彼らの食生活は草食を徹底していた。


 食するのは熟れて落ちた果実、落ち葉、枯れ枝といった、植物側が落としたものだけに限定されている。


 料理もあるにはあるらしいが、植物側も優しく、そのままでも食べやすい状態で落とすため、保存食以外はさほど発達していないようだった。


 また、当然の流れで彼らは農耕民族なのだが、伐採や除草とような植物を傷つけたりはせず、害虫もいないから農薬もなく、ただ土壌改良と気候捜査のみを行っていおり、品種改良の話題で震え出した。


 ここら辺は生物学、気候やら地質やらの情報もろともまとめて地球に送ってあっちに任せるべきなのだろう。


 それで、彼らが言うには、これらの食料は栄養だけ見れば地球人でも食べることはできるらしい。


 だが、アレルギーをはじめ、健康上何が起こるかわからないため、何よりまずそうだったので、遠慮させてもらった。


 そのお返しに、彼らの見てる前で持ち込んだ宇宙食以外の食材を広げる。


 彼らをマネして果実中心だ。ただそれでは栄養が偏るため豆や穀物を、栄養不足で助からないものを頂いてきたと嘘ついて持ち込んである。


 なので料理は必然的に和食、今日の献立はバッテリー炊飯器で炊いたご飯に納豆だった。ただしからしはあの刺激が害虫避けの成分なためなしの、質素などんぶり飯だった。


 そんな食事を興味深く見守る彼ら、米粒や納豆粒にどこから出してるのかビームを当てて何かやら調べてる。


 そして一斉に俺を見た。


「それを食べないでください!」


「え?」


 彼らから初めて聞く強い言葉に箸が止まる。


 その隙に左右から、これまで見せたこと無いような速度で箸とどんぶりをかっさらう。


「落ち着いて聞いてください」


 一呼吸おいて、彼は言った。


「あなた方が食べているそれは、菌が、目に見えないほど沢山の生き物が住んでいたのです」


 ……知ってる。


 納豆菌、発酵食品、それが納豆だ。


 だが彼らは、それさえも、だめらしい。徹底した草食だ。


「大丈夫、あなたは悪くない。ただあなた方が無知で、物をわかってないだけなのです」


 酷い言われようの慰めの言葉、蚊に続いて新たな葬儀が始まった。


 ……それから、食べそこなった納豆菌たちはどんぶりと箸共々、彼らの保護区で大切に育てて行ってくれることとなった。


 それと、彼らから煮豆が納豆になるビームが出る光線銃を、プレゼントしてくれた。

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