仕事
150G、武器屋のお釣りで考えると1Gは1万円ほど、つまり150万円だ。
会社のボーナスでもこんなにもらったこと無い!
「え? えっと、ああ、5人で山分けするんですね」
あービックリした。いきなりこんな大金を渡されたから混乱したよ。
「いや、それは君1人のモノじゃが?」
いや~あ、このお爺ちゃんは冗談が好きだな~……ん?
「私1人のモノ? あの~、なんで私1人にこんな大金を??」
「君以外の4人の報告書に書いてあったからじゃ。賞金のかかっているE・D・Dの
……ああ、確かに頭領もモヒカンも俺が倒したな。
「それじゃあE・D・Dの他のメンバーを倒しても、賞金はナシって事ですか?」
「そう言う事じゃ」
え~、え~、無理~。だって他の人も命がけで戦ったのに、俺1人が貰うなんて無理~。
なんとか優しい冒険者さんに受け取ってもらおうとしたけど、断固拒否された。
「少なくとも私とコイツはもらえない。いきなり役立たずになってしまったからね。後の2人は話し合って決めてくれ」
そ、そんなぁ。あ、嫌味な冒険者なら受け取ってくれるんじゃないか?
「ふざけるな! お前から恵んでもらうほど落ちぶれちゃいねぇ!」
ダメだった!
こんな時くらい悪者っぽく受け取ってよ。
「どうやらお前は1人で受け取る事に不満があるようだな。ほとんどお前が倒してしまったのに、何が不満なんだ?」
両手剣の人と二刀流の人が不思議がってる。この人達は沢山盗賊を倒したのに、俺が全額貰って不満は無いんだろうか。
「だ、だって、みんなで倒したのに、矢で撃たれたから弓兵が居るのが分かったし、分かったから狙われない立ち回りが出来てたし、でも盗賊は弓兵に撃たせようとして位置取りがバラバラだったし、それをうまく利用して倒してるから安心して弓兵を倒しに行けたし、弓兵が居なくなって安心して戦えたし……」
か、考えがまとまらん!
仕事以外では引き籠ってたから、会話が全然ダメなんだよな俺。
「ふむ、ではこうしてはどうじゃ? ユグドラ君が110Gを受け取り、40Gを4人で分けるのじゃ」
「まあそれなら受け取りましょう」
「本人が駄々こねてるからな、それでいい」
「え? いや、ですから……」
大剣と二刀流の冒険者が納得してしまった。
「君がそれでいいならそうしよう。お前もいいだろう?」
優しい冒険者が嫌味な冒険者の肩を叩いている。
嫌味な冒険者はケッ、とか言ってるけど、なんか受け取りそう、ってか受け取った。
「うむ、では今日はこれでしまいじゃ。細かい話しは明日受付で聞いてくれ」
ギルドを出で宿を探そうとしたら、さっきの冒険者4人に声をかけられた。
「おいおいどこ行くんだ? 今から一杯飲みに行くぞ」
「え? でも私は宿を探さないと」
「問題ねーよ。宿も一緒になってる店だ」
「お~ら行くぞ行くぞ~」
肩を組まれて連れていかれた。の、飲みニケーションは異世界にもあるのか!
てかむしろこっちの方が多い気がする。俺調べだけど。
店に入って、乾杯の後はひたすら飲まされた。飲んで飲んで食べて飲んで食べて。
4杯目くらいで酔いつぶれた。うぷ。
俺って酒は好きだけど弱いんだよね。缶ビール1本でほろ酔い、2本で視界ぐらぐら、3本で睡眠だ。
この世界の酒もアルコール度数はあまり変わらない様だけど、なんだろう、今日の酒は楽しい。
翌朝、粗末なベッドから降りて背伸びをする。
酔いつぶれた後も無理やり飲まされた割に二日酔いになっていない。
う~ん、体が頑丈になってるからかな?
結局、昨日の飲み代はおごってもらってしまった。
つか俺、鎧もローブも装備したまま寝てた。
さてと、冒険者ギルドに行って、今日も依頼を受けるとしよう。
「おはようございまーす」
ギルドに入って挨拶をする。
そしてまた変な目で見られた。
この世界には挨拶という概念が無いのだろうか。
気にせず掲示板を見に行くと、受付のカタリナさんが
そういえば昨日お爺さんから『細かい事は受付で聞け』って言われたんだった。
「おはようございます~、昨日はゆっくり休めましたか~?」
「おはようございます。二日酔いが心配でしたが、ゆっくり休めました」
「それはなによりです~、それではギルドカードを出してください~」
ギルドカード。昨日冒険者ギルドに登録した時にもらったカードだ。運転免許証くらいの大きさで、俺の生体データや個人データなどが入っているらしい。
正直日本よりも技術が進んでてビックリだ。
それにしても、ああ、カタリナさんの笑顔と喋り方に癒される~。
「はい、ではお返ししますね~」
カードを受け取る。何をしたんだろう。
「それでは本日より、ユグドラさんは冒険者見習いから、正式に冒険者として登録されました~。なのでどの依頼でも受ける事が可能ですが、自分の実力に見合ったものを受けてくださいね~」
「え、見習いじゃなくなったんですか俺!」
「はい~、E・D・Dを倒せる実力があるのなら問題ない、とのギルドマスターのお言葉です~」
「ギルドマスター?」
「昨日会いませんでしたか~?
ああ、あのお爺ちゃんがそうだったんだ。偉い人だったのか。
でもそっか~、えへへへ~、冒険者になれたんだ~、うひひひ。にやけが止まらない。
「今日は何か依頼を受けますか~?」
「あ、はい受けます。でもどれが良いんでしょうか」
「お勧めは荷馬車の護衛ですね~。今度はアグレスの街へと向かうモノです~」
「午前の護衛は難しいんですよね? 僕が受けて大丈夫ですか?」
「上級冒険者のパーティーが居ますから、大丈夫だと思いますよ~」
なるほど、流石に上級冒険者が居れば、俺の1人や2人増えても問題ないだろう。
「分かりました、それ受けます!」
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