第7話

 白い階段を降り切って、白い地上へと、足を下ろした。


 それは想像通り雪ではなく、大理石のような質感と見た目であった。ツルツルしてはいるが、滑るわけでもなく、薄氷のように踏んだら穴が開いてしまうでもない。まるで博物館内を歩いているような錯覚に陥った。

 白い地面は辺り一面に広がっていた。その地面の所々から、背の低い植物が顔を出している。いったいどうしてこんな風になっているんだろう。

 

 そして視線を上げて、辺りを見渡す。


 窓から見た景色がより一層近くなって、そこに存在した。白い壁、青い屋根の家、白道の下り坂、その脇に生茂る緑。僕の知ってる世界と似てるところがあったり、似ていないところがあったり。そんなワクワクするような土地に僕は降り立ったのだと、実感する。

だけど、ワクワクもしていられない。どうにかして、僕はまず、自分の記憶を取り戻さなければならない。


 辺りを見回ってみると、白道の下り坂の先に、少し雰囲気の違う場所があった。

一本道の両脇に白い壁、青い屋根の家がずらっと並び、家の前に赤や黄色や緑の何かが見える。果物や、野菜だろうか。そんな風景が一本道の遥か先の方まで続いているように見える。視力の限界で、そこまで鮮明には見えない。

商店街…かな?

 こんなにもたくさんの家があるのだ。商店街の1つや2つあってもおかしくはないだろう。だけど、何もわからない状況。自分の立場も、名前もわからない。もしかしたら、僕はとても悪い人間で、安易に話しかけてしまって拘束されたり、殺されたりしてしまう恐れもある。

 慎重に行くことを忘れないように、と自分自身に念を押す。


 僕の真上にある日差しが容赦なく照りつける。青い空。白い雲。外は真夏の空模様だ。

カラカラになった喉を唾液で潤し、額の汗を拭う。


 よし、ちょっと遠いけど、行ってみよう。

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