第122話元・女神の本気
「くそっ! これで何本目だよ!」
「今ので三十一本目ですね」
「そうかよ! 教えてくれてどうもありがとう!」
『切断』が使われた以上、もはやアキラには剣を受けると言う手段は取れない。
女神と戦ったときのように、自身も同じように『切断』を使うことができれば受けることも可能だが、今のアキラは自身の適性を精神にのみ費やしてしまっているせいで、精神に関することと簡単な魔法以外は使えなかった。
一応武器に魔力を込めて一時的に打ち合うことは可能だが、それも一度きりしか使えない。
一度使えば込めた魔力に武器が耐えられずに自壊したりするし、自壊せずともわずかにアストリアの剣を食い止めることができても結局は斬られてしまったりして剣を受け止めるたびに壊れていた。
アキラはそんな風に壊れるたびに腰のポーチから新たな武器を取り出すのだが、それがついに三十一本に達し、今まで壊された残骸たちは舞台の上に散らばっていた。
「どうしました。だいぶ弱体化していませんか?」
そんなアキラの様子を、アトリアは少し不機嫌そうな表情で見ている。
それは以前戦った時よりもアキラが弱体化していることに対して……ではない。
弱体化しているのは自身も同じこと。故にそこに文句をつけるつもりはなかった。
だから、不満があるのは別のこと。
「剣の腕はもちろんですが、魔法はどうされたのですか?」
アキラは本来の戦闘スタイルで言うのなら魔法型だ。
あの地獄のような試練を越えるために剣も体術もできるようになったし動き回りながらでも魔法を使うことができるようになったが、本来得意としているのは魔法だった。
だと言うのに、今のアキラは魔法を使おうとしない。それはつまり、本気で戦おうとしていないと言うことだ。
実際にはそう言うわけではなく、精神に関する魔法しか使えなくなったからこの場では使っていないだけなのだが、それと知らないアトリアにはアキラが手を抜いているように思えた。
「……まだ使う必要がないってだけだ。それに、魔法に関してはお前もだろうに。あの時のバカみたいな技はどこへ行ったんだよ」
「使いたいのは山々なのですが、残念ながら、魔力のほとんどはあなたの方へ行ってしまったようなので……。一応できることはできるのですが、使えば二度目はありませんね」
「そうか」
アキラは生まれ変わる時に自身の魂を現アトリア、当時の女神のものと混ぜている。
そうしなければ女神は生まれ変わることなく死んでいたからなのだが、その結果アトリアとして生まれ変わった女神には常人より多目程度の魔力しかなかった。
「それで、あなたはいつになったら本気を出してくれるのですか?」
「……本気、ね」
「ええ。あなたの秘密にしていることは理解しています。ですから、魔法を使いなさい」
アトリアは、アキラが魔法を使わない理由を『魔法を使うと貴族関連が騒がしくなるから』だと思っている。
それ故に、その程度のことで後で何があろうと自分が対処してやる本気を出せと言ったのだ。
まあアトリアのその考えは間違っているわけだが。
「……それは命令か?」
「ええ。王族命令です」
秘密を知っていると言われ、それでもなお使えと言われたことで、アキラはわずかに悩んだものの使うことを決意した。
元々剣だけでは勝てないのだ。言われなくともそのうち外道魔法を使うことになっていただろう。
ただその踏ん切りがつかなかった。
使えば、外道魔法を許可なく使ってはいけないと言うこの国の法律を犯すことになるから。
だがそれもおしまいだ。王女から命令されたのなら、それは許可が出たのと同じこと。
たとえアトリア本人がそうだと理解していなくとも、許可が出たことそのものは観客たち聞いている。
許可さえ出たのなら使える。法律で禁じられているのは、あくまでも『無許可で外道魔法を使うこと』。
でなければただその才を持って生まれただけで罪となってしまうし、国のために裁判等で命令に従って使っているのに犯罪者となってしまうことになる。
