第89話 小鬼
はあ……無駄に疲れた。
「何かしら、My Lord」
しかもその原因が絶賛同行中。
「なんでもありませんよ。それよりもジャーメレナさん、そのマイロードという呼び方なのですが」
「これ? 変えるつもりはないわよ。呼ぶ度に若干困った顔をするのが、たまらないんだもの」
…………。
小鬼。
「何か言ったかしら?」
「いえ」
「まあ、いいわ。それにしても凄いわね、竜よ竜! まさかレハパパの火竜の背中に乗る日が来るなんて!」
俺も2人乗りする羽目になるとは思っていませんでした。
〈わははは、小娘よ。オレの偉大さがよくわかってるじゃないか!〉
「それはそうよ、どれだけの兵と船が貴方に沈められたと思っているのよ。遠目に何度か見たことはあったけれど、とても勝てる相手には見えなかったわ」
〈ふははははは〉
「まあ、そんな竜が可愛く見えるほど危険な存在が何人もいたのはもっと予想外だったけど」
〈うむ、全くだ。あの紅様と同等の方が二人もいるだけでもあり得ないのに、その遥か上をいく方がいるんだからな〉
「あの獣耳の女性よね」
〈ああ。ソフィア様は本当に別格だ、あの方ならば王様の他の配下全てが束になっても敵わんだろう〉
確かに。全員ソフィアさんに討伐された経験はあるからな。
まあ、一番被害を受けてるのは俺だろうけど。
「そう、彼女はソフィアというのね」
〈なかなか面白い奴だな小娘。ソフィア様を見て闘志を燃やすのか〉
「もちろんよ、目指す頂きは高いに越したことないもの」
……脳筋小鬼。
「何か言ったかしら、My Lord?」
「いえ、なんでもありませんよ。そんな事より良かったのですか?」
「?」
「移民を希望されなかった皆さんのことです。ジャーメレナさんのご家族もいらっしゃったのですよね?」
なんせ300枚も契約書を出したのに、使われたのは10枚ちょっとしかなかったからな。
「別にかまわないわ、本当に付くべき強者を感じ取れないんだからしょうがないわよ」
「付くべき強者ですか?」
「そ、強者よ。誰だっていつも他国に狙われるような弱者の国よりも、外敵が恐れて狙われることすら少ない強者の国の方が良いと思うでしょう?」
確かにな。外からの攻撃に怯えながら生きるよりも、攻撃されないほどの強さを持った国の方が安心して生活できるよな。
「私と一緒に来なかった者達は、まだ自分達の祖国が強者だと思っているのよ」
「あれだけの戦力を遠征に出せる国ですし、間違いではないのでは?」
「目の前にそれ以上の強者が現れたのに? それにどうせその戦力だって壊滅させたのでしょうMy Lord?」
壊滅というかあれは焼失かな?
〈その通りだ小娘。空飛ぶ船も含めてあの船達は全て紅様の炎で消し炭だ〉
「ほらね、既に信じるべき強者は落ちているのよ。それに気付かないだけでなく、新たな強者が手を差しのべてくれているのに、それをはね除けるなんて愚かとしか言いようがないわ」
「自分で言うのもなんですが、普通の人は見たことも聞いたこともない領地の住民になろうとは思わないのでは?」
「それは誘ってきた相手が普通の人間の場合よ、My Lord」
?
「部下の強さの常識外れはしょうがないとしても、王の常識はずれはいだたけないわね」
常識外れ……。
部下をいきなり本気でぶったぎる人が常識を語るの、うおぅ!
「あの、大剣が叩きつけられたのですがこれは一体」
「馬鹿にされた気がしたから」
本当の常識の外は誰なんだろうね?
「まあいいわ、いいかしらMy Lord。領主がレハパパの火竜に乗っているのよ。まずそこからしてあり得ないことなの、わかる?」
えーと……そうなのか?
まあ、確かに車に乗った市長は聞いたことあるが、竜に乗った市長とか意味わからんな。
「My Lord、それは今は関係ないわ」
!?
「いい? そもそも竜という存在だけでもこの世界では畏怖される存在なの。もし竜を討伐しようとするなら、一番弱いクラスの竜相手でさえレハパパに攻めこんだ冒険者達と同じ数の兵が必要なのよ」
なるほど。やはり竜ってのはこのゲームの世界でも特別なんだな。
そういやダダンダさんも、ジラーテさんを見てドン引きしてたもんな。
「このレハパパの火竜相手なら、そうね2~3撃打ち合って一部の兵が逃げるのがやっと。討伐となると今回ハバメヤメを襲った船団でも無理でしょうね」
マジかー、ジラーテさん結構強いんだな。
「あれ? ではなぜ私達に攻撃を」
「あの空中戦艦があったからよ」
〈あの空飛ぶ船の一撃はなかなかの威力だった〉
確かに見た目も派手だったしな。
〈紅様には全く意味がなかったが〉
だな。
「その空中戦艦要する船団さえ難なく屠るような部下がゴロゴロいるのよ? そんな常識外れの国が他にあると思う?」
「私はまだ数えるほどの国しか訪ねたことがないので、なんとも」
他にもおんなじ様なところがあるかもしれないだろ?
〈ぶわははははは、王様はオレを拳一つで従えるような存在がゴロゴロいる国が他にもあると本気で思っているのか?〉
「はあああ。いいことMy Lord、覚えておいて。そんな国は存在しないわ」
ふーん。ま、今はってところかな。そのうちバージョンアップとかで強敵とか一杯でてくるだろ。
でもソフィアさんクラスの強敵か………。
倒せるのか?
「あんまりわかってないみたいね」
「そんな事はありませんよ」
「はあ、まあいいわ。おかげで私も仕事には困らなさそうだしね」
?
「貴方の教育係よMy Lord」
…………。
「クーリングオフは使えますか?」
「何かはわからないけど、無理よ」
ですよねー
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