第5話 指名手配犯150まんえん

 盗賊のかしらが剣を振り下ろしてきたが、俺は冷静に対処できた。

 そう、以前やりたくても出来なかった真剣白刃取りを試みたのだ!!

 

 「はっ!」


 気合いと共に両手で剣を挟み込んで止める事に成功。したのだが、強すぎたのか剣が折れてしまった。

 この盗賊の頭、歳は20代中ごろで短い髪をトゲトゲにセットしている。


「あ、あれ?」


 あれ? と思ったのは盗賊も同じで、折れた剣を眺めて直ぐに短剣を取り出した。

 おっと、攻撃の時間は与えない!

 すぐに斧で盗賊の首を切り落とし、すべての盗賊の討伐か完了した。

 

「お前凄いじゃないか! 見習いだって聞いていたが、E・D・Dの半分以上を倒してしまったぞ!」


 二刀流と大剣の冒険者が喜々ききとして寄ってきた。

 それを見て荷馬車の依頼主も走り寄ってくる。


「それにしても斧を武器として使うなんてな。他にも居るのか? 斧使い」


「いきなり消えて遠くに現れてましたが、あれは魔法ですか!?」


「え!? えっと、あの、その……」


 いきなり沢山話しかけられてテンパってしまった。

 おちつけ~おちつけ~、落ち着いて言葉を選んで冷静におちちゅいて~。


「斧はバトルアックス戦斧せんぷですが斧です。魔法はテレポートですが魔法ではありません」


 三人とも首をかしげている。

 なにいってんだ俺ーーーー!!

 自分で言ってて意味わからん!


「それはそうと、矢で撃たれた2人を治療しませんと」


 依頼主が倒れている2人を指差した。た、たすかった……。

 イヤミな冒険者はいいけど、優しい剣と盾の冒険者は助けなきゃ。


 無事な2人の冒険者は治療の心得は有るらしいが、矢を抜いた後は包帯を巻くだけだったから、毒が塗ってある可能性も考えて俺が治療した。

 そう、俺の治療ちりょうスキルはMAXで、ゲームでは死者蘇生ししゃそせいも出来るレベルだ!


 ただ治療の仕方がゲームと違っていたから戸惑った。包帯じゃなくて治療セットってアイテムを使うらしい。包帯が治療セットに変わってるんだな。


「き、貴様なぞに助けてもらわなくても、俺様は大丈夫だった!」


「ありがとうユグドラ。君は命の恩人だな」


 使う武器は似ていても、全く正反対な2人。

 昔の何とかっていう犯罪学者は『犯罪者は先天的なモノである』と言ってたから、きっとイヤミな冒険者は将来犯罪を犯すに違いない。

 現在では否定されてる論文だけど。


 E・D・Dには賞金が掛かっているから、頭領とモヒカンの首を持っていく必要があるようだ。

 うげ、自分で切っておいて何だけど、生首を袋に詰めるのを経験するとは思わなかった。


 やる事も終わり、馬車に乗ってバグレスへの移動を再開した。

 それ以降は野犬の群れに襲われる程度だったから、本当に初心者向けだったみたいだ。




 バグレスの街が見えてきた。

 あまり高くない防壁に囲まれているが、高くないといっても梯子はしごを使っても登れない高さだ。


 街の中はランタンや松明たいまつともっていて明るい。

 あれ、もう日が沈む時間なのか? 空を見上げると暗い。とっくに日は沈んでいたようだ。


「よし、それではギルドへ向かおう。完了報告をするぞ」


 依頼主と別れ、剣と盾の冒険者が俺達を引き連れてギルドへ向かう。この街・バグレスは小さいが、港町なので海産物が豊富で観光客が多い様だ。


 今晩はこの街で泊まる事になるから、ギルドへ向かう道すがら宿の料金を見ておいた。

 一泊5~6シルバー程だ、安いビジネスホテルと考えれば、5~6千円かな?

 今回の護衛の報酬が5Sだから、一晩寝泊まりするのが精いっぱいだ。


 ギルドへ到着した。建物の外観は前の街、アグレスと変わりない。アグレスとバグレスって名前が似てて間違えそうだな。

 中に入ると数名の冒険者がいた。俺以外の冒険者は顔見知りの冒険者と挨拶を交わしている。

 ボッチになった俺は、カウンターへ向かおう。


「こんばんは。依頼完了の手続きをしたいのですが」


「はい、承ります~。依頼書をご提示くださ~い」


 明るく少しノンビリした声の女性、腰まである金髪でかわいらしい系の女の子は、俺が出した依頼書を両手で受け取ってくれた。

 ここの受付のお姉さんもカワイイなぁもう!


「おおーいカタリナ、俺のも頼むよ。こいつと同じ依頼だ」


「は~い承ります。おや? 他にも3名いらっしゃるようですが、どちらにいらっしゃいますか~?」


 おー、とか、はいはい~、とか言って寄ってきた。

 依頼書には受けた人数も書いてあるようだ。

 ちなみに全員ソロだから依頼書も5枚ある。


「それと、今回は手土産があるぞ。ほら」


 生首の入った袋をカウンターに乗せた。

 ヲイヲイ、可愛いお嬢さんになんてモノ見せるんだよ!


「これは誰でしょうか~? あ、これはE・D・Dですね? 照合しますので、少々おまちくださ~い」


 当たり前のように袋を開けて、当たり前のように生首を確認して、当たり前のように手続きに入った。

 な、慣れていらっしゃるのかな? 


 まず最初に護衛依頼の報酬が支払われた。

 護衛代の5シルバーが順番に手渡され、手土産の分は照合中との事で、ギルドの2階で待つように言われた。


2階では髪の無い長い白髭しろひげのお爺さんが居て


「ご苦労じゃったの。E・D・Dの手配書通り150ゴールドじゃ」


 と、日本円換算で150万円が入った革袋を手渡された。

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