故に、使いさえしなければ問題はなかった。
まあ、アキラは……いや、アキラたちは普段からバレないように外道魔法を使っていたが。
そしていませんか、そんな外道魔法を使う許可が王女から降りた。
なんの問題もないわけでもないが、許可さえ出てしまえば罪に問われることはない。
故に、アキラは覚悟を決めて剣だけの戦闘スタイルから、剣と魔法のスタイルへと変更することにした。
杖を出したことに驚いているが、アキラはそんな観客の声に頓着することなく魔法を構築していく。
「……やっときましたか」
そんな様子を見て観客たちが驚いているのに対して、アトリアだけは楽しげに笑っている。
──ああ、ついに自分の求めていたものが来るのだ、と。
アキラの背後に浮かぶのは無数の炎。
アストリアの剣が見ているだけで斬り裂かれそうなほど鋭いと感じるように、アキラの背後に浮かんでいる炎もまた、触れずとも焼かれてしまうのではと感じるほどの熱を見ているものに感じさせた。
「ここからは俺も本気だ! あと先なんて考えないで行くから覚悟しろよ!」
「ええっ、存分にかかってきなさい!」
アキラには外道魔法の適正しかない以上、放たれた魔法は全て幻。
だが実態のない幻であるにもかかわらず、それは熱量を感じさせるほどにリアルだった。
そんな炎がアトリアに降り注ぐ。
アトリアは楽しげに浮かべた笑みを深めると、その手にあった剣を強く、だが気楽に握り込むと、徐に一歩前に踏み出しなんでもないことかのようにゆったりとした動作で剣を振り上げた。
降り注ぐ炎に対処するにはあまりにも静かな動き。
あまりにも緩慢な動作に、観客たちはアトリアが炎に飲まれる姿を幻視しただろう。
だがそうはならない。
降り注ぐ幻らしくない幻の炎。その全てを一つとして残すことなく切り裂いていく。
雨のように降り注いでいると言うのにその一つも当たることなく切り裂くアトリアに、観客たちは歓声を挙げるがそれで終わりではない。
アトリアが炎を切っている間にも、アキラは次の幻を用意していく。
炎の球の次は氷の槍。そしてその次は雷、炎の嵐、水の鞭、土の人形……。
様々な魔法が絶え間なくアトリアに襲いかかる。
だがその全てが剣の形へと押し込められた『切断』と言う概念によって切り裂かれていく。
形のあるなしなど関係ない。幻であるのか本物であるのかさえも関係ない。
ただアトリアがそこに存在していると認識したと言うただそれだけで、全ては斬られていった。
そんな様子を見ていた観客たちは、最初の頃はアトリアが魔法を切るたびに完成を挙げていたが、今では何も言うことができずに静まり返っていた。
そんな中で、アキラは次の魔法を準備し……発動した。
「来い! 業火の竜!」
「ドラゴンっ! 召喚ですか!」
アキラの頭上に一軒家ほどの巨大な竜の姿が現れた。
それを見た瞬間に、先ほどまで静まり返っていた観客たちは、一瞬の間を置いた後に騒ぎ出し、会場は騒然となった。
それは当然ながら幻なのだが、やはりそうとはわからないほどに精巧なものだ。
故に、アトリアも騙された。
「違うっ! 幻──ぐっ!?」
先ほどまでの魔法とは違う。
先ほどまでも土の人形なんかの形のあるものも切ったが、言ってしまえば所詮は程度の低い石ころと変わらない。
その程度であればアトリアにとっては切断を使っていない時であっても何の感触もなく斬ることができただろう。
だが竜ともなれば違う。土の人形などではない最強の生物といわれる種族であるドラゴンならば、いかに剣の神と言ってもそれを斬った感触があって然るべきだ。
だと言うのに、敵を斬ったと言う感触がない。
……いや違う。それは正確ではない。全くの感覚がないわけではない。確かに目の前に迫るドラゴンを斬った感覚はあった。
だが、何かが違った。
神だった者特有の感覚なのか、それとも武芸において一つの極みに至った存在だからこそ気づけた事なのか、ドラゴンを斬った時、アトリアはその者の本質を斬った感覚を感じられなかったのだ。
