第1章 俺だけがゲームな異世界
第1話 寝て起きたら異世界だった
念願の異世界に転生してヒャッホーイ! と喜んで、冒険者として依頼をこなし始めたと思ったらこれか。
ゲームに似た世界だとは言っても、流石にゾンビの群れを目の前にすると気持ち悪い。
ああゲームとは違って腐った肉とただれた皮膚、腐肉とウジがわいた匂い、やたら水っぽい足音と肉や骨がこすれた際の人とは違う音。
うひひ、これが異世界か!
無数の
人型ゾンビ、獣型ゾンビ、剣を持つスケルトン、半分溶けかかった馬……そんな連中に襲われてすでに1時間が経過した。
冒険者の悲鳴が上がる。
馬車護衛の冒険者達は腕が立つ。しかしこの数では分が悪い。
何か打開策は無いのか!?
メニュー画面を操作してアイテムやスキルなど、有効なものが無いか探す。
ん? これはなんだ、キャラクターチェンジ? 今までこんな表示は出ていなかったぞ。
タッチするとキャラクター名が6人分表示される。
これは……俺のゲームアカウントのキャラクターだ!
まさか、そう言う事なのか? いや考えてる暇はない、今はこれに賭けるんだ!
キャラクターチェンジ
ユグドラ
⇒ルリ子
しずか
番長
ディータ
メイア
◆ユグドラ⇒ルリ子◆
体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。
そう、やっとアタシの出番かい?
首の長い、大きな
「メテオ・スウォーム!」
頭ほどの大きさの無数の石が、空から降り注ぐ。
アタシの周りに居たゴミは片付いた。次はヘタレ共を助けてやろうかねぇ。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽ 転生直前 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
毎日寝る前にしている事がある。
それは目が覚めたら異世界に居ますように! と神様にお祈りをする事だ。
今のところ十年以上成果は出ていない。
受験や就職以上に強く願っているのにな。
いつ異世界に転生しても良いように、転生後にやる事はリストアップし、オンラインRPGのレベルやスキル、装備は常に最高の物を用意してある。
パジャマも外出してもおかしくないトレーナーだ。
さあ、今日も祈りを
今度こそは転生しますように! 天の神様仏様お願いします! あ、女神さまも。
さあ今こそレッツ異世界!
目を覚ました俺は、いつものように落胆した。
ああ、わかっていた、わかっていたさ。この風景はいつもゲームやPCの壁紙で見るような剣と魔法の世界だって……。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆ 異世界にいるじゃん俺!! ☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「マジでか! なんだよここ! 俺の部屋じゃないし! 見渡す限りの草原だし!!」
流石にビックリした。いや~やってみるもんだな神様にお願い。
「ああっ! 女神様ありがとうございます。それと神様と仏様も」
きっと俺を異世界に連れてきてくれたのは美しい女神さまに違いない。そうだそうだ、そして俺にこの世界を救えと言っているに違いない!
でもまずはヒロインとイチャつきたい。
だからこんな所でグスグスしてる訳にはいかない。
ステータス画面は右側に出っ放しか、メニューのマップを確認して最寄りの街へと走り出す。
走りながらステータスの確認をすると、かなり古いゲームのモノだった。
「斧戦士か。個人的には一番思い出のあるゲームだけど、出来れがもっと新しいゲームが良かったな」
とはいえ夢にまで見た異世界だ。きっととんでもチートなキャラに違いない!!
メニュー画面内のバッグを開くと、立体映像で目の前に表示された。
「わっ、なんだこれ、どうしろってんだ?」
当時使っていたであろう装備やアイテムが雑多に放り込まれていた。あれ? 妙に数が多い気がするけど、こんなに持ってたっけ?
小さな箱や袋を順番に探し、なんとか斧戦士の装備を見つけた。どうやって装備するんだろう?
とりあえず立体映像を触ると手について来る。
お? これはまさか? 手に付いてきた鎧を自分の胴体に押し付けると勝手に装備してくれた。
「おお、こりゃ便利だ」
当時の装備を一通り装着し終えた。
全身プレートメイルと、それを隠す様な大きめの青いローブ、赤いマントと、黄色の麦わら帽子だ。
「うむ、シグナルスタイルの完成だ!」
よし! 一刻も早く街へ行くぞ!
街道が整備されていたので時間はからないと思ったが、早速障害が現れた。
猿? 俺と同じくらいの身長の
バトルアックスを構え、猿に向かって走り出す。
よし今だ! 斧を持つ手に力を入れ、今まさに振り下ろそうとした瞬間に、何を思ったか、猿は地面に転がり腹を上にした。
「なんだ!?」
いきなりの腹見せに戸惑ったが、敵意がない
無抵抗の奴を倒すのは気が引けるな、それにキーキー言いながら俺に手を伸ばしている。
「敵意の無い奴は倒せねーよ。じゃあな」
記念すべき最初の獲物は今度だな。
街を目指して猿に背を向けると、いきなり背後から猿が抱き付いてきた!
まさか演技だったのか!? なんてずる賢いやつ……ん? なんかパンパン音がする。
なんか尻のあたりに衝撃が……音がする辺りを見ると、猿が俺の尻を目がけて腰を前後に振っている。
え? は?
「きゃーーーーーーーーーーーーー!!」
僕の処女がー!
一目散に逃げだした。世界新記録で金メダルが取れる速さで。
「えぇっぐ、ひっく、グス、グスン」
誰もいなくて良かった。思う存分泣けるから。ホント、ホントに心の底から怖かった。
泣きながら街を目指すと壁が見えてきた。あれが街かな? マップを見ると間違いないようだ。
何とか気を取り直して行くとしよう。
高い壁で囲まれた街の入り口は大きな木製の両扉で閉じられており、どうやら定番の門番との交渉が必要なようだ。
「おいお前、何者だ? サーカス団が来るなどとは聞いていないぞ」
槍を持った革鎧の門番が話しかけてきた。
「いえ私は旅の者です、街に入りたいのですが」
門番は
「嘘をつくな、旅人がそんなピエロみたいな格好でいるはずが無いだろう。正直に言えば死刑にはしない」
「死刑!? ちょっと待ってください! 本当に旅してるんですってば! まあ冒険者志望ではあるけど!」
「冒険者? 人を笑わせる流れの冒険者か?」
「いやいや、いい加減ピエロから離れましょうよ」
「冒険者になりたいのならついてこい、案内してやる」
「ありがとうございます」
ふぅ、やっと街に入れたな。想像とは別の意味で疲れたけど、これで俺の輝かしい未来が開かれたのだ!
「ここで当分の間、頭を冷やしていろ」
案内された場所は鉄格子の付いた石造りの部屋……つまり牢屋だ。
「はえ?」
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