第82話 襲撃?(side レンドンド)

 

「お邪魔するわよ」


「王と配下の間柄とはいえ、ノックくらいはしてほしいんだが」


「ふん、たかが南国の蛮族風情が。礼儀だ何だといえるような人間でもないでしょうに」


 こいつは一々言動にトゲを仕込まないと気がすまないのかよ、くそったれが。


「それでこの蛮族風情に何のご用でしょうか、ジャーメレナ女王」


「レンドンド、あなたの欲しがっていたものを返しに来てやったのよ」


「欲しがっていたもの?」


「そうよ、これよ」


「王冠?」


「ふん、物だけじゃ動揺もしないか。全く面白くない男ね」


 くそったれが、冗談にしても質が悪すぎんだよ。


「でも、これならどうかしら?」


 《ジャーメレナからハバメヤメの王位及び関連領地が譲渡されました。承認しますか?》


「な!?」


「あはははは。いいわ、いいわ、その間抜けな顔。そういう顔が見たかったのよ」


「おい、どういうつもりだ?」


「どうもこうもないわよ。あなたが欲しがっていたもの、丸ごと全部返してやるって言ってるのよ」


 ちっ、遊びにしては質が悪すぎる。一体何を考えていやがる。


「そんなに警戒しなくてもいいわよ。やっと海に出られるようになったからお祖父様の故郷に帰るってだけよ」


「故郷だと?」


「そうよ、一族全てに私の小飼の連中も全部引き上げるわ」


 額面通りの言葉なら、願ったり叶ったりだが。こいつらが自分に何の特もないことをする訳がねえ。一体何を考えていやがる。


「そうそう。手切れ金て訳じゃないけど、レハパパ討伐の戦果だけは私達がもらっていくわよ」


「断ると言ったら」


「ふん、そもそもが私の私兵と私財で集めた部隊よ。あんたにとやかくいわれる筋合いはないわ。それに今この場であんた達を血祭りにあげて、街まで破壊尽くした上で貰っていってもいいのよ」


 ちっ、化け物め。私兵がいなくても俺達程度なら物の数にも入らないってとこか。


「どうするの? 折角無傷で国が帰ってくるのよ」


 この女それに私兵も加わって街で暴れまわられたら、一たまりもねえ。

 レハパパの連中には申し訳ねえが……くそっ、長年の友好関係もこれで完全に終わりだな。


「わかった。その申し出を受けよう」


 《ジャーメレナからの譲渡を承認しました》


「賢い王様で助かるわ。それじゃ私達はすぐにでも出ていくから、あとはよろしくね新しい……いえ、本物の王様さん」


「要はすんだんだろ、さっさと出ていきやがれ」


「はいはい、言われなくても出ていくわよ」


 ………………。

 …………。

 ……。


 いったか………。


「レンドンド様。いえ、レンドンド王、おめでとうございます」


「祝いの言葉は後だ、ビナナン。今すぐ街に防衛部隊を配置しろ」


 あの女がこの国のプラスになることをやる訳がねえ。


「奴が国を捨てたってことはこの国に何か仕掛けたか、もしくは国を捨てるほどの何かが起こる可能性が高いからな」


「かしこまりました、動ける者全てを防衛にまわしましょう」


「市街地を優先でたのむ」


「承知しました」


 ジャーメレナ、何を企んでいやがる……。


  ▼ ▼ ▼ ▼ ▼


「レンドンド様、緊急事態でございます」


「何事だ、ビナナン」


「レハパパの火竜がこちらに接近しております」


「!?」


 何かしかけていやがるとは予想していたが……。


「既に防衛体制には入っていますが、どこまで持ちこたえられるか」


「とにかく住人達ひ避難を最優先だ、民さえ無事なら街でも城でも後から建て直せる!」


「かしこまりました」


 まさか竜をけしかけてくるとはジャーメレナめ、何てことをしてくれやがる。


「失礼します!」


「入れ、なにがあった」


「竜が城の上空に! 防衛部隊が迎撃していますが……」


 もうここまできたのか。


「とにかく街の住人を避難させろ。それ以外は後回しだ!」


『皆の者、控えるでござる!!!』


 が、くっ!

 な、か、体が……押さえつけられるっ。


 く、まともに立つこともできねえ。ジャーメレナめ、一体何を差し向けやがった!


 おいおいおい、嘘だろ。

 な、何なんだよ、ありゃ。あんなもんくらったら城どころか街ごと黒焦げだ。


『ハバメヤメ城主に次ぐ、此度の戦の責任者をここへ。もし従わぬのならば次は妾のこの炎を城に見舞うぞ』


  戦の責任者だ? ちっ、そういうことかよ。ジャーメレナめ、王位と共にとんでもねぇもんまで押し付けて行きやがった。


 …………。


 くそったれが!


「ビナナン! 意識はあるな? 俺は今から外にでる。もし俺に何かあった時はバンバラヤに王を任せる。ただ、あいつはまだまだガキだからな、あいつが一人前になるまでは支えてやってくれ」


「れ、レン……ど……ンド様」


「俺だって黙って殺されるつもりはねえよ。だがあれだけの力を持ってる奴だ。無事は全く保証されないからな、もしもの準備ってやつだ」


「か、かしこ……まりまし…た」


「それじゃあ、ちょっと行ってくるぜ!」


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