第12話 黒幕の正体 その7

 ザーシスとステーシを無事倒したメンバーは合流し、空き家に集合していた。


「まさか、あなたが生きていたなんて……」


 ロプトはロボットに映されたエボルの姿を見ると、珍しく動揺していた。エボルのおかげでフィシュナが敵では無いという事は案外簡単に伝える事ができた。


「久しぶりですね、ロプトさん。責任重大な役割を任せて少し不安でしたが……上手くやってくれたみたいで安心しました」


 犠牲者は少なからず出てしまったものの、ほとんどの色の適応者をロプトは見つけられた。


「おい! 大丈夫か~?」


 ショオがショアを抱えながらファランと三人で合流する。ファランがついてきた事に警戒する者も多かったが、ショオがなんとか説得してみせた。


「…………とまあ、もう敵じゃないって事だけはわかってくれ。てかそれより気になるのが…なんでフィシュナがいるんだ?」

「私が創造の白の継承者だった、というだけです」


 ショオは状況が呑み込めず頭を傾けたが、ファランのように敵では無くなったと勝手に納得した。


「んでこれからどうすんだ? お前ら二人はファラリスについてたんだろ? とっとと案内してくれると楽なんだがなあ……」


 カイザは壁にもたれながらだるそうに話した。乱雑な紫色の髪を触り、不満を持っている事は明らか。


「ファラリスはあの城にいますが……」


 フィシュナは王城を指差したが、直後に苦い表情に変わった。


「仮にここにいる全員で突撃しても、ファラリスには勝てないでしょう。16年前は私を入れて13人で突っ込みましたが……文字通り手も足も出ない状況になりました」


 エボルの話でファラリスが脅威だという事は、その場にいる全員が理解できた。


「そんな奴に……どうやって対抗するんだ?」


 眠っているショアの頭を撫でながら、カブトは対抗策を問う。するとエボルは早速その答えを話した。


「アランさんです。アランさんは強い『復讐』の意思を持っていて、今彼を乗っ取っているシュウさんも『復讐』に駆られています」


 シュウの詳細は明かされていないが、彼はファラリスに対して激しい憎悪を抱いている。


「それで……アランがどうしてファラリスに対抗できるの?」


 殺気のこもった目つきでメリーはエボルのロボットを見つめる。彼女はまだフィシュナの事を信用しきれていなかった。


「……それは言えません。誰かがアランさんに策を言ってしまえば彼の『復讐』の意思が揺らぐかもしれません。ですがメリーさん、あなたは『復讐』ではなく『正義』の意思でファラリスを倒せるかもしれません」


 その言葉にメリーは目の色を変え、興味津々で耳を澄ました。


「ただ、それはファラリスの悪事をあなたに告白してから数十秒、もしくは数秒程度で仕留めなければいけないかもしれないですね」

「……ファラリスをぶちのめす直前までその話を聞いちゃダメって事はわかった」


 メリーは手を握りしめ、来るべき決戦への覚悟を決める。


「では意識を失っているショアさんとフランさんに付き添い、ここに残る人物を決めましょうか」


 エボルのロボットはベッドに寝転んでいる二人に近くにあったボロボロの布をかけてあげている。するとショオがすぐに駆け寄った。


「俺は残る。今のショアの目が覚めた時、俺がいなきゃ心配するだろ」


 ショアの隣にいたカブトも頷いた。


「悪いが俺じゃあこれ以上力になれそうにない。足でまといになるだけだ」


 メリーは眠っている自身の母を見て悲しそうな表情をしていた。色の適正があるかどうかを調べるカプセルをかざした所、見事にベージュ色に光ってしまったからだ。


「すまねえなファラン、確かめなきゃいけないって言っておきながら残る事になって……」


 申し訳なさそうにファランを見るショオだったが、ファランは気にしていなかった。


「なぁに、お前はお前の弟の事を考えていればいい。僕の事は……僕が確かめる」


 真実を薄々察しているファランは自分の顔をなぞる。


「なんか……いつのまにか仲良くなってて安心した」


 エルナはお互いを信じあっていた二人を、小動物を見るような目で見ていた。


「……エルナさんは私達と一緒に来るんですか?」

「うん、だけどファランと一緒に行動するつもり。ファランの能力で私を瞬間移動させれば、例え怪我してもすぐに治せると思うから」


 治すにはある程度時間が必要だが、ファランも一緒に移動するので彼が時間稼ぎをすればスムーズに治す事ができる。


「ではカブトさん、ショオさんはここに残ってフランさんとショアさんを見守っていてください。それ以外の全員で城に潜入を……」


 だが次の瞬間、ショオは誰かが足りない事に気づいた。


「なあ、フルルはともかく……ヘルがいないよな?」


 それを聞いたその場の人間のほとんどが辺りを見回すと、確かにヘルはいなかった。


「彼はよくいなくなります、何も不思議な事ではない気がしますが……」


 ロプトは呆れたような表情で話していたが、ゴブリンリーダーのマグーとヘルは親友だ。どこかで繋がっていてもおかしくはない。


「あいつはマグーと親友だが…俺はあいつとマグーが話してるところなんて見てないぞ? ま、俺が裏切ってわざと殺される予定だと分かっていたから見せていなかっただけかもしれないけどな」


 カブトは元ゴブリン陣営だったが、ヘルを始めて見たのはロプトの家の近くに現れた時だったそうだ。


「よくいなくなるって事は、その時にマグーと連絡を取り合ってたんじゃないか?」


 ショオは誰もが思いつくような答えを発し、皆はそれで納得した。


「……話、終わりでいいですか?」


 無言が数秒続いた後、フィシュナはまた仕切り始める。


「先ほども言ったように、ショアさんとショオさん、カブトさんはここに残ります。それ以外の全員で潜入しましょう。ファラリスにバレずに潜入するためには、皆さんの協力が必要です」


 一人一人が頷き、答えるようにフィシュナの目を見る。


「それでは……行きましょう」

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