第14話 戦場で市長は笑う

 おお、やってるやってる。大型ボスがいるのかと思ったが、骸骨の軍勢が相手みたいだ。

 広い平地に展開してると骸骨ばかりとは言え、なかなか壮観な眺めだな。あの馬にのってる紫色の大きめの骸骨が総指揮官かな?


 しかし、敵さんはえらく統率とれてるな。きちんと小隊編成されてて、状況に合わせて陣形も変わってるぞ。しかもちゃんとかけたところに後方から増援送られてくるし。

 ただ統率とれすぎてて機械的な感じだね、こういう大量のモブは簡単なプログラムなのかもな。


 対してプレイヤー側は……。


「おい、そこの連中、前にですぎだ! 囲まれるぞ!」


 指揮をとる人がいるっぽいけど。


「囲まれるといっているだろう! なっ! なぜばらばらに救援に向かう!? というか誰が救援の指示を出した? 個人で救援にむかっても相手の小隊のいいカモになるだけだろう!」


 言うこと聞くやつ少な過ぎだ。それにしてもあのプレイヤー側の指揮とる人、こんなに距離が離れてるのに声が聞こえるなんて大きい声だね。


「おい、だから個人で敵陣に突っ込むなと言っている!」


 プレイヤー側の方が単体の戦力は上みたいだけど……統率が取れた敵からの数の暴力には勝てないか。こりゃじり貧って感じの戦場だ。


 だが!


「な、おい」


 これだけバラバラなら俺にも参加する余地はありそうだ。


「そこの初期装備! どこにいく!」


「ちょっと独断専行に」


「そんな装備でなにができる!」


 なにもできないかもなぁ。でも折角のお祭りだし。


「記念くらいには」


「おい、ふざけるな!」


 なるほど……俺みたいな奴ばかりだから統率がとれないのか。指揮とってる人、お疲れ様です!


「おい! まっ!」


 さっきから見てる感じだと全体の統率とってるのはあの紫骸骨だが、それぞれの小隊はあの赤い骸骨がコントロールしてるっぽいからな。小隊長とかそんな感じなのかね? 

 小さいところからコツコツとってね。取りあえず、敵さんの小隊長ぽいのに当たってみるか。装備無しだし、すぐ死にそうだけどな!

 おおう、白い骸骨たちが立ちはだかってきやがった。そりゃ簡単に小隊長のところまではいかせてくれないか。


「カタカタカタッ」


「カタッカタッ」


 うお、なんか骸骨一般兵がカタカタいってるぞ。これ話してるのか?


「カッタカッタ」


 うおおお、なんか俺に骸骨たちが群がってきた。


「カッタカッタ」


 どうする、一匹づつ相手をするか?


「カッタカッタ」


 いや、違う。思い出せ俺! 

 あのありえない強さの魔獣達をかわし、ソフィアさんのもとにたどり着いた時のことを。ここは戦うんじゃなくてかわすんだ!


「カッタカッタ」


 右に行くと見せかけて左だあ!


「カッ」


 ……あれ?

 白骸骨の膝が折れた。もしかしてフェイントの動きに追いつけなくて膝が壊れたのか?


「カッタカッタ」


「カッタカッタ」


 次は二体か。これもフェイントで右左右!


「カッ」


「カッ」


 また膝が折れた!?白骸骨、脆すぎるだろ!

 だがこの程度なら俺の領地の魔獣に比べれば楽勝だ。あのありえない強さの魔物たち(住人含む)に殺されまくったのも無駄じゃなかってことだな。


「カッタカッタ」


「カッタカッタ」


「カッタカッタ」


 喰らえ、マルセイユルーレット!


「カッ」


「カッ」


「カッ」


 うん。これなら赤骸骨まですぐにたどり着けそうだ。

 あ、でも武器がないんだよな。赤骸骨もこれくらい脆ければ助かるんだが……。


 いや、違う!

 武器なんか飾りですよ!

 俺には(主に身内に殺されまくって)鍛えられた(つもりの)この肉体がある!いけるはずだ!


 いくぞ、小隊長ぽいヤツ。市長といえばマイク・○ガー!

 ドロップキックでも食らいやがれ!


 ……あれ?突き抜けた?

 しかもなんか結構な数の骸骨を巻き込んだような。


 ……結構どころじゃないな。小隊長含めて10体くらいバラバラになってるわ。

 うーん、白骸骨はフェイントで膝が折れてたし骸骨系は極端に脆いのか?それとも職業か種族にアンデット特効でもあるのかね? 


「カッタカッタカ!」


 赤骸骨倒したせいなのか知らないが、結構な数の骸骨たちがこっちを向き始めたぞ。

 まあいいや、サクサク倒せるなら問題ないだろ。回避重視から攻撃重視に変更だ!


「カッタカッタ」

「カッタカッタ」

「カッタカッタ」

「カッタカッタ」


 なんか大量に押し寄せきたが、だがお前らみたいな脆い連中がどれだけ束になろうと!


 続、市長といえばマ○ク・ハガー。

 くるくるダブルラリアットー!


「あははははははは」


 サクサクバラバラ。うま○棒でフリカケ作ってる気分だ!


「あははははははは」


 まずい。無駄に楽しくなってきた、これじゃあソフィアさんと一緒じゃないか。だが、なるほど……ソフィアさんはこんな気分だったのか。


「あはははははは」 


 お、紫骸骨。爽快感を楽しんでいるうちに、ボスのところまでたどり着いてしまった。

 しかしまたえらくデカイ斧と馬だね。きちんと馬まで骨なのか、凝ってるねぇ。


「キサマ」


 しゃべった!?骨しかないのに、どこから音だしてるんだ?


「ヨクモワガグンゼイヲ」


 あのサイズの斧を片手で振り回すのかよ、筋肉ないのにすごい力だな。


「コロス」


 んでも、遅い!遅すぎる!

 そのくらいの速度、ソフィアさんの拳と比べればなんと言うことはない!


「ナ」


 こうやって懐に飛び込んでっと。


「ク」


 襟首掴んで。


「ガ」


 続々、市長と言えばマイ○・ハガー!

 ヘッドバット、どーん!


 おっとっと。相手が脆すぎて突き抜けちまったよ。

 それにしてもボスっぽいやつでも見た目だけで、ほかのやつらとおんなじサクサクバラバラか。あっさり過ぎるだろ。


 まあいいや。それよりもさっきのあの斧落ちてないかなぁ……落ちてないかぁ。あるのはばらばらの紫の骨のだけ。

 あれ?そういや、他の骸骨も残骸は残ったけど、なにも落としてないよな。レイドバトルだとアイテムドロップはないのかな?ちょっと残念。


「敵が撤退する! 追撃するのは構わんが深追いするなよ!」


 お?骸骨達が脇目もふらず撤退し始めたな。後ろから追撃されてもおかまいなし、しかも一定ラインに立つと骸骨が消えていく、こういうところはゲームぽいな。

 敵の追加もないみたいだし、どうやらこのエリアはどうやら終わりみたいだな。

 

 さて次はどうするかね、せっかくだしほかの戦場ものぞいてみようか。西はちょっと遠いし北か南か、さてどうするかな。

 うーん、そういや骸骨たちは北の方に逃げて行ったよな。

 よし、なら、次は北のエリアの敵でも見に行ってみるか。

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