第14話 助けた相手は隣国のお姫様だったようです

 初級魔法が使えるならルーク君は有能だ。

 武術は使えるレベルではないが、魔術はいろいろ習得していた。


 上空から怪我を負っている騎士に初級回復魔法の【アクアヒール】を掛けてあげる。


 盗賊たちの魔法使いは俺たち兄弟が真っ先に殺したので、ヒーラーを無くした盗賊は回復剤をがぶ飲みしながら戦っている。俺は数名に囲まれて苦戦している騎士を優先的に支援して、騎士の背後に回ろうとする盗賊に矢を放ちながら騎士を回復していく。


 まだレベルが低いのですぐに魔力が枯渇してくるが、魔力回復剤を飲みながら上空から状況をしっかり見極める。上からだと皆の動きが手に取るように分かるのだ。


 1人特別強い奴がいるなぁ……。

 何度か矢を放つが、騎士と戦いながら矢もしっかり剣で弾き返している。


 うん? おかしい……何だこの違和感……この強い奴は馬車の入り口を守っている女騎士にも何度かナイフを投げて攻撃をしたのだ。こいつは危険な感じがする……。


 矢を2本つがえ、そいつめがけて急降下する。


 気付いたそいつは、俺に向かって何か投げつけようとしたが、先に俺の初級魔法の【サンダースピア】が発動する! 流石に【無詠唱】での雷は躱せないだろう! そして電撃で筋硬縮中に矢を2本同時撃ち! おまけのドレイクのカマイタチブレス!


 ヤツは瀕死だが、あれだけ喰らったのにまだ息があるようだ。俺はバルスから飛び降り、そいつに俺が付けていた【魔封じの枷】を付けてから縄で拘束した。暗器とか持っていそうだったので、剣で服を引き裂いて素っ裸にして地面に転がしておく。


 思ったとおり服の中から沢山投げナイフや投げ針などが出てきた。


 すぐ死にそうなほど出血していたので、初級回復剤を無理やり少しだけ飲ませておいた。

 殺すつもりで攻撃したが、生き残ったのなら聞きたいことがあるので、死なない程度に回復して生かしておこうと思ったのだ。


 再度バルスに乗って上空に舞い上がり、劣勢な騎士の加勢に回る。



 *  *  *



 あれから15分、既に戦況は終わりかけている……。

 盗賊たちの回復剤は尽き、こっちは俺が騎士に回復剤を配り、魔法でも回復を掛けて回っているのだからどんどんこちらが有利になっていく。


 逃げ出した奴は優先的に俺が上空から弓で射抜くので逃げることもできない。

 間もなく盗賊の生き残り全員が剣を投げ捨て投降した。

 生き残りを拘束し、武装解除しておく。


 40名いた盗賊の生き残りは僅か7名……投降しても捕まれば死罪確定だし、俺が上空から逃げだした者を真っ先に攻撃するので逃げ出すこともできず最後まで抗った結果がこれだ。


 一方俺たちが参入してから騎士の方は誰1人死者は出ていない。兄様が特攻して魔法職を排除してくれたおかげだね。


 騎士の生き残りは女性3人に男性4人だ……残念ながら俺たちの加勢前に3名の正騎士が亡くなられた。




「兄様……お怪我は?」

「何度か切られたが、お前のおかげで回復しているので問題ない……ルーク、お前はやはり凄いな……なのにどうしてバカなフリなんか……」


 兄様は幼い頃のルーク君の事を知っているから高く買ってくれているが、ルーク君はバカなフリなんかしていない……。頭は良いのに、やる気をなくして何もしないから本当に無知なのだ。


 馬鹿と無知は似ているようで違う。


 ルーク君はやる気を出して勉強さえすればできる子なのだ。どんなに頭が良くても、学ばなければ無知なのでバカと一緒だ。


「兄様、どうやら僕は騎士に向かないようです……人を殺めた事で手足がガクブルで立っているのもきつい状態です……吐き気や動悸もして今にも倒れそうです……」


「そうか……でも安心しろ……それが普通なんだ。俺もそうお前と変わらない……見ろ」


 見たら兄様も小刻みに手足が震えていた……初めて人を殺めて平気なわけがないのだ。


 俺と同じ感性をしていて良かった……盗賊が相手ならと、笑いながら狩りをするように人の命を平気で摘み取るような感覚だと、平和な日本で育った俺には、相手が兄でも心情的に耐えられないだろう。