それ故にそれが幻だと気づけた。
「隙ありだ!」
だが遅い。
アキラは竜の幻の影に隠れ、アトリアまで接近していた。
「そんなものはありませんよ!」
目の前にまで近づいて来ていたアキラに驚きはしたものの、アトリアは驚きに体を鈍らせることなく流れるようにアキラを切り裂く。
だが……。
「これもっ!?」
竜の陰に隠れ、斬られたアキラも幻だった。
本体はその逆、アトリアの背後に回って今まさに剣を振り下ろさんとしていた。
そしてアキラの剣がアトリアの頬を切り裂く──直前、アトリアは今までのような剣の女神としての技術や予想ではなく、ただの勘によって体を動かしてアキラの剣を避けた。
だが、完全に避け斬ることはできず、その長い髪の一房を斬られてしまうこととなった。
「──あは」
斬られた髪が宙にばら撒かれ、艶やかな銀色のそれは光を反射してキラキラと輝いている。
そんな中で、アトリアは楽しげに、純粋な子供のような笑みを浮かべて笑っている。
そして始まるのは怒涛の剣劇。
「楽しい……楽しいですね。あなたもそうではありませんか?」
「こっちはっ! ついてく、だけでもっ! やっとだっての!」
「ですが、ついてこれている」
突如ペースアップしたアトリアの剣を受ける。がすぐに剣が壊される。
それでも攻撃を避け、避け、避け……なんとか魔法を発動して幻の自分を作りそちらへと攻撃を誘導したが、その幻もすぐに斬られてしまう。
さらに、それだけではなくなぜか見えなくしているはずのアキラの場所までも剣を振り、その隠蔽の魔法を断ち切る。
偽物だと気づけないほどの幻。
それはアキラがその身に宿している力さえも完全に模倣するほどの精巧なものだ。
生まれ変わりとは言っても女神を騙すことができるのだから、相当のものだと言うのがわかる。
だが、欠点がある。アキラの力まで再現した幻が存在していれば隠れている自身の居場所を誤魔化すこともできるが、幻がなければ居場所を完全に誤魔化しきることができなかったのだ。
故に幻を斬られたアキラは居場所がバレた。
とは言っても、それはどう考えても普通ではない。
アトリアのやったことは、砂漠から金を見つけること……〝程度〟の話ではない。
アキラの隠蔽を見破るのは砂漠から一つだけある少し変わった形をしている砂つぶを見つけるような、まさに不可能な事。アトリアはそれをやってのけた。
それはアトリアがアキラと魂を分け合ったからこそ、それが反応してできたのかもしれないとも考えられるが、どのような理由にせよ、他人に真似できるようなことではなかった。
自身の魔法を壊されたことに目を見開くが、そんなことでアトリアは止まらない。
そのまま驚いているアキラに剣を振り下ろすが、一瞬で驚きから回復したアキラは剣を盾にしてアトリアの攻撃を受けると、剣は多少の抵抗をしたのちに切り裂かれる。
だがそれでもわずかな時間を作ることに成功したアキラは、もう一度幻を生み出してアトリアから距離を取った。
今の舞台の上には、何十人ものアキラの姿がある。
その全ては本物と寸分の違いもなく、戦闘中にできた傷さえも再現している。
アトリアはすぐそばにあるアキラの幻影を斬るが、それでも残りはまだまだ残っている。
相手は幻。本体さえ見つけることができれば実害はない。
普通ならそう考えるだろう。だが、これは幻術の神が作り出した常識の埒外の奇跡。
それを理解しているからだろう。アトリアは試しにアキラの幻影の剣を掠るように腕で受けてみるが、受けたその部分から血が流れ、痛みが感じられた。
その血は幻だ。斬られたのに合わせてアキラが幻を重ねたに過ぎない。
だが、その痛みは本物だ。精巧すぎる幻に斬られたことで、理性は幻なのだと認識していても脳が切られたと判断して痛みを感じてしまう。
それに加え、幻に触れれば痛みを感じるような細工まで施してあった。
