第37話 朝市デート?

 早朝、イリスに叩き起こされた!


「ん~~…………なんだ?」

「おはようございますルーク様! さっ、お約束どおり、朝の散歩にまいりましょう!」


 朝からめっちゃ元気だ……。


「今、何時?」

「5時半です。今から準備をしていたら、丁度お約束時間の6時になりますね」


 5時半! 嘘だろ~。


「いやイリス……今日は試験休みで授業はないんだからこんなに早く起きる必要ないだろ?」


『♪ マスターおはようございます。イリスは4時半には起きて、朝食の下準備を先にしてからマスターを起こしたのです。散歩に行く気満々なので起きてあげたらどうですか』


『妖精さんおはよう。そうなんだ。でも、いくらなんでも4時半起きはイリスの負担が大きすぎる』

『♪ そうでもないですよ。この世界では明かりに生活魔法の【ライト】が付与された照明の魔道具を使っています。魔道具は高額なため、中には買えない者もいるのです。地方へ行くほど早寝早起きが基本ですね。早く寝ているので、睡眠時間としては十分足りているのです』


 日の出とともに起き、日が暮れてからは早めに寝るのだそうだ。

 かつて日本もそうだったね―――


「そ、そうですか。では、今日は何時に起きる予定だったのです?」

「午前中に神殿に行ければいいかなって思っていたけど、他に予定はないので特に考えていなかった」


「じゃあ、もう少し眠られますか?」


 そんな残念そうな顔をされたら……。


「いや、もう目が覚めたので起きるよ。どうせなら朝食を済ませて、そのまま神殿に向かおうか?」


「神殿に行くには少し早いですね。そうだ! 朝市とかご覧になりませんか?」

「朝市? それ良いね!」


 朝市とか楽しそうだ!

 二人で朝食を食べ、散歩がてら朝市を見に出かけた。


「へ~、中央通りの裏側の道には露店が並ぶんだ」

「はい。ここは店舗を構えられない商人たちが頑張っている場所ですね。なので若干質が落ちる品も多いですが、その分安く手に入れることができます。ほら、あの果物とか、メイン通りで売っている品より3割ほど安いですよ」


「品が悪いのだったら安いのも当然だ」

「悪いといっても、形がちょっと悪かったり、収穫の際に少し傷つけてしまったもので、味自体は全く同じなんですよ」


 スーパーで売ってるB級品ってやつか……。


「イリス、俺は味が同じならこっちの品で良いぞ」

「そうですか? でも、一応王子様なので正規品を購入しますね」


「一応……」

「あ! 失礼いたしました! ち、違うのです! そういう馬鹿にしたようなつもりで言ったのではなくてですね!」


「あはは、分かってるよ」

「ルーク様が私に対しての口調がとてもお優しく庶民的なので、つい普通に喋ってしまいます……」


 そりゃそうだろ。だってルーク君はともかく、俺自体はめっちゃ庶民だもん。

 兄様の前では記憶頼りに振舞っていたけど、今はそんな堅苦しく過ごしたくないしね。


「イリスだって伯爵令嬢なのに、時々庶民ぽくなってるよ。わたくしと言ったりわたしと言ったり」

「伯爵といっても、地方の開拓村の領主ですので、領民の7割が農民なのです。学園では地方貴族、農民貴族って馬鹿にする者もいたぐらいです」


「そういう輩は放っておけばいいさ。そういう者たちは、大国の王子の俺であっても、どうせ陰で馬鹿にするような奴らだよ」


「そうですね……」


「あ、なんか良い匂いがする。串焼きかな?」

「あそこですね。オークの塩焼きみたいです。でもダメですよ!」


 う~~~、ダイエット中とはいえ、異世界料理には興味あるんだよ!


「分かってるよ……」

「仕方がないですね……じゃあ、1本だけですよ。食べた分、沢山散歩しましょうね?」


『♪ イリスはなんだかんだで甘そうですね……ちょっと心配です。自分だけ買って見せびらかしつつ食べるくらい、マスターには厳しくしてほしいのに』


『それ、もう虐めだよ! 妖精さんは日に日に口が悪くなるね。AI機能で変な学習してないか?』


『♪ 変な学習って何ですか?』




「お! これは美味しい♪」

「塩胡椒で焼いただけのものなのに……お酒に浸け込んだのかな? 臭みのない柔らかいお肉で美味しいですね」


「お、姉ちゃん正解だ! 一晩ハーブ入りの酒で浸け込んで一手間加えているんだ。臭みもなく旨いだろ?」


「ええ、美味しいですわ」


 その後も色々見て回った。朝市には昨日見かけなかった牛乳が売っていた。


「またそんなに沢山買って……それに牛乳や卵は食あたりする可能性もある危険なものなのですよ?」


「勿論知っているよ。でもほら、俺には優秀な鑑定魔法があるからね」

「病気だけではなく、そういうのも判別できるのですか? 凄いです」


 卵も新鮮なものがあったので沢山買っている。

 俺には鑑定魔法があるので、良い品を見つけるとつい買ってしまうのだ。


「結構栄えていて、いろんな露店が出ているね?」

「王都ですので栄えていて当然です。この中には午前中で店を引きあげる者も多いのですよ。午後になるとまた違った品が見れます。午後からは雑貨が多く並びますね。日曜日だと神殿前の大通りに日曜市が開かれ、そこも賑わっていて楽しいです」


「日曜市か……」

「日曜市は古美術品や武器、ダンジョン産の魔道具なんかもあって怪しい品も多く並んでいますね。中には掘り出し物もあるようですけど、変なものは買わない方が良いです」


「それも心配ないかな……」

「あ、それも判定できるのですね? 凄く便利なスキルです!」



 気づけば結構な時間が過ぎていた―――


「なんかデートみたいですね?」


 またこの娘は爆弾発言を!


「そうだね……。案内ありがとう。楽しかったよ」


 にっこり笑ったイリスの笑顔に、ドキッとしてしまった。

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 あれ? 神殿……ごめんなさい。区切りが良かったので2話に分けましたw

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