第12話 黒幕の正体 その4

 少女の声がかき消されると同時に、意識が戻った。刀はショアの頭の横の地面に突き刺さっていた。


「フィシュナ、応答しろ」


 父の声が聞こえてくる。それに応じるように、ゆっくりと振り向いた。


「な……!?」


 驚愕する彼の顔を見て、私は完全に理解した。垂れ下がる私の髪の毛は、白色に変わっている。


「私が……」


 十二の刀を創り出し円形に並べ、ラウザーに黄色のカプセルを挿し込む。すると逆時計回りの順で刀身が黄色に染まり、力を感じ取れた。


「私こそが……!」


 太陽に手をかざし、何もない空間から白色のカプセルを生み出した。


「『創造の白』の継承者です……!!」


 ラウザーから黄色のカプセルを取り出し、代わりにたった今創り出した白のカプセルを挿し込むと、刀身は元に戻りラウザーのカプセル挿入部が一つ増えた。


「まさか、本当に白の力を……!?」


 父さんは困惑し後ずさる。私自身は真顔だったが、神々しい白いオーラを纏っていた。



 *



「……っ! ショア、大丈夫か!?」


 野獣化したままのショオが慌ててショアの元へ駆け寄るが、すぐさまフィシュナの異変に気づいた。


「なんだあいつ……フィシュナ、だよな?」


 するとショオのダミ声をかき消すように爆音が鳴り響いた。フィシュナが何もない空中に10本の火縄銃を創造し、一瞬で撃ち放っていた。


「が……っ!」


 弾丸はステーシの脇腹に直撃しており、ボタボタと血が流れる。


「私は目が覚めました。ファラリスの野望を……必ず打ち砕いてみせます!」



 *



 メリー、カイザ、カブト、エルナの四人はザーシスに苦戦を強いられていた。


「なんで攻撃が効かねえんだよ!」


 カイザは渾身の一撃を振り下ろすも、ザーシスの一瞬のまばたきと同時にハンマーは弾かれた。


「無駄だあッ!」


 カイザは腹部に強烈なパンチを叩き込まれ、衝撃で後ろへと吹き飛んだ。


「カイザっ!」


 地面に着地するより前にエルナが腕を伸ばし、カイザをなんとか受け止める。カイザはすぐに起き上がるが、腹を痛めたようでその場から動けずにいた。


「紫色の能力で攻撃を無効化してるんだろうが、どんな能力なのか想像もつかないな……」


 カブトは今までのザーシスとの戦闘を思い出し、攻撃が弾かれた時の共通点を探し始める。すると答えはあっさりと出た。


「まさか……? 一か八か、試してみるか。おいメリー! ザーシスに攻撃する暇を与えるな、殴り続けろ!!」


 メリーは一瞬だけ振り向き、頷いてくれた。カブトは汗をかきながらも笑みを浮かべ、エルナとカイザに小声で話しかけた。


「いいか、作戦はこうだ。まずメリーが攻撃している間に……」



 メリーは怒涛の打撃を風に乗せ叩き込んでいた。だがザーシスが目を閉じると、メリーの攻撃が一切通らなくなった。ザーシスにパンチやキックが届く寸前で、何かに阻まれたようになる。


「これがあんたの……能力ってやつ?」


 攻撃が通用せずとも、カブトの命令通りに殴り続けた。


「そうだッ! これが私の力……ん?」

「がっ!?」


 目を閉じている彼には、メリーが何者かによって攻撃され、倒れ込んだように思えた。


「ザーシスさん、大丈夫ですか?」


 なんだフィシュナが援護してくれたのか、そう思い目を開けるザーシスだったが次の瞬間、彼には信じられない光景が広がっていた。


「なにッ!?」


 そこには援護に来たはずのフィシュナはいない。エルナの伸びた手がまぶたに迫っていた。


「がッ!」


 手はがっちりとザーシスのまぶたを固定し、閉じられないようにする。


「な、何故だッ!? 何故フィシュナがいないッ!?」


 すると驚くザーシスを見下すかのようにカブトはニッコリと笑った。


「俺の声真似だぜ? リサーチ不足だったなぁ?」


 フィシュナの声のまま、馬鹿にしたような声色で煽る。


「お前に攻撃が通じない時はいつもお前の目は閉じていた。“まぶたを閉じている時のみ、あらゆる攻撃を防ぐ能力”だな!?」


 激しい歯ぎしりをするザーシス。手足も震えていた。


「はあっ!」


 エルナはザーシスの体全体を腕で包み、思い切り引き寄せた。その先には先ほど吹き飛ばされていたカイザが待ち構えている。


「そんな……バカなあッ!!」


 カイザはハンマーを下に置き、振り上げる構えをした。


「ぶっ飛ばしてやるよお! オラっ!!」


 先ほど自分が打撃を受けた腹部の借りを返すように、今度はザーシスの腹にハンマーの一撃を叩き込んだ。


「ギニャァァァァッッッッ!!」


 情けない叫び声を上げながら上空に吹き飛んだザーシスを追い、メリーが風の力で飛び上がる。


「うらあっ!!」


 顔面に最高火力のパンチが直撃すると、ザーシスの体は更に勢いを増して飛んでいく。


「バカなッ! バカなッ! この……私があーッ!!」

 負け惜しみとも捉えられるセリフを吐きながら、どんどん小さくなっていく。気づいた時には、もう彼の姿は見えなくなっていた。

 メリーはゆっくりと着地し、メリケンに付着した血液を振り払う。


「まずは一人……!」

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