第25話 男二人の空騒ぎ

 んっ……寒!


 こりゃあれだな、今度からゲームにINするときは薄目のタオルケットくらいかけておかないと駄目だな。油断すると風邪ひきそうだ。


 ん?携帯に着信?


 うお!? また丸田から大量の着信が! と、取りあえず連絡を返さないとな。


『十四郎!』


 だから早ええよ、電話とるのが。今、絶対コール音鳴ってないぞ。


「わるいな丸田。今の今までガロンディアにINしてた」


『お前なぁ、まだ携帯とリンクさせてないのかよ』


 携帯とリンク? ああ、そういえばそんなようなこと言ってたな。


『お前のことだから、どうせ適当に忘れてたんだろ?』


「その通りだ。すっぱり忘れてた」


『はぁ。見事なまでにお前らしくて、嬉しい限りだよ』


「喜んでもらえて何よりだ」


『うるせぇよ。よし、とにかく今すぐ携帯とリンクさせろ。ただし通話は切るなよ、一度切ったら絶対違うことやりはじめるからな』


 く、人の行動を先読みしやがって、お前は俺の母親か!


「それで、どうすればいいんだ?」


『まずはガロンディア専用サイトを開け』


 えーと、ガロンディアで検索っと。あれ?出てこないな。


「専用サイトなんて出てこないぞ」


『ああ、もう。そこからかよ!』


「そこからだよ。頑張って教えてくれ!」


『なんで若干偉そうなんだよ、お前は』


「気のせいだ。それよりもどうすればいいんだ?」


『説明書に専用サイトのURLと個人コードが載ってるだろ?』


 説明書?説明書か………。


『おい、どうした?』


「ちょっと待っててくれ、多分何処かにあるばずだ」


『お前な、そういうのは分かりやすい所に保管しておけよな』


 さっきから、なかなか口うるさいな丸田め。


「お前は俺の母親か!」


『お袋さんに言われる前に、やることくらいきちんとやっておけよ!』


 くそ、正論を!


『いいから、早く探してこいよ』


「わかった。ちょっと待ってろ」


 えーと、どこにしまったかな? 大事な物って認識はあったから、捨ててはないはずだが。


 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼


「待たせたな、丸田」


『待たせ過ぎだろ。一時間もなにやってたんだよ』


「説明書の奴がなかなか見つからなくてな」


 まさか、あんなところにいるとは。


『それで見つかったのか?』


「ダイニングテーブルの上にいた」


『は? なんでそんな簡単なところにあるのに、こんな時間がかかるんだよ』


「それはわからん。わからんが見つけることはできた」


『はぁ。お前のお袋さんの苦労が目に浮かぶわ』


「なんでわかるんだよ。ちなみに妹にも怒られてたけどな」


 どうしていつも物が見つけらないんだってな。でもな、見つからない物は見つからないんだよ!


『妹さんにも迷惑かけてるのかよ』


「その分、今でも二人にはさんざん振り回され続けてるけどな!」


『は?』


「朝起きたら、目の前にスーツケース持った二人が待ってたことがあるからな! 着の身着のままで拉致されたんだぞ! 朝起きていきなり海外旅行とか厳しすぎるだろ」


『あ、ああ』


「しかも、親父は逃走しやがるし。海外であの二人の暴走を一人で何とかするとか、それこそ無理ゲーだったての」


『まあ、あれだな。楽しそうなご家族でよかったな。お前の家の愉快な家庭事情はもういいから、携帯のリンクだ』


「いや、よくねーよ。折角だから話をき『はやく携帯リンクしよぜ!』」

 くそ、まだまだ愚痴りたいことが沢山あるのに。


『目次に専用サイトについての項目があるだろ?』


 目次、目次っと。お、 《専用サイトについて》これか?


「あったぞ」


『ならそのページにあるURLにアクセスしてくれ』


 URL、URL、これか。こいつを入力してっと……《error》。あれ? なにか間違えたか?もう一回入力してっ……《error》。


「何回入力してもエラーが出て、アクセスできないぞ」


『は? 入力ってお前、まさか手打ちで入力してないだろうな?』


「手以外で入力は俺には難しいぞ」


『お前なぁ。いつの時代のおっさんだよ。本当に俺の上司かよ!』


「おっさん、おっさんうるさいな。俺もお前もいい年だろうが!」


『うるさいな、例えだよ例え。そんなことより、携帯の読み取り機能を使えよ』


「読み取り機能?」


『携帯のカメラでURLを撮影してみろ』


 URLを撮影? そんなことしてどうなるって………サイトにアクセスしやがった!?


「いつの間にこんな機能が!?」


『もう、何年も前からだよ。ったく、それでサイトにアクセスできたら個人コードの入力を求められるから、コードを入力しろ』


 コードを入力っと。おお、なんか開いたって、これゲーム内の俺か?


『開いたら自分のキャラクター画面になるはずだ』


「ああ、なってる」


『そしたら横にあるメニューを見てくれ』


 メニュー、メニュー。これだな。


「あったぞ」


『そのメニューから設定を選んでくれ』


「選んだぞ」


『通信端末のリンクって項目があるだろ? それを選んでONにしてくれ』


「ONにしたぞ。これで終了か?」


『大体はな。おっと、すまん、ちょっと呼び出しだ。くそ、なんでこんな時間に電話寄越すんだよ。メールでもなんでも通信手段なんざ腐るほどあるだろうが! 十四郎すまない、続きは自分で調べてやってくれ』


「ああ、わかった。説明書もあるしなんとかなるはずだ」


『それじゃあ、またな』


「ああ、またな」


 ふむ、あとは説明書を見て……何をするんだ? 確か携帯リンクだったよな。なら今ので終わりってことだろ? ってことはここまでってことか。

 よし、今日のところはおしまいだ。流石に腹も減ってきたし、飯でも食いにい行きますかね。

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