第50話 口付けの秘密
「ガッツォさん。早々で申し訳ありませんが会っていただきたい方が「ご主人さま」」
っと探す手間が省けたか。
「あら? 新しい住民かしら?」
「ええ、先ほどから。船大工のガッツォさんです。ガッツォさんこちらは鳳仙さん、私の領地で色々な物を作ってくれる素晴らしい方です」
「よろしくね、ガッツォちゃん」
「よろしく頼む、鳳仙姐さん」
ん? 姐さん?
「あらあら、良くできたコじゃない」
まあ、当人達がいいのなら別にいいか。
そんなことより、スキンヘッドの筋肉おっさんと褌一丁の細マッチョリーゼント。
……誰も得しない絵面だな。
取りあえず、ガッツォさんには服を着てもらわないとな。
「鳳仙さん。早速で悪いのですが、ガッツォさんに何か着るものを作ってもらえませんか?」
「あら」
「頭、気を使ってもらってすまねぇ。だが、オレに服なんざもったいなえですぜ」
は?
「工場でもこの格好でいることが多かったし、幸い、ここはあまり寒い土地でもなさそうだからな。ならこのままでも特に問題はない」
いやいや、褌一丁ですよ。問題しかないと思うのですが。
「あらあら、そんなこと言わずに。折角ご主人さまが気をきかせてくれたんだから」
ナイスフォローだ、鳳えもん。
「気をきかせたというほどではありませんが、歓迎の品ということで、受け取ってもらえると、私も嬉しいです」
「頭や鳳仙姐さんにそこまで言われちまっちゃ受けねぇ訳にはいかねえか。その話、喜んで受けさせてもらうぜ」
ふう、取りあえずなんとかなったか。
「うふふ、それじゃ早速作業にとりかかろうかしら」
おっと、鳳えもんが作業に入る前に、口に咥えるやつを修理してもらわないとな。
「鳳仙さん、申し訳ありませんが作業に入る前にコレを見てもらえませんか」
「あら、どこかに不具合でもあったかしら?」
「ええ。どうやら戦闘の衝撃で故障してしまったようで、かなり強烈な風が吹き出しまして」
「わかったわ、急いで修理しちゃうわね。直ぐに済むからちょっと待っててちょうだい」
「わかりました」
流石、鳳えもん。仕事が早くてたすかる。
おかげで今日はもう一回くらい探索できそうかな。
「頭、もしやまたあの海に戻るつもりか?」
「今日はまだ時間がありますし、もう少し探索してみようかと」
「そうか、それならこれを」
ピンクの二枚貝?
上下どちらの貝にも何か彫り込まれてるな。
「これは?」
「海中で人魚の連中と話すときに使う道具だ。これがないとオレ達陸のモンにはあいつらの言葉が聞こえねえ。そしてオレ達の言葉もあいつらに聞こえねぇ」
なるほど、水中でのコミュニケーションに必要な道具か。
これってもしかして先にガッツォさんにであってなかったら、人魚とやらに会ってもコミュニケーション取れなかったってことか?
確かに、普通に水中で会話が成立とかあり得ないが。うーむ、無駄に難易度高いな。
「ありがたくお借りします」
「オレにはもう必要のないもんになっちまったからな、自由に使ってくれ」
ああ、そうか。人魚との逢い引きを海中でとなると必要だもんな。
ん? でも海中での呼吸はどうしてたんだ?
「あのガッツォさん、つかぬことをお伺いします」
「オレにわかることなら」
「この貝殻があるということは、ガッツォさんは水中で人魚とコミュニケーションをとっていたということですよね?」
「ああ」
「なら、空気というか呼吸はどうしていたんですか?」
「それはその……」
なんだ? 何か言いにくいことなのか?
「人魚の……ち……けを」
「?」
「に、人魚の口付けだ」
は? 空気の口移し?
「人魚の口付けには特別な力があるらしくてな、口付けを受けた陸のモンはしばらくの間、水の中でも問題なく過ごすことができるんだ」
なんだ口移しで空気を送られ続ける訳じゃないのか。それにしてもそんな能力があるのか、凄いな人魚。
もしかすると本当は人魚との出会いが会って、初めて攻略ができるエリアなのかもしれないなメルシュナード。
まあ、別ルートでもこうしてなんとかなってるけどな。
「ご主人さま、修理が終わったわ。本体の強度も上げておいたから、今度はそう簡単に故障しないはずよ」
「ありがとうございます」
流石に鳳えもんだ、痒いところにもしっかり手が届く。
今のところ接触はないが、初対面の人魚の目の前で、頭が弾けとんだら申し訳ないからな。
「さて、それでは出発する前に、ガッツォさん」
「おう」
「ガッツォさんを他の住人の皆さんに紹介しましょう」
「あら、ご主人さま、それならワタシが連れていってあげるわよ」
うーん、それだとガッツォさんに失礼にならないか?
「市長、これからも住人の方は増え続けるかと思われます」
「そうね、きちんとご主人さまとは挨拶してるんだし。他の住民との顔合わせまで、全部ご主人さまがやらなくも大丈夫よ」
「市長。任せることができる仕事は、私達にお任せください。その為にも私達はここにいるのですから」
「そういうことよ、ご主人さま。それともワタシ達が信用できない?」
「いえ、そんなことは」
なくもない場合はありますが。
まあ、今回は顔合わせだし大丈夫かね?
「おう、気にすんな頭。オレなら大丈夫だ」
「わかりました。セリスさん、鳳仙さん、今回はお二人のお言葉に甘えさせていただきます」
「お任せください」
「任せてよ」
「それでは私はもう少しメルシュナードの探索をしてきますね」
折角話せるアイテムも借りたんだ。骨じゃない人魚ってやつを探してみようか。
「いってらっしゃいませ、市長」
「いってらっしゃい、ご主人さま」
「行ってきます、鳳仙さん、セリスさん」
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