そんなただの幻とは片づけられない異常な幻に囲まれる中、アトリアに追い討ちをかけるかのようにアキラは幻を重ね、空を魔法で覆い尽くす。
地は無数の敵で、空は魔法の群れ。
直接対峙したアトリアは、これまでの戦闘からそれらが幻だと気づいていた。
だが少しでも意識を逸らせば、それが幻なのだと忘れてしまいそうなほどに真に迫る幻は、見ているだけで危機感を感じさせた。
それは観客たちもそう。むしろ幻なのだと気づけていない観客たちは、その光景に感嘆を通り越して恐怖すら感じていた。
戦っている相手がアトリアではなく他の誰かであったとしても、この状況に至ってしまえばその者は、あるいはその者〝ら〟は生存を諦めるだろう。それほどまでに勝ち目がない。
──だがそれでもアトリアは止まらない
斬って斬って斬って……真のごとき幻を延々と断ち切っていく。
「ああ、懐かしいです。あの時を思い出します」
「懐かしいのも、思い出すのも同感だけどな、はしゃぎすぎだろ」
「仕方ないではありませんか。あなたと戦い、私は私の心を理解しました。だというのに遊んでくれる相手はどこにもいない。国一番の剣士も、武装した軍団も、世界中の力自慢も、こんな大会を開いてさえ誰も私の相手にはなってくれない」
幻が攻撃するのに紛れてアキラ本体もアトリアを斬り付けるが、アキラの存在を認識していないにもかかわらずそれは避けられ、あまつさえ反撃を放っという離れ技をやってのけているアトリア。
「私はここにいるのに、世界で一人ぼっちのようで、私はやはり異物なのだと言われているようでとても寂しかったのです。ですから、それを埋める度量くらい見せてはくれませんか?」
そして幻の数は減っていき、ついには最後の幻が消え去り、アトリアはアキラ本体へと剣を振り下ろした。
「……まあ、遅れたのはこっちのせいだしな。良いよ。ならお前を負かして、お前はここにいるんだと教えてやるさ」
「──ああ、とっても素敵な言葉。やはり、あなただった」
そう言ってアトリアが笑うと共に、バキンと音を立ててアキラの剣は砕け散った。
「──もうだいぶ時間が経ちましたね」
それからどれほどの時間が経過しただろうか。
二人は途中で会話をしていたが休むことなく戦い続け、すでに予定していた時間を大幅に過ぎていた。
「……そうだな。三時間、は経ってないけど、二時間半ってところか?」
「それくらいですね。まだまだ足りないですが、これ以上はお父様にご迷惑をおかけすることになりますし、このあたりにしておきましょうか」
「……もう終わりか」
「……ええ」
二人はお互いに舞台の端と端で向かい合っている。
その体はお互いに傷だらけ。だが、怪我の度合いはアキラの方が上だった。
アトリアは全身に切り傷や打ち身や火傷などがあるものの、その全てはごく軽いもの。
それに対してアキラは腕や脚だけではなく、額にすらもそれなりに深い傷を負っており、全身を赤く染めていた。
「あの時と同じ、ですね」
「ああ」
そうしてもう一度飛びかかろうとしたところで、アキラはふと女神の世界で戦った時のことを思い出して口を開いた。
「──楽しかったか?」
「──はい。とても楽しかったです」
そのことに気づいたのだろう。アストリアはわずかに目を瞑って深呼吸をすると、最後に対峙したあの時と同じ言葉を口にして笑った。
「今度は無様な姿を見せてくれるなよ」
「ええ。今度こそ本気で」
これが最後。故にお互いは次の一撃に自身の全てを込める。
アキラはその膨大なまでの魔力を剣に注ぎ込み強化をしつつ、自身の体にも強化を重ねながら。
アトリアは残りわずかとなっていた魔力を自身の強化に回さずに全て剣に注ぎ込みながら。
込められるすべての力を込めてお互いに走り出し、お互いがお互いを切らんと剣を振り抜いた。
そして……アキラが新たに傷を作り、そこから盛大に血を流しながら倒れた。
「……また、負けてしまいましたね」
