第5話 ネーミングセンス
「白千狼とはまた、大物を仕留めたようですね市長」
「そうなんですか?」
「そうですよ。白千狼は存在自体も伝説とされ、その強さは神をも凌ぐとまで言われています」
ユニークモンスターとかネームドモンスターて感じか?
「正直、一国の軍隊でも全く歯が立たない存在です。市長、一体どのようにして彼女を?」
「それは企業秘密ということで」
まさかスプーンぶつけて倒しましたとは言えないよな。
「そうですか。まあ、いいでしょう。頼もしい味方が増える分には何の問題もありません」
「御屋形様、拙者に名前を」
「名前?」
「市長、魔獣転生で生まれた住人たちは名前がありません。したがって市長が名付けることになります」
そうなのか。
名前、名前、名前かぁ。あまり得意じゃないんだよなぁ、しかも直近でいい思い出もない。
いやいや、彼女にそれは関係ない。考えろ、考えるんだ俺!何かヒントは……。
「彼女に魔獣の時の記憶はないのですか?」
「さあ? 私は魔獣ではありませんので」
まあそうだよな。なら本人に聞いてみるか。
「えーと白千狼の化身さん」
「何でござるか、御屋形様」
「教えていただきたいのですが、白千狼の化身さんは魔獣だった時の記憶はお持ちですか?」
「あるでござるよ」
良かった。なら名前とかも憶えているかも。
「ちなみにその時は何という名前だったのですか?」
「白千狼でござる」
駄目か……。
だが、これたとえば同じ種類の魔獣だったらどうなるんだ? 〇〇Aとかになるのか?
「御屋形様、拙者に名前を」
っとそれどころじゃなかった、まずは彼女に名前を。名前、名前……よし、白いからな。
これだ!
「白!」
「御屋形様、拙者に名前を!」
え?
無視?駄目な奴は無視なの?
なかなか難易度が高いな。白が駄目か……。
ならこれだ!
「千!」
「御屋形様、拙者に名前を!」
くそ!これも駄目か。
「市長、センスゼロですね」
セリスさんひどいな。だがここでくじけてる場合じゃない!
狼、狼か……狼と言えばこれだ!
「ロボ!」
「御屋形様、拙者に名前を!」
これも駄目か。有名な狼なのに!
「それオスの狼ですよね?」
「セリスさん、良く知ってるね」
えーと、名前、名前、名前。
難しいな、これ。うーん……狼、賢い、知恵……。
「ソフィア」
「うむ、良い名だ! 我が名はソフィア。御屋形様、今後ともよろしくでござる!」
よかった。やっと納得してもらえたよ。
「どういう意味ですか?」
「たしかギリシャ語で知恵とか賢いって意味だったはず」
「ロボから離れられなかったのですね」
「私の中での狼全般のイメージが賢いって感じですから」
狼=賢さの象徴みたいなイメージがあるんだよね。
「そうですか」
「なんにしても、彼女が喜んでくれているようですし」
「それでは新しい住民も増えたことですし、市長、彼女の能力を確認してみましょう」
「そんなことができるんですか?」
「ええ、宝玉にふれて、住民リストから確認できますよ」
なるほど。宝玉に触れて。お、でたでた。
ソフィアさんと……セリスさんも載ってるな。
でもセリスさんの名前が灰色だ。
「プライベートですので」
え?
そういうもんなの? ソフィアさんは普通に選べるよ。
「でもソフィアさんは?」
「さあ?」
「さあ? って」
「とにかく彼女の能力を確認してみましょう」
「いや、「彼女の能力を確認してみましょう」」
えーと、このパターンは何を言っても無駄な奴だな。
「わかりました」
ソフィアさんを選択してっと。
名前:ソフィア
性別:女
種族:白千狼
ジョブ:街の住人(破壊の化神)
……。
いやいやいや。
「きちんと住人登録されているようですね」
「いや、セリスさん」
「それでは街づくりを進めることにしましょう」
「いや、ちょっと、これ大丈夫なんですか?」
「何がですか?」
「ソフィアさんのジョブですよ」
「? 街の住人がですか?」
セリスさんには見えていないのか?
いや見えない方がいいのかな?
「まあ、少しぐらい特殊な能力があっても大丈夫ですよ、たぶん」
「見えてるんじゃないですか! 少しぐらいじゃないですよね、これ」
「私だって、こんな大物住人が増えるなんて思ってないですよ!」
「やっぱり見えてるじゃないですか!」
「見えてますよ! 見えたところでどうにもならないので、適当に流そうと努力しただけですよ!」
「流さないでくださいよ!」
「とにかく魔獣転生後の住民がこちらに牙をむくことは、基本的にはありませんので多分大丈夫なはずです」
セリスさん。基本的にはとか多分とか不安をあおるワードが多発してるんですが。
「とにかく市長、引き続き街づくりを頑張りましょう! 彼女のこともおまかせします!」
「御屋形様。拙者、頑張るでござる!」
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