第4話 魔獣転生

 わけわからん倒し方ではあったが、とりあえず魔獣を倒せた。


 そしてこの辺はゲームらしいな。倒した魔獣の死体は残らず、牙やら毛皮やらドロップ品らしきものだけが残ってる。

 この辺はリアルじゃなくて助かるな。魔獣の解体とか、流石にやりたくない。


 さて、目的の魔獣の核ってのはどれだ?

 なんだか知らんが色々落ちててよくわからん。全部ドロップ品だろうから持って帰って、あとで確認だな。


 それにしても、どう考えてもかなりの強敵を倒したはずなんだが。

 なにかこうファンファーレみたいなのも聞こえたりはないのか?レベルアップ!みたいなさ。


 とりあえずメニューからステータスを確認してみるか。


 ……。

 ないな。


 名前:ⅩⅣ狼

 性別:男

 種族:市長

 ジョブ:市長


 以外のステータスが何もない。どういうことだ?

 っと今は考えてる場合じゃないな。一戦終わって直ぐにまた次とか、ほんとに容赦ないゲームだな。




「おかえりなさいませ、市長」


 うん、まあこうなるよね。もうスプーンもなかったし。

 そしてドロップ品の確認する時間もなかった。


 だがしかし、今回はいつもと違う。


「セリスさん、魔獣の核を入手しましたよ! たぶん」


「おめでとうございます、早速宝玉にささげましょう」


 お、セリスさんもちょっと嬉しそうだ。


「そうですね。ただ少々、待っていただけますか?」


「?」


「いろいろドロップ品があって、すべてアイテム欄に放り込んだのですが。どれが魔獣の核かわからないのです」


「なるほど。それでは時間ももったいないですし、市長のアイテム欄を開いてください、私が確認します」


「お願いします」


 ぬお、そんないきなり体を寄せてくるのか!?

 ……花の香?

 このゲーム、本当にすごいな。香りまで再現できるのか。


「市長、どうかされましたか?」


「いえ、それよりも魔獣の核はありましたか?」


 ああいう然り気無い色気は卑怯だな、若干ドキドキしてしまった。


「この白い色の石がそうです」


「これか」


 さて、気を取り直してっと。


「ですが市長、この魔獣の核、少し珍しい物かもしれません」


「これ珍しいものなのですか?」


「そうですね。魔獣の核は普通は黒なのですが、純度が高くなるといろいろな色に変わるのです」


「なるほど」


「その中でも白という色はほぼ聞いたことがありません」


 いわゆるレアアイテムってことなのかな?


「もしかしたら倒した相手によって色が変わるのでしょうか?」


 白い魔獣だったしな。


「そういうわけでもないようですが。詳しいことはよくわかっておりません」


 違うのか。でもレアものっぽいなら、とりあえずキープした方がいいのかな?


「それでは早速、宝玉にささげてみましょう」


「あの、珍しい物なら保管しておくとかは……」


「宝玉にささげてみましょう」


「レアものっぽいですし、もった「宝玉にささげてみましょう」」


「え、あの「宝玉にささげてみましょう」」


 ……。


「宝玉にささげてみましょう」


 うん、無理だな。あきらめよう。


「わかりました。それで魔獣の核をささげるには、どうすればいいのですか?」


「宝玉に触れていただくとアイテム欄が開きますので、ささげるアイテムを選んでください」


 宝玉に触れるっと。冷たくてツルツルとした何とも言えないさわり心地だ。

 お、アイテム欄が開いた。さっきの魔獣の核を選んで……おお、宝玉に吸い込まれた。


 ?

 特に何も起きないな。


「あのセリスさん、なにも起きないのですが」


「特に何かが光ったりというわけではありませんから。市長、宝玉を軽く二回ノックしてください」


 二回ノックね……しかし二回ノックが好きなゲームだな。

 お、メニューが出てきた。


「今の魔獣の核を取り込んでたまったエネルギーで、宝玉ができることが表示されるかと思います」


「お、なんか色々出てきた」


「選んだ項目の横に説明が出るかと思いますので、お好きなものを選んでみてください」


 ふむふむ。


 領地拡大:領地を拡大する

 素材生成:様々な素材を生成する。

 建材生成:街づくりにかかわる様々な建材を生成する。

 魔獣転生:とりこんだ魔獣の核を元に魔獣を街の住民に転生させる。


 素材や建材があってもなあ。俺自身が何をどうしていいかわからないし。となると選択肢は一つ、魔獣転生だな。


「市長、お決まりになられましたか?」


「はい」


「では決まった項目を選んでください」


 魔獣転生っと。


 ん?宝玉が?

 うお、まぶし!?


 取り込むときはおとなしいのに、発動するときは派手なのね。


 宝玉の前に人?あれが新しい住民か。

 白い耳に白い尻尾、それに……。


「市長、女性をまじまじと見るのは失礼にあたりますよ」


「申し訳ありません」


 男の性というのは言い訳ですよねぇ。ですがそのドン!バン!というのには目が行ってしまうのです。


「ふむ、あなたが御屋形様でござるか?」


「そうなるのかと思います」


「そうであったか。拙者は白千狼の化身、今後ともよろしくお願いするでござる」


 ケモ耳ふわふわ尻尾、ドン、きゅ、バンな美女が仲間になりました!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る