第71話 レハパパ

 あのダツみたいのが交通機関にもなってるとは。さすがファンタジー、乗り物も一筋縄ではいかないな。

 ただ、ちょっと運転が荒っぽ過ぎるかな、目の前がクラクラするよ。

 というか、ゲームなんだからこの辺は無理に再現しなくてもいいと思うんだが。


 さて、そんな愚痴は置いといてやってきましたレハパパ。

 といってもまだ水中だから目前にあるのは岩壁とぽっかり空いた洞窟だけなんだけどな。


 宰相さんの話だと火鱗族の集落はこの洞窟を抜けた先って話だが。


 それにしても不思議な洞窟だね。

 中が真っ暗なのも覚悟してたんだが、壁がほのかに発光してるおかげで視界がくっきりだ。あと、水温が若干温かくなってきてる気がする。


 ……。


 うん、進めば進むほど水温が高くなってきてるね。


 …………。


 そろそろ水温が上がってきてるとかいうレベルじゃなくなってきたな。



 ………………。


 出口、出口はまだなのか!? 何この熱湯風呂。


 み、見えた、あの光が出口か!

 早くこの熱湯風呂からおさらばしないと、このままだと茹で上がっちまう。


 って、水上の方がもっと熱いいいいい!


「ム? お客人か?」


 喉が肺が、熱いいいいいいい。

 無理無理無理、マジで無理!


「うーム、なゼ陸の人間ガ人魚族の出入り口から? お客人、これはドういうことか?」


 ちょ、質問されてもまともに口も開けないんですが。

 これ何とかならないんでしょうか???


「ダダンダ、このお客人やけに苦しそうダガ」


「ム、たしかに。モしや火護石ひもりのいしをモっていないのか?」


 火護石? 何のことだ?


「この苦しミ方を見ると、そんなところダろう」


「ふーム」


「陸の人間ガ、人魚族のルートを使ってるのに火護石を持っていないとなるト」


「ふム、たダ単に外の人間ガ迷い込んダダけということか」


「ダな」


「ならバ捨て置けバよいか」


 !?

 宰相さんめ、そんな重要なものがあるならきちんと教えてくれよ。

 このままじゃ、せっかく新しい街にたどりついたのになにもしないで死に戻り一直線だ。


 ん? ……そうだ、宰相さんか!


 紹介状、紹介状はどこだ?

 急げ急げ俺!このままだとここで蒸し焼きだ!


 あった!


「ダダンダ、こいつ何か出したゾ」


「ム? この封は、マーリダーレ王国の」


「となると……モしかして正式なお客人か?」


 そうです、宰相さんに紹介されてきたんです。

 ですから早く助けてえええええ!


「わからん、ダガ本物なら私ガ勝手に開けるわけにもいかないダろう。長に確認してくる、お客人すまないガモう少しそこで待っていてくれ」


 は?

 いや、ちょ、え???

 た、待機なの???


 も、もうほんとに無理なんですけど……。


「ダダンダ、さすガにそれは無理というものダ。すデにお客人ガ虫の息ダ」


「それもそうか。ならバ火護石を貸そうデはないか」


 おお!


「そうダな。それデ貸す石はドこにあるんダ?」


 ぇ……。


「ム? ビビンザ、お前ガ持っているのデはないのか?」


「いや、持ってないゾ」


「お客人用に常に用意するようにと、長にいわれたはズダガ?」


「俺はお前ガ用意していると」


「私はお前ガ用意していると」


 ちょ、言い争いは後にしてほしいんですが。


「ビビンザお前はいつもそうダ。なんデモすグに忘れてしマう」


「そのセリフそっくりそのままお前に返してやるダダンダ」


「なんダと?」


「一昨日の採掘作業の時に、採掘道具を一式忘れたのはドこのドいつダ?」


 採掘作業なのに一式忘れるって、ランドセル忘れて小学校にいく子みたいだな。

 というか現場につく前に誰か道中で教えてやれよ。


「ふん。ならバ、その採掘作業デ採掘した鉱石をすベて忘れてきたのはドこのドいつダ?」


 採掘作業やって鉱石忘れるって、お店に行ってお金だけ払って商品忘れてきちゃう人みたいだな。

 そして誰かその場で忘れ物を教えてやれよ。


 というかあれだ。

 俺、駄目だな、これ。

 とり……あえず宰相さんを……とっちめよ……う。


 また……あのダ……ツに乗る……のかあ……。

 勘……弁……してく……れ……

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