第4話 盗賊団E・D・D

 馬車から降りて、声のした方を見る。

 どうやら盗賊が10~15名いるようだ。まあこっちには中級冒険者が4人もいるから大丈夫だろう。


「有り金だぁ!? 俺様から金を巻き上げようたぁ良い度胸だ!」


 どっちが盗賊か分からないです、イヤミな冒険者さん!

 しかし盾と長剣を持つ冒険者が、盗賊数名の顔をみて笑みを浮かべた。


「お前たちは盗賊団E・D・Dか!」


「キーッキッキ、なんでぇ知ってんなら話しがはえー、ほら命は助けてやるから有り金置いていきな」


 この盗賊はモヒカン頭だ……世紀末以外でもモヒカンっているんだ~。 


「残念ながら、俺はお前たちの首を狙っているんだ。命乞いをするのはそちらだぞ」


 おお! なんかやり取りがカッコイイ!

 剣と盾の冒険者が構え、他の3人も武器を構える。

 俺は剣を構え……どうやって構えるんだコレ。


「出したくないなら力づくでぎ取ってやるぜ!」


 盗賊が一斉に襲い掛かってきたが、こっちにはこいつらを狙っている冒険者がいるんだ、戦力や構成は不明だと言ってたけど、それなりの対策を練っているはずだ!


「グアー!」


「ぎゃ!」


 え? あの、冒険者さん達? 背中に矢を受けて倒れてしまわれましたが、演技ですよね? ね!?

 

「お、おのれ、背後から矢を撃つとは卑怯ひきょうな……」


 演技じゃないの!? 背後からの不意打ちなんて、盗賊や強盗の常套じょうとう手段じゃないか!

 残った冒険者は両手持ちの剣と二刀流の人だ。この2人は矢で攻撃されなかったようで、数名の盗賊と戦っている。つまり他の盗賊は俺と荷馬車の持ち主を囲んでいる。


「あんだオマエ、ピエロかと思ったら冒険者なのか? にしちゃ~素人丸出しじゃねーかよ。おかしらぁ! このピエロもらっていいですかい?」


「ああん? かまわねーが、お前ソッチの趣味があったのか?」


「違いますよ、金払ってサーカス見に行ったのに、ピエロが死ぬほどつまらなかったから腹いせでさぁ」


 おいピエロ! 他人を不幸にするんじゃないよ!


「あのピエロは俺も嫌いだ。好きにやっちまいな」


 とんだとばっちりだ!!


「ひっひっひ、まずは下手糞なジャグリングが出来ない様に両手を……あん? ぷっ、ひぁっはっは! こいつ斧なんて持ってやがるぜ! 木こりちゃ~ん、あの世で好きなだけ木をきっ」


 木こりちゃ~ん、でキレた。

 斧を手に取り、剣をモヒカンに投げつけると同時に胴体を真っ二つに切り裂いた。


「俺はな……俺はピエロでも木こりでもない! 斧戦士、斧戦士のユグドラだ!!」


 しゃべっている途中で1人斬りかかってきたが、軽くかわして首を落とした。


「ヒッ! なんだコイツ! お頭! おかしらぁ~!」


 俺と依頼主を囲んでいた盗賊が、お頭? の所へ逃げていった。

 お頭は冒険者の場所でもなく、少し離れた場所で酒を飲んでいるようだ。

 昼間から酒を飲むと、ろくな大人にならな……ろくな大人じゃないな。


 逃げていった盗賊は、お頭に頭を殴られ、嫌々俺の所に……は来ずに、2人の冒険者の方へと向かった。

 あ、流石にこの人数差はヤバいかな?

 そう思ったが、どうやら中級冒険者というのは思った以上に強いらしい。


 10人近くに囲まれていても、1人、また1人と倒している。

 おお、これなら急いで応援に行かなくても大丈夫そうだ。

 おれは矢を撃ってきた盗賊を倒す事にした。


 どうやら馬車の背後に2人、左に1人の計3人居るようで、木の上からこちらを狙っている。

 今は2人の冒険者は乱戦だし撃てないだろう。

 つまり俺を狙っている。


 2本の矢が頭と胴体を狙って飛んできた。斧で弾いて、依頼主が狙われない様に馬車の中に放り込んだ。

 流石に距離があるな。だが居場所が分かっているならコイツを使おう。

 小型の投げ斧を、背後の盗賊に向けて投げる。

 1人は首に命中して頭を切り落とし、1人は胸に当たったが、威力があり過ぎて貫通してしまった。


 んん? 思った以上に威力が高いけど、力強さSTRはそんなに高かったかな?

 まあいい、考えるのは後だ。

 次は左の奴も投げ斧で、あ、もう木から降りて逃げてる!


 木が邪魔で斧が投げられないな。

 そういえばバッグの中に瞬間移動の指輪テレポートリングがあったはずだ。

 あった、装備して直ぐに発動させると、逃げている盗賊の前方にテレポートする。


 いきなり現れてビックリするだろうな……後ろを見ながら走ってんじゃねーよ!

 前を見て走らないと転ぶぞ! その前に胴体をぶった切っちゃったけどさ。


 さて、2人の応援をしに戻ろう。


 テレポートで戻り、冒険者の相手をしている盗賊の背後から順番に切り捨てていく。

 いきなり背後に現れたから、盗賊は一気に混乱し、抵抗らしい抵抗が無いまま倒し終えた。

 後は盗賊のお頭だけか。


「危ない! 後ろだ!」


 振り向いた俺が見たのは、盗賊の頭が剣を振り下ろした姿だった。

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