自由研究は彼らにとって地球人から伝播された、最初で最大の発明品となった。


 未知の問題に対して瞬時に独力で解決する訓練、間違って伝播している気がするが、それでも大きな前進だ。


 自分たちでは気が付けなかった思わぬ弱点に、だったら実際にやってみようとなるのは必然だろう。


 対象はまだ多くを知らない子供と決まった。


 だけども彼らには難しすぎた。


 そもそも未知の問題自体を彼らは想像できないのだ。


 わからないものはまだ習ってないか調べてないだけで、わからないままこうだと予測することもない。だから予測させる状況もピンとこないのだ。


 だから全部任された。


 なので問題を作る。


 そのためにこちらをと、シミュレーション室を借りることができた。


 内容は完全にバーチャルリアリティな世界、だがこれは現実世界で、次元を弄って色々できる技術らしい。


 理解はできなかったが利用はできた。


 自在にリアルな世界を作れるようになって、思いついたのはサバイバルゲームだった。


 生き残る。単純でわかりやすく、複合的な問題のある命題、ぴったりだろう。


 設定としては、地球に赴いたが事故により島に飛ばされた。救助は来るが順番があり、できるだけ長く我慢できればそれだけ他が助かる、とした。


 行動を制限するため、ベースは島にした。


 小さな公園ほどの陸地、崖はなく、平坦で単純で面白みはない。


 その上に岩を作り、木々を生やし、そこに木の実を生らす。波打ち際には流木なんかを置いた。


 気温、天候、昼と夜、世界のパラメーターを設定して、最後に生徒が持ち込めるアイテムを決める。


 服は通常のを、それとは別に毛布、ナイフに、一食分の携帯食と水、それと植物や海水について書かれた冊子、最後にギブアップ用のベルをまとめてカバンに詰めた。


 当然、大人が監視してる中で、子供たちがどれほど長い時間、一人で、健康を維持できるかを見、最後に総評と反省会を行い、次につなげる。


 正解や競争はないが優劣は決まる。


 これでこちらの次につながればいいがと、大人による最終テストを行った上、そいつが余計なことを放さないうちに一斉に自由研究が行われた。


 ……多くが、携帯食を食べ終わったらギブアップした。


 海水飲んで中止になったのもいた。


 寒さを理解できずに中止も多かった。


 夜がきて、木の実を食べたのは少数、焚火を作って暖をとるものは一人もいなかったが、流木に毛布でテントを建てるものはいた。


 そして夜明けごろ、死者が出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る