第51話 未知との遭遇

 さて、またここからか。

 今回はワニ野郎はいないみたいだな。


 それでどっちに進むかな?折角アイテムも借りたんだし、会ってみたいよな人魚。

 うーん、前は西に適当泳いでたらガッツォさんに遭遇したし、今度は反対の東に向かってみるか。


  ▼ ▼ ▼ ▼ ▼


 お、なんか白くて大きい建物が見えてきた。

 あれは城? ってことは近くに街もあるはず? ゲームだと、だいたい城と街がセットなってるし、あると信じて進んでみるのみか。


 派手目の赤に黄色にオレンジ、周囲が華やかになってきたな。

 泳いでる魚も綺麗なやつが増えてきたし、これはあれか? 珊瑚礁ってやつか?


 なんかちっさい色とりどりが集まってきた。

 おおう、えらい人懐こい魚だな。ってちょ、前が見えないぞ、おい。


 ちょ、とっ、たっ。

 なんで払ってもまとわりついてくるんだこいつら。ほら、危ないから早く解散しろ、ちっこいやつら。


 ……。

 ふう、やっといなくなったか。


「!」


 こいつはまた……。


 ……。

 …………。

 ………………。


 ふぁんたじー、すげえわ。


 パステルカラーの珊瑚礁と色とりどりの魚達、その奥にに浮かぶ白亜の城か。これが絵なら、絵画に興味のない俺でもほしいと思うくらいだ。


 …………。


 ふうぅ。

 いつまでも呆けてる場合じゃないな。それじゃあの城に近づいてみるとしますかね。


 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼


 うーん、あるのは頑丈そうな壁だけか。

 街があるとしてもこの壁の向こう側か。それにしても、周囲は平和な感じの珊瑚礁なのに、こんなごつい壁必要なのかね? というかこれって泳いで越えられるんじゃね?

 まあ、無駄なトラブルになりそうだし、やるとしたら最後の方の手段だけどな。


 それで入り口はどこにあるんだ?

 このまま壁が続くなら、ホントに泳いで壁を越えなきゃいけなくなるぞ。


 お、あそこに見えるのはもしかして見張り塔と門じゃないか?


 門の前には……なんだあれ。腕の生えた魚? 魔獣の一種か?

 だが、門の前に仁王立ち?してるってことは門を守ってるってことだよな。

 うーん、下手に近づかないほうがいいか?


 あ、やべ気付かれた。

 うおおお、めっちゃ早い速度でこっちに泳いできた。しかも3人?3匹?

 なんにしても魚の顔、怖!


「貴様、何者だ!」


 !? 魚がしゃべった!?

 ってことは魔獣じゃなくて、こういう種族なのか?


 まさか、この人たちが人魚なのか?

 だとしたらガッツォさん、好みがなかなか変わってらっしゃるな。


「貴様、何者だと聞いている!」


 しかしなんで水中なのに声がきこえるんだ?


「おい、こいつは見るからに陸地の人間だ。こちらの声が聞こえるわけないだろう」


 ああ、そうか。ガッツォさんのくれた貝の効果か。


「そ、それもそうか。だがなぜここに陸地の人間が?」


「そんなもの知るわけがないだろう。そんなことより、どうする?」


「陸地の人間と無駄に揉めるつもりはないが、たった1人でここまで来る陸地の人間というのも怪しいな」


 まあ、そうだよな。空気の問題とか考えたら、なかなか1人でフラフラできる場所ではないか。

 俺も鳳えもんの道具のおかげで普通に探索できてるだけだしな。


 あと魚の顔、無表情だし、瞬きしなくて怖い。


「取りあえず…………排除するか?」


「そうだな。特別な来賓等の話も聞いていないしな」


 いや、まあ、不審者相手ならそうなるよな。


 いきなり揉め事は避けたい所なんだが、なにか話そうにも口開くと水が入ってくるし……。


「なんとか話ができないかね?」


 って、なんか声がでた!?


「な!?」


「話ができるだと!?」


 なんだこれ?


「貴様一体何者だ! なぜ海中ここで話ができる」


 話そうと意識したら声みたいなのがでるのか?

 これもガッツォさんのくれた貝の効果なのか?


「何者だと聞いている!」


 ええと、なんて言えばいいんだ?


「貴様、何を考えている!」


 やべ、不信感が増してる。

 もう、いいや。どうにでもなれ!


「私は荒れた僻地の領主兼冒険者です」


 やっぱり、話そうと意識した言葉が、音になって出てくるみたいだ。


「は? 貴様ふざけているのか?」


 だよなぁ。ただ、この手の展開って何言っても一緒な気がするんだよ。


「いえ、事実を述べただけです」


「ふざけるのも大概にしろ!」


「もういい、このまま話していても埒があかん。排除する!」


 うおっと………うん、槍、通らないね。流石鳳えもんの作ったスーツだ。


「な!」


「おい、何を遊んでいる」


「遊んでいる訳では」


「もういい、俺がやる」


 水中だとやっぱり突き刺す系がつかいやすいのかね?

 まあ、なんにしても刺さらないんだけどな。


「く、こいつは一体? おい、なにかおかしい。念のため、応援を呼んでくれ」


 笛?

 ……特に音は聞こえないけど、たぶん音波的な犬笛的なあれなのか?


「どこを見ている不審者が!」


 よっと。

 確かにスーツに刺さらないなら、スーツに覆われてない顔を狙うよな。


「なっ!?」


 だが、この速度なら避けられる。


「はぁっ!」


 よっと。


 これ普通に倒しちゃったら不味そうだよなぁ。


 なんか普通に生活してるみたいなこと言ってたし、どんなマイナス要素があるかもわからない。

 俺が死んでも死に戻りで済むしな。取りあえず殺さない範囲で無力化できるように頑張ってみよう。


「この、ちょこまかと!」


 取りあえず、武器を破壊してみるか?


「おとなしく排除されろ!」


 おとなしく排除されろって……。

 まあいいや。喰らえ、ソフィアさん仕込みの踵落とし!


「ぐ、俺の槍が」


 からの上段回し蹴り!


「くそ、俺の槍も」


 から反転しての飛び膝蹴り!


「なに!?」


 成功成功。

 さて、3人とも得物が失くなった所で撤退してくれたりは。


「例え武器がなくとも、お前のような陸地の人間1人!」


 しないか。これは1人ずつ気絶させるしかないか?


 !?


 なんか飛んできた!


 げ、なんかいっぱい腕つきの魚が出てきたぞ。


「ふん、お前がどれだけちょこまかと逃げようと、この数が相手ではどうにもなるまい」


 11、12……全部で20か。


「おい、俺の話をきいているのか!」


 少し派手にいってみるか。


「おい、なにか球体をだしたぞ」


「貴様、無駄な抵抗を」


 地面に向けてボレーシュート!


「なぁぁぁぁ!」


「ぶおおおぉぉぉぉ!」


 ふぅ。取りあえず腕つき魚はみんな気絶してくれたかな?


 思いつきだったが、ガチンコ漁もどき成功!

 まあ、壁が少し壊れたのは申し訳ないが、誰1人殺してないし(たぶん)、問題ないだろ。


 さてと、これからどうしようか?

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