「竜騎士殿、御助勢感謝いたします! おかげで命拾い致しました!」


 隊長っぽい人が俺に声を掛けてきたが、俺は竜騎士じゃないんだよね……今回も兄様に丸投げしよう。


 兄様に視線を送ると頷いてくれた。


「私はヴォルグ王国の第一王子、ジェイル・A・ヴォルグです。こっちは弟のルーク」

「ヴォルグ王家三男のルークです」


 兄様、第一王子なのに偉ぶるわけでもなく敬語なんだね。


 大国の王子と知り、一斉に近くにいた騎士たちが片膝をつき最敬礼の姿勢を取る。



「弟の婿入りの護送中でしたが、上空より戦闘が見えたので加勢に入りました。馬車にフォレル王家の家章が入っているようですが、この隊の主はどなた様なのでしょう?」


 馬車の中から従者に手を引かれ、美しい少女が降りてきた。


「ジェイル様、ルーク様、御助勢感謝いたします。わたくしはフォレル王国第二王女、ミーファ・A・フォレルと申します」


 あれ? 兄様が彼女を見て固まった……嘘~~! まさか一目惚れ!

 あちこちから婚約話がきているのに頑として首を縦に振らなかった兄様が!? これは事件です!


 でも、姫ならうちに嫁がせても問題ないぞ……案外良い縁談になるのじゃないか?

 しかし見たことない姫様だ? 隣国はヴォルグ王国の王族が建国した属国なので、祭事の際に招待して王子、王女の顔ぐらいは見かけた事がある筈なのだが……まぁ、ルーク君は問題児だったので、そのような社交の場にあまり呼ばれた事はないですけどね。


 このお姫様、めっちゃ可愛くて気品がある。俺も凄く好みだけど、兄様はこういう感じの娘が好きなのか。

 身長160cm、体重45kgほどかな? 髪はシルバーの銀髪で、サラサラのストレートヘアーを腰まで伸ばしている。俺のシルバーブルーの髪より白い、彼女も主属性は聖属性なのかな? 後ろに付けてる大きなブルーのリボンが印象的だ。


 目はリボンと同じ綺麗なブルーアイでとっても澄んだ目をしている。

 そして、何より目につくのが胸だ……細身なのに凄いお胸をお持ちなのだ! 正直Cカップ以上は判別できないが、FとかGカップとかの次元だと思う。



「兄様? ひょっとしてこのお姫様に一目惚れ?」

「な、な、何を言っている!」


 兄様が珍しく挙動不審だ! こりゃマジで惚れたな……。



 その時、姫の手を引いてきた女の子が急に倒れた……この人、さっき馬車の入り口を守っていて投げナイフを受けた人だ。おかしいな……回復したはずだが?


 急いで彼女の容態を診る。


 発汗に荒い呼吸……まさか毒?


「急ぎ傷口が見たい!」


 俺の発言に騎士たちは戸惑っているが、兄様がフォローを入れてくれる。


「弟は水系と聖属性の回復魔法が使える優秀なヒーラーです。信じて任せてください」


「男性陣はご遠慮ください。どなたか補助をお願いします」



 男性騎士を遠ざけ、女騎士に手伝ってもらってプレートメイルを外し、ナイフが刺さって穴が開いている左鎖骨下辺りの上着をナイフで大きく破いて傷口を露わにする。形の良い可愛いおっぱいも見えちゃったが、ここはスケベ心は抑えるところだ……。


 刃傷口は塞がって痕すらないのに、皮膚の内部が紫色に変色している……触れるとグジュッと皮膚が裂けて出血した。実にヤバそうな感じだ。


「なっ、何ですのこれは!?」


 補助してくれている女騎士が、紫色に変わった肌を見て驚愕している。



『♪ マスター、毒のようです。他にもアサシンに切られた者が毒を受けていますね。投げナイフが直接刺さったこの娘が1番多く毒をもらってしまったので真っ先に症状が出たのですね』


『お前、診察もしていない状態でそんな事まで分かるのか? 凄い役に立ちそうだな……』


 女神様が約束通り異世界3点セットを付けてくれていたので、さっそく女騎士に放たれた投げナイフを鑑識魔法にかけてみる。


 投げナイフには矢毒ガエルの毒が塗られていた……これ、即死毒ではないが、上級の解毒魔法か上級解毒剤じゃないと治療できない!


 このままだと1時間持たないだろう……。

 この可愛い娘を助けるのは確定として……さて、どうしようかな?


 ある考えが浮かび、あえて全快させないで中級解毒魔法の【アクアラキュアー】を掛けておく。


 胸がはだけてしまった女の子に手持ちのマントを掛けてあげ、皆のところに戻った。

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