「……は。何言ってんだ。そっちは剣を折られただけで、こっちは瀕死。どう考えてもこっちの負けだ。良くて引き分けだろ」
「いいえ。私の負けですよ」
倒れたのはアキラの方だと言うのに、なぜかアトリアが敗北を認めて構えを解いている。
アトリアは剣を握っているが、その剣身は半ばほどで折れていた。しかしそれでも立っているのに何故……。
「言ったでしょう? 今の私は魔力があまりないのです。剣を破壊された時点で、私はもう戦う力は残されていません。それに対してあなたは……ああ、やはり治療手段を持っていましたね」
血を流しながら倒れていたはずのアキラは、ゆっくりとではあるが起き上がった。
放置すれば致命傷だったはずのそれ。だが今はもう血など流れていなかった。
よく見ればその傷の周りにはなんだか膜のようなものが張り付いていたが、それこそがアキラが起き上がることのできた理由だ。
この大会、薬の使用は認められていないが、魔法具の使用は認められている。
アキラの怪我が治ったその理由は、彼の持っている魔法具にある。
家族を守るために聖域などと言う既存の結界を大幅に上回るとんでもな道具を作ったアキラが、もしアイリスが致命傷を負ってしまったら、と言うことを考えないはずがなかった。
その道具はスライムの核を使っており、致命傷を負うと勝手に発動してその部分を包み込んで癒し続けると言うもの。
一度きりの使い切りではあるが、その効果は絶大だった。
だからこそアトリアは自分の負けだと認めた。
残りの魔力はもうなく。アキラにはまだ余裕がありこれからも回復し続ける。
魔力がなくとも素の技術では負けるつもりはなかったが、それでもそれは〝負けない〟であって〝勝てる〟と言うわけではなかった。
それに、先ほどの一撃にほぼ全ての魔力を込めてしまったために、今のアトリアは魔力切れの症状を起こしていた。
正直に言うのなら、立っていることすら辛い。
だがそれでも最後までカッコつけたいと言う意地から、その場に座り込むことなく立ち続けていた。
「よろしいかしら?」
「ぅあ、は、はひ! にゃんでしょか!」
そして倒れる前にさっさとこの場を去ろうと考えたアトリアは、二人の戦いの凄まじさにそのばに座り込みながらも戦っている間もずっと舞台のそばにいた司会へと声をかけた。
「私の負けです」
その場に座り込み茫然としている状態であるにも関わらず、話しかけられたことで噛み噛みながらも反応した司会の女性。
そんな彼女にそう言うと、アトリアは場外へと向かって歩き出そうするが、その瞬間……。
「「「あ」」」
アトリア本人と司会、それから観客たちの間の抜けた声が重なった。
歩き出すためにあげた脚だが、二本の足でようやく立っていることができる程度の力しかなかったアトリアは、片足になった瞬間に姿勢を崩してカクン、と倒れてしまった。
「ぐっ……。馬鹿かお前。ここまで『同じ』にすることなかっただろ」
「……これは想定外です。もう少しくらいなら持つと思ったのですが……」
しかしそれをアキラが受け止めた。
だが、アキラとて怪我が治りつつあると言っても、治ったわけではない。
転びそうなアトリアを助けるために勢いよく抱きしめたせいで、治りかけの傷に衝撃が走る。
だがそれでもアキラはその手に込める力を緩めない。
「相変わらず、抜けてるところがあるのな」
女神であったときもどこかぬけたところのあったアトリア。
そんな彼女のドジを見て、アキラは仕方がないなと、愛おしげに笑いかけた。
「迎えにきた。今度こそ、あの時には言わなかったことを言わせてもらうぞ」
そして、アキラは目を閉じ、深呼吸をしすると、たっぷりと一分ほど目を瞑ったあと再び目を開き、真剣な眼差しで真っ直ぐにアトリアを見つめた。
「愛してる。俺と家族になってくれ」
「はい。喜んで」
そして、二人は舞台の上でもう離さないとばかりに力強く抱きしめあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます