「贋作士の瞳と真実」 (SF)

「贋作士の瞳と真実」


 この作品が動き出した瞬間は地元の図書館でとある本を見た時です。図書館の企画で、芸術の秋、みたいな感じで美術が関係する本が平台に置かれていて、その中の一冊に「私はフェルメール」というものがありました。冒頭を読んで、贋作を描いた画家の話かな、と思った時、SFと組み合わせられそうだな、と直感的に思いついたのです。

 僕の中の美術の知識はまったくなく、あるとしてもマンガ「ギャラリーフェイク」くらいなもので、それっぽい感じで描写しましたが、おそらくリアリティーはないのでは。それでもSFという一点で突破したい、というのが、作者の願望です。

 最後の場面は最初は定まっていなかったシーンです。そもそもこの短編は、「機械的に美術品を理解して、それを完璧に人間の手で再現できたら?」という思考が重要と感じていて、そこから贋作を作る画家の視覚に関するアイディアがあり、そのアイディアから最後の場面にたどり着きました。

 ちなみにNHKでレオナルド・ダヴィンチの特番が放送された時には、すでに書き上がっていて、もしテレビ番組が先だったら、また違ったかな、と思います。

 ただ、SF的な世界観、至近未来を想定すると、美術品の真贋を判定する手法も発展しているわけで、贋作そのものが成立しない、という落とし穴は想定外でした。

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