第12話 黒幕の正体 その9
「ふあ~あ……眠いな……」
ミーナを討ち倒しマグーを追い払ったものの、ペスを連れていかれた俺達はあてもなく歩いていた。
「そんな事言ってる場合? ペスが捕まったのにさ」
シャイニーはどことなく悲しそうな表情をしていた。恐らく、ランダルのかつての仲間をいつの間にか殺してしまっていたからだろう。
「……皆を呼ばずにペスと二人で行ってしまった、俺に責任がある。別に眠けりゃついてこなくていい」
そうビーンに向けて言ったが、彼の足は止まらなかった。
「知ってるだろ? 俺のせいで、あの二人は死んだんだ」
三年前に出会ったワインドとエイモナを思い出す。だがすぐにあの二人は死んでしまった。ビーンがフルルを追い、二手に分かれたところを兵士達は襲われた。
「だからよ……俺は絶対、仲間から離れたくない。足でまといになるかもしれないけどよ、盾くらいにはなってやる……!」
「ビーン……」
彼にしては意外に良い事を言ったのに驚いたのか、シャイニーは唖然としていた。だが即座に表情を笑顔に変え、話し始めた。
「じゃ、私は剣になるよ。あんたが攻撃を受けてる間に、私がケリをつけるから!」
そう言ってシャイニーはビーンの肩を叩いた後、首に手を回す。するとビーンは少しだけ口角を上げながらシャイニーの方を向いた。
「やっぱ……お前と会えて良かったって思う」
寝ぼけているのかもしれないが、安心しきった顔を向けてくるビーンに、シャイニーは思わず目を背けた。
「ちょっと、可愛いとか思っちゃった……って何考えてんのよ私は……!」
シャイニーは小声で自分に言い聞かせるように呟いたが、充分ビーンに聞こえるくらいの声量だった。
「聞こえてんぞ~?」
歯を見せながら不敵に笑みを浮かべるビーン。直後に彼はいつもより優しくシャイニーに頭を叩かれた。
「なんか、イチャイチャしてる……」
レイは妬むような目で二人を見ていた。
「ん? 普通に仲良くしてるだけだろ、あいつら」
ボルガはとぼけているのか鈍感なのか、判断できないテンションで話している。それを見たレイは少しだけボルガの近くに寄った。
「ねえ、疲れたからおんぶして」
ボルガの手を掴みながらレイはねだったが、直後に彼女にとって想定外の事態が起こった。
「いや、おんぶより……!」
「わっ!?」
「こっちの方がいいだろ?」
何食わぬ顔でボルガはレイをお姫様抱っこした。
「ちょっ、恥ずかしいよ……!」
レイは周りの目が気になって目を手で隠した。だが意外と安心するようで、ボルガの腕からは降りようとはしなかった。
*
三年前、フロウスによって同じようにお姫様抱っこされた事をレイは思い出していた。レイ自体はフロウスの事ははっきりと覚えておらず、シルエットと濁った声だけが彼女の頭の中に残っている。だがそのフロウスの体のぬくもり、自分を心配してくれる気持ちは覚えていた。
*
「ごめんな」
そうボルガは簡潔に謝っていたが、彼がおんぶを拒否する理由はある。
やっぱりレイの体は冷たすぎる。今にも腕が凍りそうだ……。きっと背中にレイの胸と腹が触れたら、俺でも背から徐々に凍りつくだろう。
二人の思惑は違えど、お互いがお互いを信じている事に変わりはない。
*
「俺だけ一人ってのは寂しいもんだな……」
自分の左右のいる男女がイチャつきながら歩いている事に対し、アベルは羨ましさを覚えていた。
「ペスがここにいてくれたら、手を繋ぐくらいはしてくれたのか……? いや、ないか」
四人にバレないように小声で呟いたが、すぐに自分で自分の発言を撤回する。俺は確かにペスに気があるが、ペスも同じだとは限らない。
「……とりあえず、城に向かうぞ」
気を紛らわすように言い、歩幅を大きくした。
王城 正門にて
「おい! 大丈夫か!?」
正門へと辿り着くと、既に何者かに押し入られたのか門番の兵士達が倒れていた。幸い命に別状は無さそうだったが、痛みと苦しみによる声を聞くのは辛い。
「まだ近くにいるかもしれない、警戒はしておきなよ?」
シャイニーが周りを見回すと、門の上に何者かの人影を発見した。
「え……」
シャイニーはその人物の唐突な登場に驚くと、他のメンバーも門の上を見た。
「あ……アラン!?」
そこにいた人物は、つい先日姿を消したアランだった。だがそのアランの様子は今までとはまるっきり逆で、目つきは鋭く、少しだけ口角を上げ不気味に微笑んでいる。そして彼の体の回りにはバチバチと電撃が走り、まるで雷を纏っているようでもあった。
「……確かにこの体はアランだが、今は違うぜ? 俺は、シュウだ」
NEXT COLOR YELLOW&PINK
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