サイドストーリー ランダル編
「ミーナ……」
自らが殺害した亡骸の方を見つめながら呟いていた。ミーナの遺体はハイエンの『憤怒の茶色』の力によって岩石で覆われ、彼の左腕に納まり郊外の森に埋めようと向かっている最中。
「ランダル、お前は後悔しているか?」
相変わらずハイエンは淡々と話している。しかし気を使っているとはランダルも察した様で、特に責める態度にはなっていない。
「いえ……私はとんでもない過ちを犯してしまいました。ありがとうございます、引き戻してくれて……!」
ランダルはハイエンの目をしっかりと見つめて感謝の意を伝えた。だがそんな彼女の目線から逃げるようにハイエンは前方から視線を変更してはいない。
「結局お前は俺に流された……その可能性もあるぞ?」
「うっ……それでも! 私が自分で選んだ事に間違いはないんです!」
負けじとランダルも言葉を返し、自身の意思による選択だと主張した。すると今度はハイエンも顔の向きを変え見つめ合う形となる。
「……なんですか?」
黙ったままのハイエンに対し痺れを切らし、ランダルは頬を膨らませ不満の表情を見せつける。
「ちゃんと前見てないと転ぶぞ」
「なっ……ハイエンさんが見つめてきたせいでしょー!?」
以前よりも反抗的な態度で接しているランダル。しかし忠告には耳を傾け前を向き直していた。すると彼女が被っていた帽子の上に、優しく右手が乗せられる。
「悪いな」
ぽんぽんと緩いペースで叩いてきたハイエンだったが、彼女も悪い気はしていなかった。むしろ嬉しいという気持ちさえある。
「ほんと、ありがとうございます……」
穏やかな笑顔をランダルは浮かべたものの、背が高すぎるハイエンからは見えない位置。しかし『笑顔を浮かべている』という事は彼にも理解できたため、内心安堵していた。
「もう滅多な事では流されませんよ〜? それこそ、ミーナが生き返ったりしない限り……」
まるで生き返って欲しいと言っているような発言。だがあえてハイエンは咎めない。彼にも生き返って欲しい人間くらい、一人はいるのだから。
「なら、フルルには近づかない事だ。あいつは死者の魂を呼び戻せる……それに、あいつは何か企んでるような気がしてならないんだ」
仲間を疑う言動にランダルは違和感を覚えたが、ハイエンの言う事なら間違いは無さそうだと考え頭の隅に配置した。
「大丈夫ですよ……うん、大丈夫」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます