貴方は今日から市長です。は？これRPGですよね？〜皆はMMORPGなのに自分だけ開拓SLGでした〜

第24話 始まる？街作り、動き出す職人たち

「おかえりなさいませ、市長」

「お帰りだぞ、親分」

「ただいま戻りました」

「お早いお帰りでしたね」

　全くだ。しかも今回は何が起こったかよくわからなかったし。

　ちょうどロカさんもいるし、聞いてみるか。

「ロカさん、私に一体何があったんですか？」

「親分は鳥型の魔獣に突撃されたんだぞ」

　鳥、そうか空か。水中ばかり気にかけてたからな、完全に油断していた。

「親分の仇はきっちりとっておいたぞ」

　親分に仇……なんか言葉だけみると何か違う団体みたいだな。

「市長、わき見は危険ですよ」

　な！？なんでわかるんだ？ あそこにはセリスさんはいなかったはず。いや、騙されるな俺！これはセリスさんお得意のブラフだ。

「ロカさんに状況は事（・）細（・）か（・）に聞きました。油断は禁物、注意一秒怪我一生ですよ」

　ブラフじゃなかった！？そしてなにその交通安全の標語みたいなの。

「市長」

　な、セリスさん、近っ！

「そ（・）れ（・）はこの領地だけでお願いします。他の場所には市長のそれにつけこむ、不埒な輩も多数おりますので」

　セリスさん？

「市長。河下りは当分諦めて街を発展させましょう」

　一瞬で霧散したけど……今の雰囲気は一体？

「ロカさんが手に入れてくれた魔獣の核もありますし、前回捧げた核も使っていません。やることは沢山ありますよ」

　まあ、本人があっさり引っ込めちゃってるし、今んとこ気にかけておく程度でいいのかな？

「わかりました、早速進めましょうか」

　まずは魔獣の核を捧げてと。あとはメニューを開いて、どうやら今回も魔獣転生は選べないみたいだな。

　さてどうするか……。うん、まずは当初の予定通りみんなの住む場所だよな。

「ロカさん、以前に話した簡単な小屋を作ろうかと思うのですが」

「わかったぞ。道具もあるし今から図面を引くから、ちょっと待ってほしいぞ」

「わかりました」

「それじゃあ親分、道具を借りるぞ」

「どうぞどうぞ」

「よいしょっと」

　……まじかぁ。まさかの製図机、しかも椅子が現実世界の高機能椅子みたいなやつだ。この狭い小屋がさらに窮屈に。

「あら、ロカちゃん早速作業を初めてたの？」

「今初めたところだぞ」

「アタシも何か作ろうかしら。そうねぇ、まずはご主人さまのお洋服かしら？」

「私ですか？」

「そうよぉ。こう言っちゃ申し訳ないけど、この中で一番か弱いご主人さまが、一番守備力の低い装備を身につけてるんですもの」

　そういえばレイドバトルの時も、初心者装備って呼ばれてたな。

「という訳でちょっと失礼するわね」

　鳳仙さん、目が比喩とかじゃなく本当に光ってるんですが。

「まずは上半身から……」

　しかもその目で凝視とか。

「ふむふむ、なるほど……」

「あの鳳仙さん？」

「ごめんなさいね、ご主人さま。今、ご主人さまに似合う装備を調べてるの」

　なるほど、あの目はなにかの特殊能力が発動中なのか。

　身長2メートルくらいの筋骨隆々のおっさんが光る目で凝視。見る人が見たら、殺される寸前に見えなくもないな。

「ちょっと怖いかもしれないけど我慢してね」

　うん。ソフィアさんの赤い目も怖かったが、鳳仙さんのもまた別な意味で怖いな。

「次は下半身ね……ふむふむ、あらあら」

　……聞く人が聞いたら、なんかちょっとあれな感じの発言だな、おい。

「うん、終わったわ。ご主人さまってばかなり変わった人だから、身に付けられる系統がかなり限られるわね」

　変わった人って……。変わってるのは種族やジョブであって、俺そのものじゃないはずなんだが。

「うーん、材料は色々とあるんだけど。やっぱり紅ちゃんの力も必要そうね」

　なにやら、もの作り勢がフル回転になりそうだ。

「では、私が紅さんを呼んできましょう」

「あら、ありがとうご主人さま」

「いえいえ」

　俺はあんまり役にたちそうにないからな。今回はこういった雑用メインだ。

「多分女神像に張り付いてるはずだから、よろしくね」

　張り付いてるって、虫じゃないんだから。

「それでは行ってきます」

　まあ、行くといってもドア開けてすぐなんどけどな。

　……うん、本当に虫みたいになってるね。美人が石像に張り付いてる姿って、なんというかシュールだな。深いスリットから丸出しの白い足に一ミリのエロさも感じない。

「紅さーん」

　……。

　あれ？聞こえてないのか？

「くれないさーん！」

　お、反応した。あれだな張り付いてる姿も虫みたいだったが、女神像に張り付いたまま動く姿は壁を這いまわるGみたいだな。

「呼んだか、我が主」

「鳳仙さんが相談したいことがあるそうです」

「ふむ、それで鳳仙は？」

「小屋の中にいますよ」

「わかった。ああそうだ、我が主」

　紅さん？なんで頬に朱がさしてるの？しかし、クール系美女のこういう表情って何とも妖艶な感じだな。

「なんでしょうか？」

「あの女神像は良いものだ」

　……。

　なんというかまあ、うん、妖艶さとかどっか吹っ飛んだね。コレクションを恍惚と眺めるおっさんにしか見えなくなってきたよ。

「一緒に小屋まで戻りましょうか。なんだか疲れてきたので、私も一休みします」

　色々疲れちゃったし、今日はもうログアウトだな。