第9話 男の友情

 なんとかログアウトできたか。なかなか刺激的なVRMMO初体験だった。

 初見殺しとか、そんな次元じゃなかったからな。これが死んで覚える死にゲーってやつなのか。画面でやる分にはいいが、仮想体験だと地獄でしかないな。


 まあ、いいや。その辺も含めて、丸田に聞いてみるかね、携帯、携帯っと。あったあった。


 うお、なんだこりゃ。


 着信18件て、しかも全部丸田。ちょっと引くわ!

 取りあえずリダイヤルを。


『十四郎か!』


 はや!

 今コールする前に出たよな?あいつ携帯の前に張り付いてたのかよ。


『十四郎か!!』


「そうだよ、電話にでられなくて済まなかったな。今までガロンディアにいたから、電話が聞こえなかったんだよ」


『はあ? お前何言ってんだよ?』


 何言ってるって言われてもな。


『なんで携帯とガロンディアを、リンクさせてないんだよ』


「リンク? なんのことだ?」


『は? そんなことも知らないのかよ』


 そんなこともこんなこともあるか。ほぼなんにも知らねーよ。


「知らない。というか起動関係以外ほぼわからん」


『起動関係って、電源いれるだけじゃねーか』


「そうだな。あとは目をつぶるだけで簡単に起動した」


『お前もしかして、事前情報なにも集めないで始めたのか?』


 なんで始める前のゲームの情報を集めるんだよ。ネタバレとかされてつまんないだろうが。


「事前情報? そんなものしらん」


『はあ。まあ、そういういやつもいるか。ある意味ガチンコで未知の世界を楽しめるからな』


「おう、ガチンコで楽しみ過ぎて何回も死に戻りしたぞ」


『楽しんでくれているようで、何よりだよ』


 っと、色々と聞いてみないと。訳わからんことが多すぎるからな。


「なあ、丸田。教えてほしいんだが」


『なんで調べないのに俺には聞くんだよ』


「それとこれとは別なんだよ。攻略中のゲームでも、仲間内でワイワイ情報交換するのは楽しいだろ?」


 気軽に文句が言い合える間で、間違いながらやるのが楽しいだろ?

 調べちゃうと、知らない誰かの正解をトレースしてるみたいで嫌なんだよ。


『訳のわからんこだわりだな。ただ言ってることはわからんでもない』


「だろ? それでな色々教えてほしいんだが」


『わかる範囲なら答えてやるよ』


「助かる。それでな、あのメニューボードやアイテム欄ってのは、なんで他人からも丸見えなんだ?」


『お前、外部にオープンのままやってたのかよ』


「なにかやり方があるのか?」


『簡単だよ。メニューの設定項目から色々と調整できるようになってるんだよ』


「なるほど。次にINした時に試してみる」


 設定項目か。確かに普通に考えたら、その辺を色々と試すよな。最初からアレすぎてて、考える余裕もなかったからな。


「次はスタート地点のことなんだが、俺以外プレイヤーが誰もいないんだが」


『は? どういうことだ?』


「言葉の通りだ。俺と仲間のNPCしかいないんだが」


『……』


「丸田?」


『十四郎。もしかして名前入力の時に、何度かやり直しくらわなかったか?』


「くらった。なんどやっても駄目で、ランダムに当て字をつけてもらった」


 あれは初っぱなから、めんどくさかった。というか名前かぶりが駄目とか、あり得ないよな。


『キャラクターの初期設定で、訳のわからん文字の文書を出されたか?』


「出された。全くわからんから適当に答えた」


 あれはキャラクターの初期設定だったのか。あれじゃあ何を設定してるのかさっぱりわからん。


『最後だ。お前のジョブは?』


「市長だ。ちなみに種族も市長だ」


『なるほどな。十四郎、お前ある意味で当たりを引いたな』


 当たり?どういうことだ?


『ごく稀に、お前みたいに特殊なジョブや種族が割り当てられるやつがいるらしい』


「らしいということは、確定じゃないのか?」


『数が少なすぎてな。俺が知っているのも十四郎含めて三例だけだ』


 確かに少ないな。


『その二人もスタートの時が十四郎と同じような条件だったようだし、スタート場所も通常のスタート場所じゃなかったらしい』


「確かに俺と一緒だな」


『ちなみにその二人のジョブは旅人と家庭教師だ』


「ハーモニカ吹いてるのか?」


『しらん、旅人は会ったことがない。家庭教師の方は話したことがあるが、城のお姫様付きだそうだ』


「なるほど」


 家庭教師はまだ普通そうなスタートだな。


『それで十四郎、その市長ってのはやっぱり街を作るのか?」


「ああ」


『MMORPGなのにシ○シティみたいな感じだな?』


「いや、秘書付きだったりするが、どちらかというとア○トレイザーだな」


『またそんなレトロなゲームを』


「通じてるから問題ないだろ」


『それもそうだな。それにしてもアクト○イザーか。ダンジョンなんかをクリアして領地解放と魔獣倒して住人増やす感じか』


「最初から狭いが領地はある。半径50mの領地と小屋だけだけどな」


『ならこれから色々出てくる可能性もあるってことか』


 フィールドの雑魚ですらあの強さなのにか?ダンジョンとか本当に無理ゲーだろ。


『どうした?』


「いや、フィールドの雑魚ですらあり得ない強さなのに、ダンジョンとか気が重くなってな」


『旅人の人もそんな感じらしいぞ』


 旅人は俺と境遇が似ているのか。旅人の人、何時かあってみたいな、会ってこの理不尽を愚痴りたい。


『十四郎、それでも楽しんではいるんだろ?』


「ああ。楽しんではいるな」


『楽しいうちは適当に愚痴だけ言ってればいいさ』


 確かに愚痴は言いたいが辞めたいってのは無いな。


「そんなもんか」


『そんなもんだろ』


 なんだかわからんが流石は丸田だ。こういうところで頼れるのは変わらないな。


「丸田、ありがとうな」


『いきなりなんだよ、気持ち悪い』


「それもそうだな」


『まあいい、感謝してるってんなら、さっさと紹介特典登録しろよ』


「わかったよ」


『それじゃ、この辺でな』


「ああ、またな」


 あ、携帯のリンク方法聞き忘れた。まあ、また今度でいいか。

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